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9月18日に,京都府特定外来生物バスターズ事業の第2回目の研修会で講習を行ってきました.今回は,物流業者さんを対象とした研修会です.物流に関わる皆さんは,ヒアリ侵入の第一発見者になることが多いだけでなく,ヒアリが定着すると,大きな被害を受けることになる方々なので,真剣に研修を受けられていました.講義をする私の方も,それを受けて,思わず熱弁をふるってしまいました.
 ヒアリをはじめアリ類は巣が成長すると,羽のある新女王アリとオスアリの生産をはじめ,結婚飛行で母巣から飛び出した羽アリが,新しい場所に新しい巣を作ることで,分布を広げていきます.しかし,アメリカ合衆国や台湾など,ヒアリの定着を許した国々では,ヒアリの分布拡大が羽アリによる自然分散だけでなく,物資などに紛れ込んだヒアリのコロニーが,国内物流によって移送され,その分布拡大に拍車をかけたことが分かっています.このため,これらの国々では,ヒアリに汚染された地域から物資を移送するときには,国内であっても検疫を受けねばならい法律が定められました.もし,日本でヒアリの定着を許してしまえば,海外からの輸入だけでなく,国内の物流においても,大きな経済的損失を被るケースも起こってきます.今回の研修では,ヒアリがなぜ恐ろしくて,厄介なのかを,物流に視点をおいて講習してきました.
 ヒアリの定着を未然に防げるかは,行政だけでなく,社会のあらゆる方々に,ヒアリのことを正しく理解いただき,協働して早期発見,早期l駆除に取り組める社会を構築できるかにかかっています.これまで,環境省や各地の地方自治体などで,ヒアリ対策について研修会を数多く実施してきましたが,毎回,参加される対象に合わせて,講習の内容を変えるようにしています.労力や時間がかかり,なかなか大変ですが,そうした対応ができるのも,博物館や大学で,長年アリの研究を続けてきたからで,少しでも研究の成果を社会に還元できるよう,今後も,その努力を続けていきたいと思っています(系統・昆虫 橋本佳明)


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9月7日に,奈良県自然環境課が,県下の市町村職員を集めて開催したヒアリ講習会を実施してきました.
現時点では,奈良県でヒアリの侵入発見は起っていません.しかし,昨年,京都府などの内陸部でもヒアリ侵入が発生しており,経済のグローバル化や物流のスピード化がますます進む中,今後,ヒアリ侵入が奈良県でも発生する可能性は否定できません.また,ヒアリの被害として,毒針による健康被害がよく認識されていますが,既にヒアリが定着拡散している米国や中国,オーストラリア,台湾では,ヒアリは様々な農作物を食害したり,家畜を傷つけたりと,農業や畜産業,林業に膨大な経済的損失をもたらす害虫になっています.さらに,ヒアリだけでなく,最近,問題になっているクビアカツヤカミキリなど,外来生物には農業生産を脅かすものが多く知られています.恵まれた気象条件や高い生産能力を活かして、古くから農業が発達してきた奈良県で,外来生物早期発見体制の構築に取り組むことは急務です.

 ヒアリ講習・同定実習の会場には,樫原市立昆虫館の研修室を使わせていただき,昆虫館の中谷さんにも講師補助を務めていただきました.外来生物問題に取り組むためには,どうしても自然や生物学の知見を持った専門家や機関との協働が必要になります.兵庫県には人博があり,アリ類をはじめ様々な動植物の研究者がいますが,自然史博物館を有しない県では,みなさん,色々と苦労されているようでした.外来生物大襲来時代を迎える中,自然史博物館や昆虫館など,生物多様性研究に従事する研究機関の設立や充実が,今,強く求められいることは間違いなさそうです(系統・昆虫 橋本佳明)


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「高校生のための生き物調査体験ツアーin台湾5日目」です。
今日は朝食後にホテルからバスで15分の台北市立動物園に直行、1日動物園内で過ごし、多彩なプログラムを実施しました。
本日のプログラム
・動物園遊歩道における生き物観察
・動物園内の昆虫館見学
・野生動物の追跡調査体験
・キノボリトカゲの食性調査
・コウモリトラップの設置
・夜間生物観察

キノボリトカゲの食性調査は、毎年多くの高校生が印象に残ったプログラムとして挙げる人気の調査メニューですを。高校生たちが体験した調査方法は、極力トカゲの身体を傷つけずに胃の内容物を調べるものなのですが、実際に生きたトカゲを使って実施するので、どの生徒も真剣そのものです。
今回のツアーでの夜間観察では、過去の開催と比べて多くのヘビを観察することができました。普段ヘビを至近距離で観察する機会はほとんどありませんが、今回は、ひとはく太田先生と池田先生、台湾の専門家がヘビの出現ごとに詳しい解説をしてくださり、安全を確保した上で実際に触れることもできました。
プログラムの合間の休憩時間には、誕生日を迎えた日本人女子高校生と、グループリーダーを務めてくれている台湾人ボランティア大学生の二人へバースデーソングとお誕生日ケーキのサプライズがありました。台湾側主催者のご好意に感謝です!
今日で大半の生物調査体験を終え、明日は日台高校生の交流がクライマックスを迎えます。

公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会
佐々木洋平

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葉の上で獲物昆虫を待ち構えるハナグモの一種  動物園内の歩道を歩きながら生き物を探す

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何かが見つかる度に足を止め、実物を前に講師の解説に聞き入る

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(左)動物園内で電波発信機をつけたカメを探してみる
(右)この日が誕生日の日台それぞれの参加者にハッピーバースデーの歌とともにサプライズでケーキが!

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間近で見ることができた台湾固有のカササギの仲間ヤマムスメ(Urocissa caerulea)と、その飾り羽を拾いご満悦の布野先生

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動物園内で捕まえたスウィンホーキノボリトカゲ(Japalura swinhonis)に口から管を入れ胃内容物を吸い出す実習
「ちょっとごめん、君たち朝ごはんにどんな虫を食べた?」

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コウモリ類を捕獲するためのハープトラップを動物園内の歩道に仕掛ける

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(左)カタツムリ類を専門に食べるセダカヘビ(Pareas atayal)登場
(右)続いてタイワンオオガシラ(Boiga kraepelini)も登場

8月1日に,人博の教職員セミナーで,「外来種問題を,どのように,学校で教えれば良いのか」について,ヒアリの例に,4時間ぶっ通しで講義を行いました.
 まずは,もともと南米のアリだったヒアリが,ヒトの経済活動のグローバル化に伴って,北米,そして環太平洋地域に分布を広げ,最悪の侵略的外来アリになったことを講義し,なぜ,ヒアリが最悪なのかを,社会性昆虫としてアリの生態から解説しました.そして,外来種問題を教える上で,先生方が理解しておく必要がある「人為的移入と自然分散」,「外来種の生態的解放」,「地理的障壁と固有種の進化」「共進化と生物多様性の増大・維持の仕組み」について,イラストなどを駆使して,できるだけ平易に,わかりやすく講義を行いました.例えば,ヒアリが,海上コンテナ輸送によって,たった60年ほどで3大陸に分布を拡大したように,外来種の場合,その生物が本来持っている移動能力を超えて,短時間に,長距離の分散が起こります.その結果,分布拡大地で在来の生物たちと共進化する余裕も与えられず,さらに,本来の生息地にいた天敵や競争相手がいないために,異常に増殖してしまうのです.その結果,在来の生物を駆逐し,人の暮らしにも被害を及ばすことになるのです.
 外来種問題は,人の営みが引き起こした問題です.人が責任を持って外来種問題の解決に取り組むしかありません.そして,そのためには,外来種問題を正しく知って,正しく理解し,正しく行動できる社会の実現が不可欠です.これから社会の主流となっていく子供達に,どのように外来種問題を教えていくのか,その手助けに,少しは尽力できたかと思っています.実際,講義の後のアンケートでは,「これまでで,最高に役に立つ講義」だったという感想も頂けました.また,セミナーでは,実物のヒアリやアカカミアリ標本を観察して頂き,その見分け方も伝授しました.子供達の安全を見守る先生方のヒアリ不安症を,少しは解消できたかなとも思っています(系統・昆虫 橋本佳明)
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教職員や学校を利用した地域活動をしている皆さん、人間と自然や環境に関わる活動をしている市民団体とNPO・NGOの皆さんへの呼びかけです。
 研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員会では、論文(原著論文・総説・報告・資料)の原稿と、意見や書評、さらにそれらに分類できない論文以外の原稿を募集しています。教職員の皆さんは、夏休みの間に普段とは違った活動をしようと張り切っておられることでしょう。また市民団体とNPO・NGOの皆さんは、長年、取りためたデータをまとめ、全国に発信する良い機会です。

 夏休みを活かして、論文原稿や論文以外の原稿をまとめてみませんか?

