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ユニバーサル・ミュージアムをめざして60

インクルーシブ。 ん? 何のこと?-1

三谷 雅純(みたに まさずみ)

 

 

seminar 0 black_line.gif博物館セミナー「むすぶ、ひらく、ユニバーサルなこと」

 

 口(くち)では「誰にでも読みやすい文章」を書いたり、「誰にでも わかりやすい話し方」をすることは、とても大切なことだと言います。しかし、実際にやってみると、大変に難しいことが よくわかります。言葉は、時や場所がら、場合に応じて柔軟に使い分ける必要があるからです。具体的には、たとえば、いつ育ったかによって書く文章は変わりますし、使う話し言葉も変わります。おじいさんや、おばあさんに、子ども言葉で話したのでは相手を傷付けます。素直なおじいさん・おばあさんなら、怒り出すかもしれません。反対に小さい子どもに対して、おとなのように話しかけるのも変です。これは考えものです。

 

 同じように、自分とは違うコミュニケーション手段を使う人に対しては、自分と相手が共にわかる方法を探さなければなりません。たとえば、耳があまり聞こえない難聴者や聴覚失認者、ろう者には、話しかけるよりも、書いて意味を伝えることが大切です。また手や腕にマヒがある人は文字を書くことが苦手ですから、書きたくても、ゆっくりとしか書けません。わたしは右半身にマヒがありますが、字や絵が必要な時は左手を使って、それこそ、ヨチヨチと書き、また描くのです。わたしとの〈文字を介した対話〉では、テンポが遅いのは我慢(がまん)して いただかねばなりません。

 

 ひとはくの博物館セミナーで、わたしは「むすぶ、ひらく、ユニバーサルなこと」を企画してきました。ちょうど12月3日から9日までは障害者基本法によって障害者週間と定められています――12月9日が「障害者の日」です――し、国際連合で1992年に宣言された「国際障害者デー」が、毎年12月3日です。それに合わせて、このセミナーを企画したのです。「障がい者と社会のあり方」について、既存の考え方に縛られずに、皆で本音をぶつけてみようという意図があります。

 

 ところが、しばらく前から何とはなく皆さんの集まりが悪くなってきました。なぜかと考えて思い付いた理由が、この企画は飽きられてしまったかもしれないと言うものでした。それとも、ひとはくは公共の博物館ですから、「県の福祉施策を宣伝する場に利用しているのではないか」と誤解されたのかもしれません――わたしは本務が兵庫県立大学の教員ですから、「兵庫県はまったく関係がない」とは言いませんが、あくまで研究者であり、大学の教員です。行政職員のつもりはありません。とりあえずは、障がい者を含むヒトの多様性や社会の多様性を全面的に肯定してみる。そこから出発すると、世界はどう見え始めるのかが、わたしの発想の基本です。セミナーの企画にも、基本的に研究者の発想があるのです。ですから、場合によっては兵庫県行政の施策方針に反する主張もあるに違いありません。

 

 2014年の博物館セミナー「むすぶ、ひらく、ユニバーサルなこと」は、受講された方が少なかったので、最初は困ってしまいました。しかし、ある時、ふと気がつきました。

 

受講者が少なければ、その方の特別な要求に合わせたセミナーを創ってみたら、どうなるのだろう。

 

 さまざまな方が参加して下さるのなら、あまり特定の方ばかりの要求に合わせたセミナーはできません。極力、皆さんが満足できるように、セミナーのやり方を工夫しなければなりません。しかし、2014年度は人数が少ないのだから、セミナーのやり方を、特定の人に合わせることができます。よい考えに思えました。

 

 わたしは、このアイデアにワクワクしました。それって、つまり、インクルーシブ・デザインのやり方ではないのか? そう、まさにインクルーシブ・デザインです。受講者は、ただ座っている「お客さま」ではなく、その人なりの要求を出し、それに講師(=三谷)が応えて、セミナーを創り出す。その中から新しいものが生まれる。そういうことかもしれません。一回ごとに、個別のセミナーを創っていくのです。

 

 そのようなセミナーを創り出すためには、あらかじめ受講者の困難さを、よく知っておく必要があります。幸い2014年度の受講者は、以前から深い付き合いのある方ばかりでした。

 

 具体的なセミナーの内容は、後で述べます。今は、まだどうしても超えられないインクルーシブなセミナーの課題を書いておきます。

 
☆   ☆

 ひとつは、いくら工夫しても残る「特定の人」のことです。今回は、この困難がある方はおられませんでしたが、たとえば「赤ん坊」はセミナーには参加できません。なぜなら、赤ん坊は言葉がわからないからです。少なくても2歳ぐらいにならないと、会話ができません。本当の意味で社会性が育つのは、小学校の高学年ぐらいだと言います。

 

