5月11日に,岡山県の環境文化部自然環境課主催の自治体向け「ヒアリ対策講習会」が開催されました.岡山県のヒアリ有識者会議の委員を務めている関係もあり,この講習会で,講師として,ヒアリを始めとする外来アリ対策の講義と,持参した標本を使って,ヒアリやアカカミアリの一次スクリーニング技術の実習を行ってきました.同課で,ヒアリや外来生物問題に積極的に取り組まれている継山さんのご尽力もあり,岡山県下の市町村から,40名近い方々の参加がありました.また,地元のテレビ局や新聞社も取材にこられ,講習会の様子を熱心に撮影したり,参加者にインタビューをされていました.

 講義では,まず,ヒアリを正しく知って,正しく怖がるために,「なぜヒアリが怖いのか」から講義をしました.ヒアリが怖いのは殺人アリだからではなく,ヒアリの侵入定着を許すと,地域の生態系や生物多様性だけでなく,農業や商業活動という人の営みにも大きな被害をもたらし,さらには自然を愛好する文化までを破壊するモンスターだから恐ろしいのです.そして,アリと言う生き物の凄まじい繁殖力と,それ故にヒアリの駆除は難しいこと,それでは,その強敵に,どのように,立ち向かえば良いかを,できるだけ具体例をあげて,お話しをさせていただきました.

 実習では,持参した在来のアリと,ヒアリ,アカカミアリの標本を各テーブルにお渡し,岡山県に用意いただいた実体顕微鏡を使って,参加者の方々にヒアリとアカカミアリのスクリーニングを体験していただきました.顕微鏡の標本画像をスクリーンに投影する装置で識別のポイントを解説しながら,参加者のところを回って,一緒に顕微鏡を覗き,さらには,その合間にテレビ局のインタビューも受けるという,かなりハードな実習講義でした.しかし,人博で作成したヒアリとアカカミアリの一次スクリーニングの教科書を開いて,実体顕微鏡を使うのが初めてという方や,老眼で顕微鏡を覗くのに苦労されている方が,一生懸命にアリの標本を見ておられるので,へこたれるわけには行かず,頑張りました.実習では,参加者の皆さんが,実際にヒアリの標本を見て,思っていたよりもヒアリが小さいと驚かれていたのが印象的でした.すぐにヒアリやアカカミアリを同定できるようになるのは無理だとしても,実物を知ったことで,他のアリをヒアリやアカカミアリと簡単に間違えることはなくなるに違いありません.博物館でヒアリの展示を作り,実物の標本を配架している意義も,ここにあります.実物を多く保管している博物館は,外来生物の問題でも,一番役に立つところなのです.

 岡山県では,さらに,倉敷市で港湾関係者を集めて,ヒアリ対策講習会を開催される予定で,そこでも講師を務めることになっています.外来生物問題と地域の自然や生活を守るために,人博と兵庫県も頑張ってますが,岡山県,さらに頑張っておられます.(系統 昆虫 橋本佳明).

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