 論文の掲載には、博物館内外の専門家による審査があります。論文以外の原稿は研究紀要編集委員会の承認があれば掲載されます。
 専門家からは、通常、2、3回の書き直し要求がありますので、場合によって博物館の研究者と連絡をとり、その研究者に共著者になってもらって投稿をするのも良いかもしれません。
 10月中旬までに審査を通って受理された原稿は、その年の12月までに掲載する予定です。それまでに受理が出なくても、じっくりと書き直せば、次の年には掲載されるはずです。皆さまのご投稿をお待ちいたします。

 投稿締め切りが廃止されました。原稿に投稿カード(http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/seiri-form.xls)を添えてご投稿下さい。メールの添付書類でお送り下されば結構です。コンピュータが使えないなどの特別な場合を除いて、郵送はしなくてかまいません。その他、必要なことは投稿規定(http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/bosyu&toukoukitei.html)に書いてあります。投稿規定を、よくお読み下さい。何かわからない事があれば、三谷雅純までメールでお問い合わせ下さい。

投稿先・問い合わせ先:研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員長 三谷雅純 宛て
mitani(アット・マーク)hitohaku.jp[(アット・マーク)を @ に変えて下さい。]

 投稿を、心よりお待ちいたします。

                                                               研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員長 三谷雅純

7月26日,東播磨県民局で,ヒアリとアカカミアリ対策について講習会を開催してきました.

ヒアリなどの外来生物問題では,港湾地域での水際対策にばかりに関心が払われがちです.しかし,ヒアリやアカカミアリが発見される場所は,実は,内陸部の事業所敷地内が圧倒的に多いのです.これは,海外から運ばれてくるコンテナは,輸送途中の盗難などを防ぐために,輸出先で封印され,発注主のところに届いて,初めて,開封されるからです.さらに,優秀な日本の物流システムでは,港に陸揚げされたコンテナは,早ければ1日か2日で内陸部の事業所に陸送されてしまいます.このため,ヒアリやアカカミアリの定着を防ぐには,水際だけではダメで,内陸部の事業所の方々との協働が極めて重要になるのです.

播磨地域は,神戸,阪神地域と並ぶ,鉄鋼、造船、機械などの産業が集積する兵庫県の大都市地域です.このため,中国をはじめ海外の様々な国から,神戸港に陸揚げされたコンテナが,この地域に運ばれてきます.西播磨県民局に続いて,東播磨県民局でも,ヒアリとアカカミアリの講習会を実施したのは,播磨地域も外来生物問題の最前線にあるからです.
この日も猛暑でしたが,製造業や物流産業など様々な業種から,41名もの方に参加頂けました.講義では,一旦,ヒアリやアカカミアリの定着を許せば,健康被害だけでなく,経済活動へも大きな損害を与える続ける存在であることや,女王アリを見つけて完全駆除することは非常に困難で,侵入発見時に適切に対応することが,唯一の防除策であることなどを,お話しました.また,ヒアリやアカカミアリの標本を持参し,実物の観察会も行いました.みなさん,やはり,ヒアリやアカカミアリが,こんなに小さいのかと,驚かれていました.テレビなどの画像からは,殺人アリと報道されたこともあり,もっと巨大なおどろおどろしいアリのイメージがあるようです.

今後も,尼崎市や川西市,奈良県などで,続けてヒアリとアカカミアリの講習会を実施する予定になっています.しばらく,猛暑が続くようで,移動だけでも,かなり消耗しますが,人博が掲げる「思索し,行動し,提言する博物館」をモットーに,ぶっ倒れないよう気を配りながら,頑張ります(系統・昆虫 橋本佳明)
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6月16日と17日,大阪で,連続して3箇所でヒアリの侵入が発見されました.2000匹を超える大きなコロニーがコンテナに潜んでいたこともあり,荷下し作業をされていた方と,環境省の職員の方が,ヒアリに刺されるということまで起きました.
これを受けて,環境省から職員がヒアリに刺されないための装備や,刺された時の対処法について,アドバイスを求められました.装備について色々とアドバスをしていたら,それは,私が熱帯雨林へアリの調査に行く時のいつも格好だと気がつきました.熱帯には刺されると,飛び上がるくらい痛いアリがたくさんいます.しかし,調査には,採集や実験道具も持っていくので,装備は軽装で,かつ身を守れるものになります.例えば,スズメバチなどと比べると,アリはサイズが小さいので,使い捨ての薄いゴム手袋があれば,毒針が貫通することはありません.足元は,どうしても注意がおろそかになり,手に比べて皮膚が薄いので,ゴム長靴か,足袋のようなもので,しっかりと守っておくのが無難です.さらに,虫除けスプレーを長靴にかけておくと,アリが寄り付きにくくなるので,より安心です.採集には,私はハンディ掃除機を吸虫管の代わりに使っています.これは,口で吸う吸虫管で採集に時間をかけていると刺される確率が上がるのと,土などを吸い込んでしまうを避ける意味もあります.

私が長年の熱帯でのアリ調査から編み出したスタイルやノウハウが,ヒアリ対策の最前線に立つ方々の安全を確保することに役立つとは,想像もしていませんでした.しかし,経済のグローバル化がますます進み,思いもよらない生き物たちが,続々と侵入してくる,今,海外で昆虫や植物など,自然を相手に基礎的な調査をしてきたノウハウが,実は,一番役に立つ時代になったと言えそうです(系統・昆虫 橋本佳明)
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美しき蝶たちを,ちょっと美術館風におしゃれに展示するために,シックな色合いのドイツ箱スタンドや,額縁のようなドイツ箱枠を,あたらたに開発して,夏の江田コレ展の準備を進めています.展示する200種以上の蝶の選定は完了し,それらの標本を,収蔵庫から,展示用に新しくドイツ箱に並べる作業を黙々と行っています.標本を損ねることなく,できるだけ見栄え良く並べる作業は,気の抜けない作業ですが,みなさんに,美しき多様性の世界を堪能していただけるよう,頑張っています(系統・昆虫研究室)

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6月13日に,西播磨県民局で,ヒアリ・アカカミアリ対策についての講習と同定実習を行ってきました.西播磨は,4月8日に,インドネシアから神戸港を経て,播磨町にある事業所に搬送されたコンテナからアカカミアリが発見され,その対応に,少し苦労されたとも伺っていたので,兵庫県にある自然史博物館として,日本の外来種問題の最前線にある研究機関として,講習会を実施させていただくことにしました.

会場となった西播磨県民局には,所管地区の市町村から40名以上の参加がありました.つい最近に,アカカミアリの侵入を受けたこともあり,みなさん,真剣に聴講され,講義と実習後には,活発な質疑応答で,大幅に時間延長して対応させていただきました.

アカカミアリの侵入発見は,4月8日以降も,5月28日 インドネシアー成田空港ー茨城県東海村(事業所),6月3日 台湾ー神戸港ー愛媛県新居浜市(事業所),6月11日 台湾ー東京港ー千葉県柏市(物流倉庫)と続いています.アカカミアリはヒアリと同属のアリで,原産地もアメリカ大陸ですが,ヒアリと違って,台湾,中国,そして東南アジアからインド,アフリカまで,すでに,世界中に侵入定着していることで,今後も,ヒアリ以上に,日本への侵入が起こると予想されます.外来種対策の肝は,早期発見と早期駆除です.このためには,監視の目を増やし,その質を高める地域行政の取り組みが必須になります.思索し,提言し,行動する自然史博物館として,地域行政が地域の人々の安全な暮らしを守るために取り組む「火アリ用心,戸締り用心」に,これからも,お役に立てるように,微力ですが,尽力していきます(系統・昆虫 橋本佳明).

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6月1日,姫路で開催された兵庫県博物館協会の研修会で,これまでの人博のヒアリ対策への貢献を例に,「外来種問題でも,自然史博物館が一番役に立つ」という内容の講演をしてきました.

 2010年,愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で,「2020年までに侵略的外来種とその定着経路を特定し、優先度の高い種を制御・根絶すること」等を掲げた愛知目標が採択されました.これを受けて、環境省、農林水産省及び国土交通省は、2015年に「外来種被害防止行動計画」を策定し,目標の実現を目指すことになりました.ヒアリをはじめ侵略的外来種は、生態系や人の生命・身体だけでなく、農林水産業,物流,商業等のさまざまな人の活動に多大な被害を与えることが国内外で知られています.このことは,広く多様な主体が連携して,合意のもとに取り組む体制がないと,外来種問題は解決できないことを示しています.外来種被害防止行動計画でも「社会において外来種対策を主流化する」ために,その対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成を進めていくことを計画の一つに掲げられています.しかし,昨年,2017年に,神戸港で,国内初のヒアリ侵入が発見された以降の社会パニックや,対策の経緯を見ていると,必ずしも,外来種対策を社会の主流化することが,うまくいっているとは言えないでしょう.