 「赤ん坊がセミナーに参加できないなどと、当たり前のことだ」と切って捨てないで下さい。ここで言う「赤ん坊」には、1歳に満たない本当の赤ん坊もいますが、それよりも、もっと多くの人が含まれるからです。幼児や児童は「赤ん坊」とは違いますが、精神の発達では赤ん坊に毛が生えたようなものです。知的障がい者の心は――肉体の年齢はどうであれ――発展途上の段階です。認知症者でも同じです。一旦は獲得していた社会性ですが、だんだん失われることが多いのです。これらの人全員が、今は「赤ん坊」と呼んでいる人たちです。この「赤ん坊」に接する術(すべ)を、ぜひとも見つけなくてはいません。

 

 もうひとつは、どのデザインにも付き物の短所のことです。ユニバーサル・デザインにせよ、インクルーシブ・デザインにせよ、長所があれば、必ず短所もあります。このブログは「ユニバーサル・ミュージアムをめざして」ですので、ユニバーサル・デザインに寄りかかっているみたいですが、実際にはインクルーシブなものの見方をしていることも多いのです。

 

 わたしが言いたいことは、他の人の優れたアイデアをそのまま借りてきて実行するということではなく、アイデアの優れたところを生かしつつ、自分たちの実際に生活するコミュニティに合った具体的なものを創り出す。それが超えていかなければならない課題だと思います。ユニバーサル化、インクルーシブ化といった名前にはこだわらずに、物事の本質を探っていきたいと思うのです。

 
☆   ☆

 次は「インクルーシブ。 ん? 何のこと?-2」として、具体的な博物館セミナー「むすぶ、ひらく、ユニバーサルなこと」のようすをお伝えします。お楽しみに。(一気に書いてしまおうかと思いましたが、書き切れませんでした。)

 

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館

小さな学校キャラバン】本年度最終回!!
行ってきました、小さな学校キャラバン ~ 丹波市立神楽小学校 2014/11/27 ~


10月23日からスタートした小さな学校キャラバン。7校目の訪問となる丹波市立神楽小学校に出発しました!
神楽小学校にはビオトープがあります。15年前に総合的学習の一環で、人と自然の博物館の中瀬館長をはじめ博物館の研究員たちのアドバイスでビオトープが作られた経緯があり、博物館にとってもゆかりのある学校です。今回の学校キャラバンにはNHK神戸放送局の取材班が同行されています。
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午前中は、1・2年生19名を対象に研究員の先生が神楽にある樹木について葉の写真を見せながら説明されました。 児童たちも質問に活発に答えていました。
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次に校内にあるビオトープを散策し、兵庫県のレッドデータブックのBランクに指定されているバイカモ(梅花藻)について説明されました。 15年前には、現地の川でもいたるところで見ることができましたが、今ではほとんど見ることができなくなっているそうです。

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先に説明された樹木について、現地で解説されています。児童たちも、樹木の名前をよく知っていて驚きました。
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移動博物館車ゆめはくの中を見学しました。みんなきれいな色をしたチョウや兵庫の昆虫を納めた標本箱に大興奮です。
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再び教室に戻って、次は化石のお話です。まず丹波竜の発見と名前の由来について聞きました。実際の化石を手に持って、その重さに驚いていました。
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次に佐治川で実際見つけた化石についてお話しを聞きました。 この化石は古生代のペルム紀(今から2億8千年前)に、放散虫が死んで海の底に沈み、地形の変化とともに長い年月を経て今ここにあることを、児童たちにわかりやすいように説明されました。また、佐治川は火山の噴火によってできた石が多いそうです。DSC_8279.JPG


次にアンモナイトについてクイズを交えて学習したあと、実際にアンモナイトのレプリカづくりに挑戦しました! 各自好きな色を2つ選んで自分だけのオリジナルなアンモナイトを作りました。
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午後からは、中瀬館長も到着し、3・4・5年生の26人を対象にビオトープについて説明されました。 具体的にビオトープ発祥の地といわれるドイツ、アメリカの事例を用いて神楽小のビオトープについて説明されました。
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中瀬館長も久しぶりにビオトープを訪れられました。15年前に作られたビオトープですが、児童のみなさんのご協力もあり管理ができていると感想を述べられていました。
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最後に、ゆめはくの中の標本箱を見学しました。NHKのインタビュー取材もありました。
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この日はNHKの取材班もあり、児童たちにとっても思い出に残る充実した一日になったと思います。
本年度からスタートした「小さな学校キャラバン2014」は丹波市立神楽小学校で最終回となります。
また、来年度新たに訪問させてもらうかもしれません。お楽しみに!!