 大学や研究機関が広く市民に,直接的に,啓蒙や教育活動を行うことは難しいですが,自然史博物館は,生物多様性や生態系の重要性やそれらの保存の必要性を社会へ実装できる場です.人博では,このために,蓄積した標本資料や高度な研究成果を活用して,セミナーや自然観察会,展示などの生涯学習を数多く行い,大きな成果を上げてきました.まさに,博物館は,外来種問題とその対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成を進めていくことができる機関です.神戸港でのヒアリ国内初侵入は,国際貿易が盛んな兵庫県が、改めて外来生物の侵入リスクが高く、我が国の外来種問題の最前線に立たされていることを再認識させてくれました.外来種問題の最前線にある自然史博物館として,「外来種問題でも,博物館が一番役に立つ」と言えるように,微力ながら頑張っていければと思っています(系統・昆虫 橋本佳明)

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5月30日に,広島県で地方自治体向けのヒアリ講習会を実施してきました.広島県環境県民局や広島市や呉市などの市町職員,県の港湾局の方々など40名ほどの参加者に,「ヒアリ対策A to Z 」というタイトルで,ヒアリがなぜ怖いのか,ヒアリの侵入ルートとルート別の対策の考え方などを講義しました.90分の長い講義でしたが,参加者の皆さんは最後まで真剣に聞いてくださいました.講義の後の質疑応答でも,たくさんの質問があり,広島県がヒアリを始め外来種問題に真剣に取り組まれていることが,よく分かりました.翌日,広島県環境県民局の方から,参加者の皆さんが「来てよかった」と感想を寄せられているとメールをいただき,次回は,是非,ヒアリ同定実習会を実施して欲しいというリクエストも頂きました.
 いろいろなところへ出向いて,多くの講義を行うのは,正直なところ,体力的に,そして,ルーチンの仕事もあるので,大変です.しかし,環境省・農林水産省・国土交通省がH27年に策定した「外来種被害防止行動計画~生物多様性条約・愛知目標の達成に向けて~」でも,外来種による被害を防止するための考え方と指針として,社会において外来種対策を主流化するために,まずは,「外来種問題とその対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成が必要です」と謳われています.自然史博物館は,まさに,生物多様性や生態系の重要性を社会に実装する場で,外来種問題を知り,理解し,行動する市民を育成することができる機関です.ヒアリ騒動を契機にして,外来種問題を正しく知り,正しく行動できる社会の実現に,博物館の研究員として,そしてアリの研究に生涯をかけて取り組んできた大学研究者として,少しでも貢献できればと思って,頑張ります(系統・昆虫 橋本佳明)

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5月23日,京都府環境部の「外来種バスターズ」委員会に,委員として参画してきました.

 外来種の侵入定着を防ぎ,地域の安全な暮らしを守るためには,外来種が定着・分布拡大する前に発見して,初期段階で駆除するのが,一番有効な手立てです.しかし,行政だけで,十分に,外来種監視の目を光らせるのは,なかなか難しいところです.そこで,京都府は,本年度から,行政と民間,そして市民の協働で,外来種の監視,駆除に取り組む「外来種バスターズ隊,監視協力隊」を立ち上げることにしたのです.このような試みを本格的な施策として,地方自治体が実行する試みは,これまでに例の無い,画期的なものです.

 外来種バスターズを実施していくためには,対象とする外来種の選定だけにとどまらず,正確な自然科学の知識に基づいて,外来種の発見や駆除が行える人材育成にも,行政担当者だけなく民間企業や市民を含めて,広く取り組む必要があります.「思索し、行動し、提言する博物館」の研究員として,また「社会から信頼され評価される、世界水準の大学」の教員として,私がこれまでに人博や兵庫県大で蓄積した研究成果や啓蒙・教育活動のノウハウを生かして,この画期的な取り組みが成功するように,微力ながら支援していこうと思います.そして,この活動で得たノウハウを,地域の自然と安全な暮らしを守るために,兵庫県での環境施策や外来種対策に還元できるように,しっかりと学んできます(系統・昆虫 橋本佳明).

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5月22日に,岡山県環境文化部自然環境課主催の第2回ヒアリ講習会を実施してきました.今回は,港湾関係者向けということで,倉敷市の水島港近くの倉敷市環境学習センターで,3時間の講習.70名を超える港湾事務所,事業者,荷主の方々の参加がありました.
 講習会では,まず,「ヒアリ対策A to Z」のタイトルで,なぜ,ヒアリが怖いのか,ヒアリの侵入ルートは2つ,各侵入ルートごとに,どのような対策が必要かを講義,続いて,岡山県が用意してくださった実体顕微鏡と,人博から持参したヒアリやアカカミアリの標本を使って,ヒアリやアカカミアリの一次スクリーニングの実技講習を行いました.さらに,今回は,特に,現場でヒアリに遭遇することが多い方々が対象でしたので,肉眼で,ヒアリやアカカミアリと,アリグモや在来のアリを区別するポイントについても講義してきました.倉敷市の港湾地区は,岡山駅から車でも1時間以上の距離があり,人博から近いようで遠い場所での講習会ということもあり,結構,体力的に疲れましたが,ヒアリ水際防衛の最前線におられる方々に,直接,講習をさせていただける貴重な機会となりました.
 明日は,京都府の環境部自然環境保全課が計画している,行政と民間,市民の力を集結して外来生物対策にあたる「外来種バスターズ」組織委員会に参画してきます.これから,ますます,経済のグローバル化が進む中で,地域に,生物多様性保全に関わるセンターや自然史博物館があることが,いかに,外来生物対策に力になるのかを実感しています.人博の存在価値,そして,大きくは,日本の自然史博物館の意義をアッピールする好機ととらえて,少々,くたびれてきましたが,外来種から地域の方々の安全な暮らしを守る手助けのために,頑張ります(系統・昆虫 橋本佳明)

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 JICA(独立行政法人国際協力機構)が行っている課題別研修のうちのひとつの研修として今日、ひとはくで6カ国の研修員の方々が研修を行われました。また、この機会に館内の展示を見学して頂きました。このようすをご報告します。

 今回の課題別研修のテーマは「市場メカニズムを活用した持続的森林・自然資源管理」で、日本で5月13日から6月24日まで研修されています。世界6カ国(ブラジル・ホンジュラス・ケニア・レバノン・チュニジア・ウガンダ)から来られた研修員の方々ですが、研修員といっても学生ではなく、それぞれの国でこのテーマに取り組まれている専門家や行政の方々で日本の技術を学びに来られています。ひとはくでは今日1日GIS(地理情報システム)を用いた自然資源管理について学ばれました。
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6カ国6名の研修員の方々。本日研修の講師を務めた本館の三橋弘宗主任研究員(右から3番目)、JICA関係者(両脇)とともに。

  
(左写真)スマホに「館ナビ」kan-naviアプリをインストールしていただき、英語の解説を見ながら各自の興味のある展示をご覧いただきました。館ナビには日本語や日本語(子ども用)の案内もありますので、次回ご来館の際にはお試しください。>> ご自身のスマホを使って「展示解説」が楽しめます!
(右写真)「世界の森」展示を見る研修員の方。自国から運ばれてきた展示物を見ていただきました。

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(左・右写真)興味を感じていただけたのは、やはり兵庫県産の丹波竜タンバティタニスの展示です。母岩に含まれる様子を再現した模型の展示を熱心に写真に撮られていました。

  左写真は、研修を終えられ出発される6カ国6名の研修員の方々です。三橋研究員(左手前)から豊岡での研修についての励ましを受けています。
これから豊岡市までバスで移動され、現地で研修を続けられるとのこと。遠く海外に来られてタイトなスケジュールで研修されるのは、体力的にもかなり厳しいことと思います。お体に留意され、6月24日まで研修を続けられるよう願っています。


生涯学習課 竹中敏浩 

昨年に,ヒアリについて,「見慣れない赤いアリに注意」というフレーズが注意喚起のチラシやポスターに使われたためか,今も,赤い体色のアリを見つけた方から,ヒアリかもしれないという問い合わせが博物館にあります.特に,この時期,胸部と腹部の一部が真っ赤なムネアカオオアリの結婚飛行シーズンで,このアリを見て,ヒアリと思う方が多いようです.
 台湾で撮影したヒアリの生態写真(肉眼での印象に近い倍率)とヒアリ・アカカミアリの体色と在来アリの体色に比較表を掲載しておきます.見てわかるように,ヒアリは,むしろ茶色から黒っぽく見えるアリで,決して,赤いアリではありません.また,殺人アリと騒がれたことで,みなさんのイメージの中では,ヒアリは巨大なアリと思われている方が多いようですが,体長は,小型の働きアリで2mmぐらい,一番大きな働きアリでも6mmほど,女王アリも1cmぐらいの大きさです.アリ界では,ヒアリは中肉中背のアリです.ムネアカオオアリは働きアリでも体長1cmぐらい,女王アリは2cmもある日本で最大のアリです.
 人博では,小型から大型の働きアリまで,実物のヒアリ標本を展示しているので,一度,実物を見に来てください.「百聞は一見にしかず」です.実物を実際に見ることができるのが,自然史博物館の良さ.そして,人博では,外来生物の事や生物多様性を学ぶことができるセミナーも多数開講しています.「百見は一考に如かず,そして,百考は一行に如かず」です.正しく知って,正しく怖がり,正しく行動できるようになれますよ (系統 昆虫 橋本佳明)

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5月11日に,岡山県の環境文化部自然環境課主催の自治体向け「ヒアリ対策講習会」が開催されました.岡山県のヒアリ有識者会議の委員を務めている関係もあり,この講習会で,講師として,ヒアリを始めとする外来アリ対策の講義と,持参した標本を使って,ヒアリやアカカミアリの一次スクリーニング技術の実習を行ってきました.同課で,ヒアリや外来生物問題に積極的に取り組まれている継山さんのご尽力もあり,岡山県下の市町村から,40名近い方々の参加がありました.また,地元のテレビ局や新聞社も取材にこられ,講習会の様子を熱心に撮影したり,参加者にインタビューをされていました.

 講義では,まず,ヒアリを正しく知って,正しく怖がるために,「なぜヒアリが怖いのか」から講義をしました.ヒアリが怖いのは殺人アリだからではなく,ヒアリの侵入定着を許すと,地域の生態系や生物多様性だけでなく,農業や商業活動という人の営みにも大きな被害をもたらし,さらには自然を愛好する文化までを破壊するモンスターだから恐ろしいのです.そして,アリと言う生き物の凄まじい繁殖力と,それ故にヒアリの駆除は難しいこと,それでは,その強敵に,どのように,立ち向かえば良いかを,できるだけ具体例をあげて,お話しをさせていただきました.

 実習では,持参した在来のアリと,ヒアリ,アカカミアリの標本を各テーブルにお渡し,岡山県に用意いただいた実体顕微鏡を使って,参加者の方々にヒアリとアカカミアリのスクリーニングを体験していただきました.顕微鏡の標本画像をスクリーンに投影する装置で識別のポイントを解説しながら,参加者のところを回って,一緒に顕微鏡を覗き,さらには,その合間にテレビ局のインタビューも受けるという,かなりハードな実習講義でした.しかし,人博で作成したヒアリとアカカミアリの一次スクリーニングの教科書を開いて,実体顕微鏡を使うのが初めてという方や,老眼で顕微鏡を覗くのに苦労されている方が,一生懸命にアリの標本を見ておられるので,へこたれるわけには行かず,頑張りました.実習では,参加者の皆さんが,実際にヒアリの標本を見て,思っていたよりもヒアリが小さいと驚かれていたのが印象的でした.すぐにヒアリやアカカミアリを同定できるようになるのは無理だとしても,実物を知ったことで,他のアリをヒアリやアカカミアリと簡単に間違えることはなくなるに違いありません.博物館でヒアリの展示を作り,実物の標本を配架している意義も,ここにあります.実物を多く保管している博物館は,外来生物の問題でも,一番役に立つところなのです.

 岡山県では,さらに,倉敷市で港湾関係者を集めて,ヒアリ対策講習会を開催される予定で,そこでも講師を務めることになっています.外来生物問題と地域の自然や生活を守るために,人博と兵庫県も頑張ってますが,岡山県,さらに頑張っておられます.(系統 昆虫 橋本佳明).

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 5月9日に,芦屋市環境衛生協会主催で開催された市民向けの害虫対策講習会で,ヒアリの講演をしてきました.
平日にもかかわらず,100名近い方々が講習会に参加してくださり,講演する方としても熱が入りました.

ヒアリは殺人アリ?
 講習会は,蚊が媒介する病気の話とその対策と,ヒアリ対策のお話の二本立てでした.昨年度,ヒアリは殺人アリだと騒がれたこともあり,人への刺噛被害に,どうしても,皆さんの関心がいきがちです.私も,神戸で日本初のヒアリ侵入が発見された当初は,米国では年間,何人もの人がヒアリで亡くなっているという情報もあり,ヒアリは怖いアリだと思っていました.しかし,その情報をよく調べてみると,必ずしも,科学的な根拠に基づくものではないことがわかりました.例えば,何かの虫に刺された一般の方が,正確に,その虫をヒアリと同定できるわけはなく,ハチやアリのような虫に刺されたという報告例の中から,これは,ヒアリに刺されたのだろうという推定に基づく数字のようでした.そこで,住居環境などが日本に似た台湾に直接,出向いてヒアリ被害の現状を伺ってくることにしました.台湾は,米国からヒアリが侵入して10年になります.台北にある保健所で話を伺うと,ヒアリによる台湾での死亡例は,これまでに0人で,ヒアリに刺された多くの方は,薬局でヒスタミン軟膏等を買って,自分で対処されているということでした.私も,その時にヒアリの野外調査を行い,2回ほどヒアリに刺されました.刺された瞬間は,かなりの痛みがありましたが,その後は,少し赤く腫れただけで,特に,体に異変を感じることはありませんでした.もちろん,ヒアリによるアナフィラキーショックが起こるかどうかは,刺された人の体質によるところが大きいので,安心はできません.しかし,殺人アリという表現は,少々,大げさであることがわかりました.

ヒアリが怖いわけ
 ヒアリの侵入と定着を許すと,怖いのは,ヒアリがアリだからです.アリは,卵を産むのと長生きするのが仕事の女王アリと,雑用をこなす働きアリが一緒に,家族で巣を作って暮らす昆虫です.産卵マーシンの女王アリは毎日膨大な数の卵を産むことができ,ヒアリの女王アリは1日1000個以上の卵を産むことが知られています.その結果,ヒアリの巣にいる働きアリの数は,6年ぐらいで,20万匹を超えるまでに増殖します.ヒアリは雑食性で,花の蜜から種子,動物,時には,機械油までを餌にすることがわかっています.このため,中国では農作物の花がすべてヒアリに食い荒らされて,巨額の農業被害が生じたり,米国では電気ボックスなどにヒアリが入り込み,ケーブルなどを齧ることで停電などの経済被害まで起こっています.ヒアリは,単に健康被害を引き起こす衛生害虫ではなく,農業から産業まで,人の営みすべてに大きな被害をもたらすモンスターなのです.さらに,ヒアリを駆除するためには,いくら働きアリを殺しても意味がありません.何十万匹という数のアリの中から,産卵する女王アリをピンポイントで攻撃し,殺さないと駆除することはできないのです.ヒアリが本当に怖い理由は,こうしたアリという生物の特徴にあります.ヒアリを正しく怖がり,ヒアリと正しく戦っていくためには,まずは,ヒアリやアリという生き物の事を正しく知る必要があります.

 博物館には,アリを研究する私のような,基礎的な自然史研究に取り組む多彩な研究員がいます.ヒアリと正しく戦うために,アリという生き物のことを正しく知る必要があるように,外来種問題をはじめ,生物多様性や生態系の保全や県民の安全な暮らしを守るためには,実は,博物館が有する自然科学の成果が役に立つことを,ヒアリは示してくれました.今後も,微力ではありますが,これまでの研究成果を,少しでも社会に還元できるように,尽力してまいります(系統 昆虫 橋本佳明)

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中国から帰国早々,神戸港のコンテナから,ヒアリらしいアリが発見されたので,同定確認して欲しいという連絡が,神戸市,兵庫県,環境省からありました.標本の到着を待って調べてみると,ヒアリではなく,同属のアカカミアリでした.アカカミアリも,ヒアリと同様に有毒の針を持ち,刺されると非常に危険なアリで,特定外来生物に指定されています.

 アカカミアリが見つかったコンテナは,3月22日にインドネシアのジャカルタから,合成繊維の材料を積載して4月5日に神戸港へ陸揚げされたもので,26日に県内の工場へ陸送され,荷下しの時にコンテナ内にアリがいることが通報されました.空コンテナは神戸港へ戻され,燻蒸によってアリは殺虫,神戸港などに逃げ出していないかを念のために調べるモニタリング調査が行われています.

ヒアリよりも厄介なアカカミアリ
 アカカミアリも,ヒアリと同様に,米国南部から南米にいたものが世界に広がったものです.その習性や生態的特性はヒアリと変わらず,侵入地で健康被害だけでなく,農業被害や生物多様性の破壊など,深刻な問題を引き起こしています.さらに,ヒアリよりも怖いのは,アカカミアリが,インドネシアを始め,中国からベトナム,タイ,マレーシア,インドまで,アジア熱帯のほぼ全域,そしてアフリカ大陸にまで,侵入・定着していることです.このため,今後,ますます経済のグローバル化が進めば,アカカミアリの侵入頻度がウナギのぼりに高くなることが懸念されます.実際,アカカミアリの発見は,今年に入って,すでに,これが2件目になります.1件目は,4月14日に,なんと,長野県の住居屋内で,生きたアカカミアリの女王アリが発見されました.海外から輸入された什器類に紛れて国内に侵入したのではないかと推測されています.ヒアリの侵入は全国版のニュースになることが多いですが,なぜか,アカカミアリだと報道されないようです.しかし,実は,アカカミアリの方が防衛ラインを突破して,国内に定着してしまう可能性が高い,ヒアリよりも怖い外来アリなのです.

ヒアリとアカカミアリの識別ポイントー博物館の標本が役に立つ
 アカカミアリはヒアリと同じトフシアリ属のアリなので,形や体色,大きさなどが,非常によく似ています.両種を見分けるには,顕微鏡などを使って,大アゴの付け根など細部を,よく観察する必要があります.その中で,見やすいのは,アカカカミアリには,前脚の付け根あたりの胸部側面板に突起や張り出した辺がある点です.人博に長い研究時間をかけて収集集積したアリの標本などを使って調べた結果では,少なくともアジア全域に分布するアカカミアリには,この特徴が安定して見られます.一方,ヒアリには,このような突起はありません.博物館に多くの標本を集積・保管しておくこと,そして,それを活用出来る研究者がいることが,外来種問題でも大きな力になるのだと,実感しています.(系統分類 昆虫 橋本佳明)

(写真上段:神戸港で発見されたアカカミアリ,写真下段:アカカミアリの識別ポイントー胸部側面の突起)

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環境省のヒアリ有識者会議のメンバーとして,環境省,国立環境研究所の五箇さんと一緒に,中国広東省広州市に,日中両国ヒアリ対策会議に行ってきました.

 広東省にある華南農業大学(中国重点大学)の中国ヒアリ研究センターで,その先生方や中国中央政府の生態系・環境保護部,地元広東省環境保護庁の方々と,中国でのヒアリの現状や,その対策についての情報・意見交換を行い,そのあと,実際にヒアリが高密度で生息している造成地に出向いて,その駆除作業の視察もしました.