小さな学校キャラバン隊

展示物に近づくと、スマートフォンで展示物の説明がみられるアプリ
『館ナビ』ご存知でしょうか?
ひとはくでは、実証実験として試行しています。

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体験いただくには、お手持ちのiPhoneにアプリをインストールする必要があります。

iBeacon (6).jpg s-iBeaco1).jpg
博物館の3階入口、『館ナビ』案内板にQRコードがありますので、そちらでもインストール可能ですよ。


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▲『館ナビ』アプリ

『館ナビ』ガイドを開き、展示物に近づくと...
s-nagasukujira.jpg →→→s-iBeacon (1).jpg
情報(写真・文章など)が自動 表示されます!


3階・2階の展示物の情報が自動的に切り替わってみることができ 面白いですよ(^^)

ぜひ、おためしください。

◆『館ナビ』アプリ(無料)


・実施予定期間:2014年10月24日~2015年3月31日(予告なく中断・休止する場合があります。)
・対応する機種:iPhone(iPhone4s以降)/iPad

App Storeで『館ナビ』と検索すると、簡単にインストールできます。

                                                                                                                                                                          (フロアスタッフ まつだ)

寒くなり、深田公園も赤・黄・緑と紅葉が深まってきました。
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今年もあとわずか・・・

4階ひとはくサロンには恒例のクリスマスイルミネーションも夕方になると
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4時45分でひとはくサロンが終了なので・・・見られるかな(?_?)

フロアスタッフによる手作りのデジタル紙芝居も今年は

2作新しいものが完成しました。(*^_^*)

「ぽこぽこぽこ~森をつなぐ~」
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(日替わりで上映中)

森では、どんなことがおきているでしょうか?

生きものには、どんなつながりがあるかな?


「オランとウーたんのジャングル探検記」
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(もうすぐ完成!間もなく上映されます)

二匹のこども、オランとウーたんが世界一のおいしいくだものを探しに

ジャングル探検にでかけます。見つかるのでしょうか?

もうご覧になられましたか?

ぜひ、博物館に見に来てくださいね!(^^)!

デジタル紙芝居の詳細は↓

 http://www.hitohaku.jp/exhibition/staff.html#kamisibai

みなさまのご来館❤心よりお待ちしています。

     

         フロアスタッフ  にしぐちひろこ



ユニバーサル・ミュージアムをめざして59

何日もかかって アフリカの森を歩いた事がある。

三谷 雅純(みたに まさずみ)

OdzalaBai-07-03.JPG 半年がかりで、アフリカ中央部の森を、歩いて旅した事があります。

 土地の言葉で、わたしが〈ンドキの森〉と呼んだ森が出発点でした。広い広い無人の森でしたから、最初、その森に名前はありませんでした。しかし、その中をンドキ(=悪霊)川が流れていたので、そこから「ンドキ」という名前をもらったのです。その〈ンドキの森〉に初めて足を踏み入れてから、わたしはコンゴ人民共和国、カメルーンと横断し、ギニア湾にある赤道ギニアの洋上アルプス、ビオコ島を駆け上りました。消耗の激しい半年でした。わたしは、何とか自立して、誰も知らない森を自分の力だけで見付け、新しい調査地を開拓したかったのです。わたしは結局、つい最近、世界自然遺産に登録された〈ンドキの森〉、現在のヌアバレ=ンドキ国立公園 (1) を調査地にしたのですが、今、改めて思い出すのは、1988年から1989年にかけてのカメルーン南部の森での出来事の方です。

☆   ☆

 それにしても、どうして人は不安に襲われてまで、未開の地に足を踏み込むのでしょうか? わたしも、〈ンドキの森〉という、誰も知らない未開の地に踏み込んだのですから、自分のことを振り返ってみればよいようなものです。カメルーンの森で出会った人たちも、ご本人が、あるいは高だか数世代前のひとりの男性が――不思議ですが、ことごとく男性でした――、カヌーで川辺を行き来して、家を建てる固い地面を捜したのでした。固い地面が見つかったら、近くに飲める水が流れているかどうかを確かめます。水が確認できたら辺(あた)りに生えている木の種類を見て、農地になるかどうかを見きわめます。農地になりそうだと判断し、そこに住む決心がついたら、焼き畑にするための最初のひと斧(おの)を振り下ろしておくのです。

 この旅の最中に、なぜその村を開いたのかと問う機会が、何度かありました。

 理由はいろいろでした。村が滅びてしまったからという話をよく聞かされました。

 例えば感染症です。ある村は、かつて、もっと北にあったのですが、皆既日食の年、みんなで太陽を見ていると目が痛みだした。血の涙が出て、人びとは死んでしまった。その場所には、もう住めないからと、残ったもの何人かで今の場所に移ってきた。それがこの村の始まりだと教えてくれました。

 別の村では、昔は千人を超えるほどの大きな村だったそうです。ある時、病気が流行り、人びとはバタバタと死んでいった。そのために村は滅びた。そして河川の何十キロも上流に、同じ名前の村を開いた。今は少数のバンツー農耕民と狩猟採集民のピグミーが、いっしょに暮らしている。新しく村を開いたのが、あの村長だと、椅子でくつろいでいる老人を指さして聞かせてくれたこともありました。