中国でヒアリは農業害虫・・・

 今回の視察で,中国では,ヒアリは主に農業害虫として捉えられていることがわかりました.例えば,ヒアリは色々な作物の花を,花蜜を集めるために食害し,その結果,結実が妨げられ,農業に大きな損益が出ているとのことです.さらに,ヒアリが増えるにつれて,その被害は林業,そして住居地域での健康被害にまで拡大しています.これを受けて,華南農業大学の昆虫学の先生方は,14年をかけてヒアリ対策に関する基礎的な研究成果を積み上げ,現在,30以上の特許からなるヒアリ駆除のための新薬開発に成功されていました.さらに,その散布方法についても,ヒアリの生息状況の違いに合わせた精緻なマニュアルを作成・公表,そのレベルの高さに,驚かされました.


科学的な駆除方法を開始・・・

 現在,この科学的な駆除方法に基づいて,本格的なヒアリ駆除が開始されたところのようです.広東省では年間20億円近い対策費を計上して,農業,林業,環境の各部署による合同チームがヒアリ対策に取り組んでいました.まだ,限定された地域ではありますが,ヒアリの根絶に成功した面積は広がっていました.国内では,中国での,このような情報は全く入ってきません.やはり,現場に飛び,顔と顔を突き合わせて,話し合うことの重要性を痛感しました.特に,外来種問題は,まさに国際協働の課題でもあるわけですから,積極的な交流が求められるのは当然のことといえるでしょう..


日本へのヒアリ侵入を防ぐには・・・

 日本へのヒアリ侵入を防ぐためには,今後も,日中でヒアリ対策に関する協議を進め,中国との協働体制を構築していく必要があります.兵庫県は,中国との貿易量が国内でも最大規模を誇る港の一つである神戸港を抱える,外来種問題の最前線にある地域です.そして,広東省は,兵庫県の姉妹県の一つで,この省には多くの日本企業が進出しており,日本への輸出量最大規模を有する港の一つである南沙港を抱えています.国と国,そしてアリや害虫駆除の研究者同士,さらに,地域と地域との積極な交流が,ヒアリを始め,今後,増大するであろう外来種の対策に大きな力となることを,実地で学ぶことができた視察となりました.近いうちに,華南農業大学の先生や広東省の方々を兵庫や人博,県立大学にお呼びできる機会を作り,県下のヒアリ対策に少しでも貢献できるよう努力してまいります.

(系統分類研究部,昆虫 橋本佳明)


(写真 上段:華南農業大学の熱烈歓迎電光掲示,写真 二段目左:大学のホームページに掲載された日本ヒアリ視察団の記事.写真 二段目右:大学入り口で記念写真ー五箇先生にポーズを合わせて)

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(写真三段目左:ヒアリ研究センターで情報と意見交換会,写真三段目中:広東省環境庁,写真三段目右:広東省環境庁での意見交換会,写真下段:広東省広州市郊外のヒアリ生息地で,ヒアリ駆除作業の視察)

ひとはくではこれまで、3階丹波の恐竜展示室において、2006年に発見され2014年に新属新種として認められた植物食恐竜、通称"丹波竜"=学名"タンバティタニス・アミキティアエ"の化石の産出状況のレプリカや生体復元像(右)を展示していました。 tambatitanis1.JPG 

これに加えて、昨日4月27日(金)より、タンバティタニス・アミキティアエ全身骨格模型(10分の1)実物大頭骨模型を展示しました。昨日は、新聞各紙(朝日、毎日、読売、神戸、産経、六甲タイムス)とサンテレビに取材いただき、この展示担当の三枝春生主任研究員が説明を行いました。 
   
熱心に取材いただき、さまざまなご質問をいただきました。
■大きさに関するご質問:体長約15mを10分の1にして、1,5mの模型を製作
■製作方法:3Dプリンタによる製作
■材質に関するご質問:10分の1全身骨格模型は硬質プラスチック、実物大頭骨は樹脂
■これまで発見されている部分は:全身骨格では肋骨・血道弓・尾椎など、頭骨では歯骨・脳函など
■推定の参考にしているのは:アジアや南米などで発見されている他の竜脚類などを参考にして推定

   
ちょうど昨日は、兵庫県立大学附属中学校の生徒さんたちが見学に訪れてくれていましたが、新聞社の取材の様子も含めて写真を撮り、見学をしてくれていました。

今回展示を開始したタンバティタニス・アミキティアエの全身骨格・頭骨模型以外にも、北米で発見されたカマラサウルスの頭骨レプリカ、アパトサウルス(かつてブロントサウルスと呼称)の骨格模型(12分の1)も引き続き展示されていますので、これらと比較もしながら展示をお楽しみください。

これら恐竜化石のほか、緊急速報展「篠山層群からみつかった小さな植物化石」や、原始的な真獣類(哺乳類の一種)"ササヤマミロス・カワイイ"の展示などで、かつてこの地域が個性豊かな生物たちの繁栄の地であったことを感じていただければ、うれしく思います。

このゴールデンウィーク期間中、4月30日(月)、5月5日(土)、6日(日)には、今回取材を受けた三枝研究員による展示解説が行われます。
また、5月6日(日)には「化石発掘体験セミナー」(申込締切4月29日(日))が開催されます。 


ゴールデンウィーク期間中、ぜひ、ひとはくへもお立ち寄りください。


生涯学習課 竹中敏浩

1月28日(日)に神戸で開催される「第10回サイエンスフェアin兵庫」に・・・
今回もひとはくは・・出展いたします!

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会場は兵庫県立大学神戸情報科学キャンパス 神戸大学統合研究拠点コンベンションホール
甲南大学フロンティアサイエンス学部(ひとはくは6F講義室です!)などです!
 
今回も1000名を超える高校生などが参加し、科学技術分野における研究や実践発表の場として
口頭発表やポスター発表が行われます!
そして・・・今回の・・・
ひとはくの出展タイトルは・・・いろいろな「虫」でございます!
世の中にはいろいろな「虫」がいます。きれいな虫、かっこいい虫、変な虫......。
さまざまな昆虫やダンゴ虫などの標本や生体を展示します。
その形や生活の不思議などを紹介しますね!

また、「高校生のための生きもの調査体験ツアーin台湾」の説明もしていますので
興味のある方は どんどん質問して下さいね~!

ひとはくとしても、「研究や実践の拡大・充実・活性化」というフェアの目的にかなうべく、
出展し、高校生などと交流をさらに図ります!
昨年も・・・・ひとはくブースはいつも「大入り満員」でございました。
標本の説明等を兼ねたミニセミナーや高校生や参加者からの質問など
研究員が熱心に説明と研究のアドバイスをいたしますね!

高校生のみならず!ひとはくファンのみなさまも
ぜひ!当日会場にお越しくださいね~
ひとはくはみなさんの夢の実現を応援します!

それでは会場でお待ちしております!

                            生涯学習課 中前 純一

今日1月8日、大阪教育大学附属天王寺校舎の高校生3名(1年2名、2年1名)が、各自進めている研究に関する助言を求めて、ひとはくを訪れてくれました。
 大阪教育大学附属高等学校は、附属高校として大学とともに教育の理論と実際について研究を進めておられます。また、平成27~31年のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)にも指定され、理数教育にも力を注いでおられる学校です。

 3名のうち2年生1名は、オオセンチコガネの生態について研究しています。ファーブルが検証しながらも結論が出なかったフランスの農家の「センチコガネが天気を予想する」という口伝に触発され、オオセンチコガネの餌の探索行動における風向き・風速等の関係について非常に興味深い研究を進めています。本年度の「高校生のための生き物調査体験ツアーin台湾」にも参加し、昆虫好きで探究心豊かな生徒さんです。すでに風速とオオセンチコガネの飛行について興味深い結果も導き出していますが、今後の研究の深まりに注目したいと思います。

(左・右)「気象条件によるオオセンチコガネの行動の変化~風速と飛翔行動の関係性~」の研究について説明
  

このほか、1年生1名は、市立西宮高校南にある新池に生息するアオサギやコサギ、カワウなど鳥類の生息数と周辺環境について、調査を行っています。10年にわたり粘り強く丹念な調査を継続するとともに、新池から約6km離れた昆陽池にも調査に出かけるなど、地理的な視点も踏まえて調査を行っています。カワウとサギ類の生息数の相互関係など、非常に興味深いデータを得ながら、周辺環境との関係をさらに調査を重ねようとする熱意には感心させられました。

(左)新池・昆陽池における鳥類の生息数調査について、ひとはくの鈴木・山内両研究員に熱心に説明
(右)鈴木研究員から、クマワラジムシを題材に、調査研究の方法や外来種の問題について聴く高校生たち
  

今日、遠方から来てくれた生徒さんたちの研究に対する熱心さには頭が下がる思いです。次期学習指導要領では、高校では特に探究心を育てることが求められていますが、今日来られた生徒さんたちが継続して自らの探究心を育ててくれることを期待します。

生涯学習課 竹中敏浩

ひとはくファンのみなさまへ
 
毎日・・ひとはくにいろいろな質問やお問い合せがまいります!!
なんと4月から動物・昆虫・植物・化石など数百件を超え、各研究員が回答・解説をさせていただいております!!
その回答や解説の参考に 
お知らせいたします!!(少しだけ研究員気分が体験ができるかも??)


みなさま ひとはくの収蔵資料検索システムをご存知でしょうか?




ご存知のとおり・・・
ひとはくでは、動物・昆虫・植物・鉱物・岩石・化石等の自然史系標本や、
古地図・古絵図・映像・画像・書籍等の自然・環境に関する資料の収集に努めています!

開館前から続く一連の収集活動により、2016年度末には資料点数が161万点を越えるまでになりました。
このシステムは・・・収蔵されている161万点以上に及ぶ膨大な資料の一部を、ごらんいただくことができます!

例 植物
                    

例 昆虫

     


>> 収蔵資料検索システム をクリックして、ぜひ体験してみてください!!



                     生涯学習課 情報管理室 中前純一
ひとはくでは、9月23日(土)より、三田市立中学校の「理科自由研究作品展」を開催中です。


  
中学生の皆さんが自分で見つけたテーマを、中学校で学んだ科学の方法にしたがって探求してまとめた成果が理科自由研究です。このうち、優秀作品を「理科自由研究作品展」として、ひとはくサロンに展示しています。各中学校から選ばれてきた優秀作品であるだけに、どの作品も非常に立派な作品ばかりです。この中から未来のサイエンティストが生まれるかも。。

10月3日(火)までの展示ですので、作品が展示されている中学生やその保護者の皆さまもお見逃し無く。

ご覧いただいた中学生にちょっとアドバイスですが、このひとはくサロンのもう少し奥には、ひとはく研究員の最近の論文も掲示されています。大学・博物館レベルの研究はどう違うのか、同じなのか。もちろん探求の深さは違うのですが、自然に対する興味や静物に対する愛情は同じものです。どうぞそんなところも見て感じてくださいね。1、2年生は是非来年の自由研究のヒントにもしてください。
生涯学習課
竹中敏浩

9月22日(金),神戸市環境局より要請を受け,主任研究員橋本佳明が講師を務め,同市環境局環境保全部自然環境共生課や保健所の方々を対象とするヒアリ講習会を実施しました.

※本講習会で使用した手順書はこちらからダウンロードできます.>>ヒアリとアカカミアリの疑いがあるアリの1次スクリーニング手順 非営利目的であれば出典を明記してご利用いただて結構です.(CC-BY NC4.0


講師を務めた橋本佳明の感想です.
「4時間に及ぶ,講義と実習というハードなプログラムで,講師の方がむしろ疲れ気味であったにもかかわらず,実習生のみなさんは,終始,真剣に,そして,熱心にプログラムに取り組んでいただきました.
少しでも,お役に立てたなら,幸いです.」

以下,その講習会の模様と資料(このページ下部からダウンロード可)を掲載します.


 ヒアリの増加について説明,驚異となる繁殖力.    アリの繁殖システムについて説明
  


 講習会の様子.細かい作業です.          ヒアリの特徴,前伸腹節・腹柄節・後腹柄節の説明
  


 アカカミアリの頭部について説明           比較のため在来種の特徴について説明
  



左写真は,鏡下で特徴を確認し,手順書と見比べながらスクリーニング(せんべつ)を行っているところです.

慎重に丁寧に行うことでスクリーニングを行うことができます.



※写真提供は神戸市環境局自然環境共生課より

主任研究員 橋本佳明
生涯教育課 竹中敏浩

■第2回高校生のための生きもの調査体験ツアー1日目■ 


 去年に始まった「高校生のための生きもの調査体験ツアー」も、今年で2回目となりました。 台風9号、10号と立て続けに2つの台風が台湾に上陸したことから、残念ながら2日遅れの開催となりましたが、今日、2つの航空便に分かれて渡航、台湾に無事到着し、スタートしました。

    関西国際空港より出発          台湾桃園国際空港に到着
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 桃園国際空港で合流、バスに乗って、まずは台湾北部の高地、東眼山の自然教育センターに向かいました。到着と同時に土砂降りの雨。スーツケースを抱えながら、なんとかセンターの屋根に逃げ込みましたが、みんなびしょ濡れ。いきなり着替えからのスタートです。
 その後、日本と台湾の高校生がグループごとに着席、英語や身振り手振りで自己紹介をしながら初対面の交流がなされました。まだ緊張感が解けていない中、台湾の高校生たちからサプライズのウェルカムカードを1人ずつもらい、日本の高校生たちも緊張が溶けたような笑顔を見せてくれました。
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 夕食の後は、今年1回目の夜間観察。 遊歩道沿いに生息するヘビ(シュウダやバイカダなど無毒のもの)やキグチキノボリトカゲ、カエル(スウィンホーガエル、ヒキガエルの仲間)などを観察しました。

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 また、施設前では恒例のライトトラップを実施、去年のツアーでは現れなかったヤママユやオオミズアオも姿を見せてくれました。

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 明日は夕方まで東眼山に滞在し、昼間に活動する生きもの達を観察する予定です。 まだ始まったばかりのツアー、高校生たちの成長を見るのが楽しみです!


公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会
佐々木 洋平

 兵庫県立北須磨高等学校のサイエンスクラブ部員3名が来館し、ひとはくの岩石試料を用いて放射線測定実験を行いました。
 同校サイエンスクラブは、日本各地の中高校生が自然環境中の放射線を測定し、放射線地図を作るプロジェクト「ゆりかもめプロジェクト」にも参加しています。今日は、ひとはくが所蔵する岩石試料の中でも兵庫県内の岩石試料を中心に、ガイガー計数管方式の放射線測定器を用いて、岩石種による放射線量の違いを測定するために来館しました。
 高校生が自分たちの住む自然環境に興味を持ち、連携して調査を行っていこうとすることは、地球環境を次の世代に引き継いでいく上でも素晴らしいことです。北須磨高校サイエンスクラブの生徒の皆さんは、8月11日に福島県で行われる情報交換会を目指してデータをまとめていくそうですが、今後の継続した取り組みへ向けエールを送りたいと思います。

ガイガー計数管方式の放射線測定器を用いて岩石種ごとの放射線量を測定

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佐藤事業推進部長(兵庫県立大教授)より収蔵庫内の化石標本の説明を受ける
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神戸層群の植物化石の産出地点地図を見て
北須磨高校がその中心にあることを知る   展示室で兵庫の岩石の展示を見学
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兵庫県立人と自然の博物館
竹中敏浩

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研究紀要「人と自然 Humans and Nature」は,人と自然の博物館が年に1回,毎年冬に発行する学術誌です.
>> 研究紀要http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin.html

7月末日に設定していた原稿の締め切りを廃止し,通年で,いつでも投稿できるようにしました.

また、原稿の種類を増やしました.2016年度発行の第27号までは 原著論文・総説・報告・資料 の4種類でしたが,2017年度発行の第28号からは 原著論文・総説・報告・資料 の論文原稿に加えて 意見・書評・その他 も投稿いただけます.論文原稿は,これまで通り博物館内外の専門家が審査をし、編集会議で審議され,編集委員長が同意したものだけが掲載されますが,意見・書評・その他 は編集会議の審査と編集委員長の同意だけで掲載可能となります.ただし, 意見・書評・その他 では「論文」とは標榜できません

詳しくは、>> 人と自然原稿連絡先と投稿規程http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/bosyu&toukoukitei.html
を参照して下さい.

2017年11月末までに審査が済み,受理が確定した原稿は28号に載ります.
審査には、通常4か月ほどが掛かります.

出版は電子版のみとなりました.これまで同様,電子版は人と自然の博物館ホーム・ページから無料でダウン・ロードできます.>> 研究紀要http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin.html

出版したものは公共の学術プラット・フォームに掲載し,利用がより広がるように計画しています.公共の学術プラット・フォームは J-Stage の予定です.

2017年第28号への投稿も,すでに,いくつかが審査過程にあります.多くの皆さまの投稿を、お待ちしています.


研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員長
三谷 雅純
E-mail: mitani (at) hitohaku.jp
(at) を @ に変えて下さい.

人と自然の博物館では、ひとはく地域研究員や連携活動グループをはじめ、地域の自然・環境・文化を自ら学び伝える活動を行っている方々が、お互いの活動を知り、活動の質をあげ、新たな展開のヒントを得る場として、「共生のひろば」を開催しています。2006年からはじめて、12 回目となりました。開催した発表会では、口頭発表・ポスター発表等を合わせて80件を超えるの発表があり、活発な情報交換ならびに交流がおこなわれました!子どもからシニアの方、自然観察を始めて間もない方、超プロフェッショナルの方、どなたでも参加できるのが「ひとはく」のいいところですね!

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今回もひとはくのライブ映像配信機器を活用して、大セミナー室で開催された加藤研究員のギャラリートーク「人類誕生の時代を探る試み」や各種団体、学校などの口頭発表などをビデオカメラで撮影した映像をライブ映像配信機器や配信サーバー・無線LANを活用して中セミナー室やひとはくサロンでモニター等に生中継を来館者に提供し、研究内容の効果的な発表や来館者の理解度の向上に役立てております!

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ギャラリートーク
「人類誕生の時代を探る試み」(加藤研究員) 
ギャラリートーク終了後もみなさんから研究に関する質問がたくさんありました!
また、研究に関する個別の質問が学生さんなどからもあり・・・このままだと・・
夕方までいきそうな雰囲気でしたね~
みなさんの知的好奇心はアフリカ大陸より熱い!!
  
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口頭発表
口頭発表の部では、地域の活動団体や高等学校、大学を含め8団体の発表があり
質疑応答などもあり会場は熱気があふれておりました!
10代の方々の発表が多く・・・
みなさんに元気なエネルギーが・・・青春っていいですね~

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ポスター発表など
ポスター発表があり、参加の皆様たちも互いの活動を知る場として観覧するとともに
観覧者からの質問に回答されている光景が見られました。
また、当館の研究員が参加者の研究への助言も行いました。
その場で研究員の特注セミナー状態です!