 まるで、むかし話そのままです。わたしたちの周りにも、よくあった事に違いありません。しかし、何世代にも渡って、安定して暮らす事が当たり前のようになると、「人が死に絶える」とか「村が滅びる」というのは、日常感覚では捉えきれなくなってしまいました。わたしたちの普通の言葉で言い直すと、それは「コミュニティが滅びる」とか、「ひとつの地域が滅びてしまう」ことに当たるのでしょう。アフリカで村が滅びるというのは、それほど大変な事なのです。しかし、よくある、当たり前の事でもあります。

☆   ☆

 バンツー農耕民は、もともとは、今で言うカメルーンとナイジェリアの国境近くに住んでいたサバンナの農耕民だったそうです。その人たちが、ある時、サバンナから森の中へと逃げ込んだという話があります。バンツーは北から南下してきた異民族に追われたディアスボラなのだそうです。その異民族もディアスボラなのでしょう。今から、三千年とか、四千年とかいう大昔の話です。我われにとっては縄文時代に当たります。

 サバンナのような乾燥して見晴らしのよい土地から、森という、湿り気の多い、見通しの悪い土地に入るのですから、おそるおそる、恐ごわと、歩を進めたような気がします。そんな想像をしてしまいます。一気に、雪崩を打って侵入したというのではないのです。

 カメルーンには、〈マキザール〉という「森の精」の言い伝えがありました。小さな、人のように見えるのですが、明らかにピグミーとは違う。夜になると人を襲い、殺してしまう。〈マキザール〉から逃れるには、――記憶は不確かですが、確か――〈白魔術〉があったと思います。〈白魔術〉が使えるのは、村の長老だけだと聞いたように思います。

 多くの動物とは違って、人はなぜ広大な地域に住むようになったのかと考えていて、カメルーンの森の奥に点在する村の消長に思いが至りました。〈マキザール〉の言い伝えは、〈むら〉という空間、つまり自分たちバンツーの住むその場所だけが「人の住む世界」であることを意味します。その外には〈異族〉、つまり人間以外の生き物がいるという意味です。そのためでしょう。〈マキザール〉は恐ろしい「森の精」ですし、ピグミーもバンツー(=バンツーの言葉では「人」という意味)ではないのです。

 アフリカのサバンナで長く文化人類学を研究しておられる川田順造さんは、『サバンナの博物誌』(ちくま文庫) (2) という本の中で、西アフリカのサバンナに住むモシ族の人たちは、住んでいる家や住む場所、さらに「気心の知れた人びと」、つまり「いっしょに暮らす人たち」を指すのに〈イリ〉という言葉を使うのだと書いておられます。この〈イリ〉に対する言葉が〈ウェオゴ〉です。〈ウェオゴ〉は野獣や荒れ野の精〈キンキルシ〉のいる場所なのだそうです。川田さんは、〈イリ〉と〈ウェオゴ〉に当たる概念をわたしたちの周りに探すとすれば、ひょっとして〈さと〉と〈やま〉に当たるのかもしれないと書いておられます。人が居住し、畑仕事をする〈さと〉に対して、〈やま〉はクマや鬼の住む異界です。〈キンキルシ〉はちょうど、カメルーンの森林地帯では〈マキザール〉に当たるのでしょう。そうだとすれば、〈マキザール〉のいる森は、サバンナでは、人ではない、得体の知れない何かがいる「荒れ野」に当たります。

 「新しい村を築く場所を探す」ということは、まさに、「〈マキザール〉や〈キンキルシ〉のいる場所」の中で、恐ごわ歩を進めることなのです。「〈マキザール〉や〈キンキルシ〉のいる場所」に踏み込まなければ、「新しい村を築く場所」は探せない。しかし、そうだとしても恐がっていては何も始まらない。「人が死に絶える」とか「村が滅びる」というのは、アフリカに限らず、人にとっては、それほど頻繁に起こる事なのですから。

☆   ☆

 ヒトは地球上のあらゆるところに分布しています。その移住の様をあれこれ考えていたので、今回は原稿が、「ユニバーサル・ミュージアムをめざして」で立てていた主題からは、ずれてしまいました。これがどう結び付くのかは、そのうち、説明します。

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(1) 世界自然遺産はコンゴ共和国のヌアバレ=ンドキ国立公園とともに,カメルーンのロベケ国立公園と中央アフリカ共和国のザンガ=ンドキ国立公園が含まれる「サンガ川流域の3か国保護地域」として登録されました.

(2) 『サバンナの博物誌』(ちくま文庫)

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三谷 雅純(みたに まさずみ)
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館

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