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また、ひとはくでは
12日からはミニ企画展「淡路島の和泉層群北阿万層の化石調査」
本日からはミニ企画展「六甲山のキノコ展2017~野生のキノコの不思議な魅力~」
ミニ企画展 ひとはく研究員展2017「ひとはくの今」が開催しています!
本日、「共生のひろば」は終了しますが、まだまだ、ひとはくは企画展が盛りだくさん!
みなさまのお越しをお待ちしております。

                               情報管理課 中前純一 

 
ひとはくは、1月29(日)兵庫県立大学神戸情報科学キャンパス
(ポートライナー「京コンピュータ前」駅下車スグ)などで
開催される第9回サイエンスフェアin兵庫にブースを設け出展します!

前回も1500名を超える高校生などが参加し、
科学技術分野における研究や実践発表の場として
口頭発表やポスター発表が行われました!
フェア当日の会場はとってもアカデミックな熱気がいっぱいなんです!

前回の様子です!

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 鈴木研究員のダンゴムシセミナー    秋山研究員の植物セミナー
 
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 山内研究員の標本セミナー       ひとはくブースは高校生で満員です!


ちなみに・・・ひとはくとサイエンスフェアの関係につきまして・・・

主催の兵庫「咲いテク」事業推進委員会は・・・
高校・大学・企業・研究機関等が連携して、主に課題研究的な活動を通じて
科学技術人材の育成を図ることを目的とする、いろいろな行事・プログラム、
「兵庫『咲いテク』事業」を運営されています!
兵庫県教育委員会と県内SSH(スーパーサイエンスハイスクール)
指定校8校(神戸高明石北高尼崎小田高加古川東高龍野高豊岡高
神戸市立六甲アイランド高武庫川女子大附属中高)により組織されています!

実はひとはくとも関係が深く・・・研究員が
研究支援や相談、セミナー受講などで来館いただいている学校ばかりでございます!

そして・・・今回の・・・
ひとはくの出展タイトルは・・・いろいろな「虫」でございます!
世の中にはいろいろな「虫」がいます。きれいな虫、かっこいい虫、変な虫......。
さまざまな昆虫やダンゴ虫などの標本や生体を展示します。その形や生活の不思議などを紹介します。
そのほかにも・・・当日のお楽しみです!

ひとはくとしても、「研究や実践の拡大・充実・活性化」というフェアの目的にかなうべく、
ブースを出展し、高校生などと交流をさらに図りたいと思います!
それぞれの"ひとはく研究員"の"研究"ぶりを感じ取ってもらえるよう頑張ります!

研究員は出展に向けて鋭意準備中です!乞うご期待!

見学~入場料は無料です。
どなたでも見学していただけます。

日時 平成29 年1 月29 日(日) 10:00 ~ 16:30
会場(今年度は3 会場での分散開催になります。)
兵庫県立大学神戸情報科学キャンパス(7F 大講義室・中講義室、5F 小講義室)
神戸大学統合研究拠点コンベンションホール・ラウンジ
甲南大学FIRST(7F レクチャールーム、6F セミナー室)
※ひとはくは7F レクチャールームの予定です!
3 会場ともポートライナー「京コンピュータ前」駅下車スグ

昨年度の様子はこちら

追伸

実はサイエンスフェア参加した高校生などが・・
ひとはくに・・・たいへん興味を持ってもらって・・・

共生のひろばに多くの高校生が参加・見学をしてくれました!
当日の様子(ブログ) 共生のひろば(単行本) 
今年度はこちら
第12回 共生のひろば(2017年2月11日)

そして・・・
高校生のための生き物調査体験ツアーin台湾(ブログ)
参加してくれた高校生も!

志のある高校生などをひとはくは・・・
末ながーく支援していきますね!
それでは・・・来館お待ちしておりますね!

                     情報管理課 中前純一




兵庫県立人と自然の博物館では、古生物学・岩石学/生態学分野での任期付研究員を募集しております。
当館での業務内容は、地球科学及び生物学を基盤とした、人と自然の共生に関する調査・研究、教育普及等の業務を担っていただきます。
任期は、2017年4月からの3年間です。条件などの詳細は、下記のURLをご参照ください。

http://www.hyogo-c.ed.jp/~board-bo/kisya28/2811/281102jinnji.pdf

応募締切は11月30日(必着)ですので、お急ぎご準備・ご応募下さい。
各種試験(専門試験、面接)については、12/15(木)に実施されます。
どうぞよろしくお願いいたします。
                                                                                 (みつはしひろむね)

県民情報番組 ひょうご"ワイワイ"の取材を受けました!!
レポーターはおなじみの高曽根里恵 広報専門員です!
「ひとはく」の魅力をいろんな角度から紹介していただきます!


同番組の特集コーナー にて紹介されます!
是非ご覧ください!
放 送 局:サンテレビ
放送予定日:7月10日(日) 8:30~9:00
再 放 送:7月11日(月) 18:00~18:30 

ひょうごワイワイplus+ (ブログ)

撮影風景の一場面をみなさんに紹介いたします! 
橋本佳明主任研究員、山内健生主任研究員、大平和弘研究員が出演予定です!
放送当日を楽しみにして下さいね!

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番組紹介予定の企画展
「ひょうごの昆虫展」

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収蔵資料展「温古写真大作戦!!むかしの写真で未来をつむごう」

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                         情報管理課
                          中前 純一

 人と自然の博物館では、ひとはく地域研究員や連携活動グループをはじめ、地域の自然・環境・文化を自ら学び伝える活動を行っている方々が、お互いの活動を知り、活動の質をあげ、新たな展開のヒントを得る場として、「共生のひろば」を開催しています。2006 年からはじめて、11 回となりました。開催した発表会では、口頭発表・ポスター発表等を合わせて例年の倍以上の90件を超えるの発表があり、活発な情報交換ならびに交流がおこなわれました。

ギャラリートーク
「ダイオウイカの謎に迫る最新研究」(和田研究員)            
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口頭発表
口頭発表の部では、地域の活動団体や高等学校を含め8団体の発表がありました。

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ポスター発表
ポスター発表があり、参加の皆様たちも互いの活動を知る場として観覧するとともに観覧者からの質問に回答されている光景が見られました。
また、当館の研究員が参加者の研究への助言も行いました。

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特設会場での展示

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展示の部(共生のひろば展)

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また、兵庫県立人と自然の博物館4階ひとはくサロンでは第11回共生のひろば展として4月3日(日)まで展示されています。
地域で活動されている各団体のこの素晴らしい研究や成果は一見の価値あり! 是非一度ご覧下さい。

                                 情報管理課 中前純一



hiroba2016_annai_s.JPG以前からアナウンスしておりましたとおり、2月11日(祝)に第11回共生のひろばを開催します。

 どなたでもご参加いただけます。ぜひ、ご来館ください(混んでますが・・・)。この日はスペシャルです。

共生のひろばとは、いわゆる「市民学会」で、幼稚園児からレジェンドまで、あらゆる立場の方が、日頃の活動や研究の成果を発表する、なんでもありな発表会です。これまで、ひとはく地域研究員や連携活動グループの方に限定していましたが、今回からは、広く参加者を公募したところ、この時期にも関わらず、県内外から多くの団体さんのエントリーがありました。その数、なんと90件近いテーマ。小さな学会よりもずっとたくさんの発表数があり、それぞれが大変ユニークです。小学生が取り組み外来種対策もあれば、NPO等によるシカの被害対策に関するはなし、都市公園での1年間の生態調査もあれば、はたまた生き物コレクションの迫力ある展示もあれば、プラナリアの実験や茅葺民家の暮らし紹介など、とても多様性です(プログラムはこちら)。そして、何よりも、参加される方々がとてもユニークで面白い。そんな方々と、丸一日、交流できる機会があるのが、共生のひろばの特徴です。ポスター発表が中心で、参加者どうしでの議論が深まり、あらたな活力が生み出されることを期待しております。

環境科学分野や教育分野に携わっておられる方々にとっても、新たな発見がたくさんあるはず。各地で展開されている保全活動や教育普及の活動の事例があつまりますので、色んな工夫が参考になるかと思います。学校教育や大学教育とは違う、ミュージアムでも生涯学習に関心があるかた、もっとヤヤコシイ言い方をすれば社会構成主義に基づくアクティブラーニングに関心がある方にも、実践教育の様相をお伝えできると思います。そして、何よりも、こうした地域での自律的な取り組みの質と数が、ひょうごの自然を支える原動力になっていることが実感できるのではないでしょうか。

プログラムなどは以下のサイトにあります。
http://www.hitohaku.jp/infomation/event/kyousei11th.html

また、当日は、当館の和田研究員によるダイオウイカに関する最新研究の紹介(若いダイオウイカの標本も登場!)や、伊丹市昆虫館の長島さんによるピンセット講座なども開催されます。興味のある方は、ぜひ、ひとはくへお越しください。

それと、毎年恒例の御影高校による六甲山のキノコ展2016が開催されるほか、最新研究からのトピックスとして恐竜?卵化石の実物展示もあります。ぜひ、みなさまお誘いあわせのうえ、博物館にお越し頂ければと思います。

(みつはしひろむね)

 かつて、六甲山地に位置する東お多福山には、ススキが優占する広大な面積(約83ha)の草原が広がっていましたが、戦後の植林や土地開発、草原管理停止による森林への遷移により、現在は約9haにまで面積が縮小しています。また、ススキも衰退しネザサや優占する草原に変化、草原生植物の多様性が低下するとともに、ススキの穂が広がる景観が失われるなどの課題が発生しています。これらの解決のため、平成19年度より東お多福山草原保全・再生研究会が中心となり、当地でのススキ草原の景観の再生と、草原生植物の多様性の保全を目的とした活動がすすめられています。
 本展示では、当地の草原保全で目指すべき草原の姿を検討するために、約460点の古写真を収集、整理、分析し、当地の植生と利用の変遷を紐解くとともに、かつてのススキが優占していた頃の草原の姿を明らかにした結果を紹介します。また、1人でも多くの方にかつての東お多福山草原の姿を伝えることで、草原保全の目標像が共有されるとともに、保全活動の賛同者・参画者の輪が広がることを期待しています。
 なお、本展示は平成23年度~25年度科学研究費補助金若手研究B(課題番号:23701026、代表者 橋本佳延)で実施した古写真による東お多福山草原景観調査の研究成果の一部を使用しています。

1  展示概要
 ①  東お多福山草原の概要(場所、希少性、消失の危機など)解説パネル
 ②  東お多福山草原で撮影された1930年代以降の古写真と文献等情報により構成される草原の変遷をまとめた年表パネル(1点)
 ③  古写真の撮影地点(推定)の位置図および、同一撮影地点の現在の様子を収めた写真を比較するパネル
 ④  東お多福山草原の植生、景観、利用を特徴付ける古写真
 ⑤  大正期以降に発行された、東お多福山草原の写真を掲載したハイキングガイド(実物)
 ⑥  東お多福山草原における草原保全活動の紹介パネル

  ※会場によって展示物の構成が異なります。

2 主催・協力
  主 催:兵庫県立人と自然の博物館
      兵庫県三田市弥生が丘6丁目 電話:079-559-2001(代表) http://hitohaku.jp
  共 催:東お多福山草原保全・再生研究会ほか

3  担   当
                 兵庫県立人と自然の博物館 自然・環境再生研究部 橋本佳延
             電話&FAX(直通):079-559-2014     

4 巡回日程・会場     終了しました。
(1)期間 9月16日(水)~9月29日(火)
   場所 兵庫県立美術館ホワイエ 神戸市中央区脇浜海岸通1-1−1
(2)期間 10月1日(木)~10月9日(金) 
   場所 伊丹市立生涯学習センター(ラスタホール)ロビー 伊丹市南野2丁目-3-25
(3)期間 11月5日(木)~11月19日(木)
         場所 神戸市シルバーカレッジ ホワイエ 神戸市北区山田町下谷上中一里山14-1
(4)期間 12月26日(土)~1月15日(金)
   場所 神戸市東灘区民センターロビー 神戸市東灘区住吉東町5丁目1-16
(5)期間 平成28年1月29日(金)~2月8日(月)
   場所 神戸市立灘区民ホール神戸市灘区岸地通1丁目1-1

   巡回展の詳細はこちらから

5  展示の様子 ※兵庫県立人と自然の博物館での展示構成。会場によって変更があります。

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岡山県吉備中央町の宇甘渓にアオキの調査に行ってきました。アオキには「アオキ」と「ナンゴクアオキ」と呼ばれるものがあります。アオキは染色体数が2n=32の4倍体で、北海道から中国・四国地方まで広く分布しています。一方、ナンゴクアオキは2n=16の2倍体で中国・四国地方以西に分布しています。岡山県ではアオキとナンゴクアオキの両方が生育していてとても調査しやすい場所なのです。

さて、これまでアオキとナンゴクアオキは染色体数が違うものの外見で区別するのは難しいとされてきました。
しかし、この2種類のアオキは葉の鋸歯の形で区別できるのです。

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これがアオキ(右)とナンゴクアオキ(左)の葉です。

 

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 この2枚の葉を比べて見ると、アオキの葉は鋸歯の先は外を向いています(赤線)。しかしナンゴクアオキの葉は鋸歯の先が内側を向いているのです(黄線)。

個別に見てみると、
こちらがアオキ。鋸歯の先は外側を向いて鋭い感じです。

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こちらはナンゴクアオキ。鋸歯の先は内側を向いていて丸みがあります。

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この違いは伊豆諸島や屋久島など島嶼部に生育するものには当てはまりませんが、本土のアオキとナンゴクアオキであればほぼ区別できます。

山本伸子(自然・環境評価研究部)

 三田市内8中学校の理科自由研究作品を、9月20日(金)~26日(木)、当館4階ひとはくサロンで展示しております。

 

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▲ひとはくサロンでの展示の様子

 地元の中学生の研究成果を是非ご覧ください。
今年は8中学校より33の作品が出展されております。
<出展中学校>
三田市立上野台中学校
三田市立長坂中学校
三田市立狭間中学校
三田市立八景中学校
三田市立けやき台中学校
三田市立富士中学校
三田市立藍中学校
三田市立ゆりのき台中学校

 

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▲図や写真を使い、わかりやすくまとめられています。

 なお、展示を見学するには、博物館の観覧券が必要です。大人100円、65歳以上50円、高校生50円、中学生以下無料です。

西岡敬三(生涯学習課)

高校の生物の教科書には生態学のテーマがいくつか取り上げられています。食物連鎖、食う食われるの関係、群系分布(植生分布)、垂直分布、個体群、植生遷移などです。その中でも長い年月の経過によって溶岩地帯のような裸地でもいくつかの群落を経て最終段階の極相に至るという植生遷移(一次遷移)は動かないと思われている植物、植物群落を動的にとらえたテーマとしてたいへんおもしろく、教科書の題材としても適切と考えられます。

 しかし、裸地から極相に至るという遷移の系列や遷移に要する年数にはいつくかの学説があり、各々の学説に基づく教科書ごとに記述内容に大きな違いが認められ、混乱しています。

 今回、桜島や伊豆諸島などの溶岩地帯の植生遷移について、地域間比較という視点をもとに再調査し、分析した結果、裸地から始まる植生遷移系列は地衣・コケ群落、草本群落、陽樹群落(クロマツ-ヤシャブシ群落)、タブ群落を経てシイ・カシ群落の極相であること、その遷移に要する時間としては400-600年であることが明らかとなりました。遷移系列における各段階の群落の主要散布形をみると前期段階では種子が風によって運ばれる風散布型、中期段階では種子が鳥によって運ばれる鳥散布型、極相では散布距離の短い重力散布形と変化していることもわかりました。このような遷移系列、遷移年数は国内の照葉樹林帯全域の一次遷移に該当します。これらの研究成果を論文としてまとめ、植生学会誌に投稿したところ、論文は受理され、2013年に印刷、発行されました。

 

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         昭和溶岩                     大正溶岩                          

 

 

                                 服部保(自然・環境再生研究部)

 30代の後半、(有)栗林自然科学写真研究所で昆虫生態アドバイザーをしていた。気ままに突然出掛ける栗林さんにいつも同行する(写真1)。出掛けないときは、長い、暇な待機の時間がある。まとまった仕事は無理、いつでもすぐに中止できる昆虫の観察などが向いている。とくに、自分から勝手に音声情報流し続ける鳴く虫・・・その本体を突き止める仕事がぴったりだった。待機の時間をそのまま使える。いつでもストップ、いつでも開始。これで鳴く虫の本体を次々と明らかにしていく。私の聞き分け能力は暇な待機の時間に育てられた。

 

 

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写真1:虫の目カメラで撮影した栗林さんとオオカマキリ(栗林慧撮影)。

 

私の聞き分け能力獲得法は、暇な待機の時間をふんだんに使い、忙しい人にはまったく不向きだ。まず、単独で離れて鳴いている一匹に着目する。二方向から聞いて、大体の鳴いている位置を予測し、鳴き止むまで少しずつ接近する。鳴き止んだら、再び鳴くまで立ち止まって待つ。気配を消してじっと待てば、必ず再び鳴き出す。鳴き出したら、また接近。この繰り返しだ。一時間も経つと、虫の姿が見えるところまで接近できる。その時まで、その鳴く虫の鳴き声をたっぷり聞いている。「この虫が鳴いていたのか!」・・・声と姿が一致した感動は独り占めである。長い集中した時間はその鳴き声を脳に定着させ、忘れることはない。覚える努力はいっさい不必要。声と姿の一致の感動を味わいつつ、三年も経つと、約40種の鳴く虫を聞き分ける能力が手に入っていた。

毎年その季節になると、聞き覚えのある鳴き声が脳に直接飛び込んでくる。鳴いている姿も脳裏に浮かぶ。10種近くの鳴く虫が同時に鳴いていても、一匹一匹確認していくことができる。鳴いている音の高さは多様で紛らわしいものはない。例外は大正時代からの外来種アオマツムシ(写真2)。鳴き声の高さは、クサヒバリ(写真3)とほぼ同じで、同時に鳴くと、クサヒバリの声はほとんど聞こえない。カネタタキ(写真4)も高さが近く、アオマツムシの大声集団に負けてしまう。アオマツムシがいなければ、カネタタキとクサヒバリの共存は鳴き方の違いから成立する。 

 

 

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写真2:都市部の街路樹で大声で鳴くオアマツムシ(高田要撮影)

 

 

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写真3:庭の潅木で鳴くクサヒバリ。声はアオマツムシにかき消される(河井典子撮影)

 

 

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写真4:垣根や庭の潅木で、チンチンチン・・・と鳴くカネタタキ(河井典子撮影)

 

                       大谷 剛(自然・環境マネジメント研究部)

 

 

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