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2012年12月アーカイブ

Kidsひとはく大使は、20周年を迎えた ひとはくのPRと、Kids向けプログラムのモニターを担う子どもたちです。

2012年12月26日、雲が少なく青空が奇麗な日でした。

 

1s-PC260002.jpg日本科学未来館

 

Kidsひとはく大使4名が、東京の青海にある日本科学未来館を訪問しました。
控室での大使の表情は・・・

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さて、いよいよ本番(大使としてのお仕事)です。
普段は入ることができない特別な部屋で、毛利館長とお会いすることになりました。

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用意していたひとはくの資料を毛利館長に手渡して・・・
中身のことを詳しく聞かれると・・・アレレ

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毛利館長は、それぞれの大使ひとり一人に丁寧に接していただきました。
好きなことや、興味があるもの、ひとはくで楽しいこと等々、毛利館長から、たくさんの質問があり、中には、ひとはくのスタッフやお母さんに助けを求めて??視線を送る大使もいたのですが・・・、
それを見ていた毛利館長は、やさしく「自分で思ったことを言ったらいいよ。」と言ってくださっていました。

 

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記念撮影にも応じていただきました。

予定の時間をかなり過ぎていてしまい、スタッフの方は、実はドキドキだったのです。
毛利館長は昼食の時間を削って対応してくださったのだと思います。

 


その後、科学コミュニケーターの久保さんに、館内の展示をご案内いただきました。

 


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大使たちは、何でも答えてくれる久保さんと話をしていて楽しそうでした。

 

 

毛利館長をはじめ、日本科学未来館の皆さま、ご協力ありがとうございました。

                             <キッズひとはく推進室  小舘>

 

 

ユニバーサル・ミュージアムをめざして20

 

霊長類学者がユニバーサルな事を考える理由−3

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

 

 

 

OldFemaleGorilla02.JPGゴリラのおばあさん。本当はまだ「おばあさん」というほどの歳ではありませんが、コドモが集団から独立したようなので、「おばあさん」と呼んでいました。コンゴ共和国のンドキの森で撮影

 

 

 最後に、「高齢者が活きるユニバーサルな社会」の可能性について考えましょう。霊長類学の仮説に「おばあさん仮説」があります。「おばあさん(=お祖母さん)仮説」とは、「ヒトの女性が子どもを産まなくなった後も長く生きて、家族の一員としてとどまり続けるのはなぜだろう」という疑問に対する仮説です。「仮説」ですから仮の答えです。本当かどうかはわかりません。

 

 年をまたいで何度もコドモを産む動物にも、「おばあさん」に当たるメスはいます。しかし、ヒトの「おばあさん」と同じではありません。「おばあさん」になってからも長く生きる動物はヒトだけです。地域によって違いますが、日本では、平均すれば女性の寿命は80歳を優に超えます。子どもを産まなくなるのは50代の事が多いので、ヒトは30年以上も「おばあさん」を続けるのです。なぜヒトにだけ「おばあさん」がいるのでしょう?

 

 ヒトはもともと、2世代、3世代がいっしょに暮らすのが普通でした。夫婦と子どもだけしかいない核家族というのは、ごく最近になって生まれた習慣です。そんな家族では、「おばあさん」の助けがなければ娘の子育てがうまくいかないのです。たまたま娘だけでもうまく育つこともあるのですが、「『おばあさん』のいない娘の子育ては、うまくいかないことが多かった」といった意味です。別の言い方をすれば、「おばあさん」がいなければ、「同じ数を産んだとしても、おばあさんと協力した場合に比べて娘だけで育てた子どもの数は、誰が見ても少ない」という事になります。

 

 つまり、ヒトが次世代を残すためには、「おばあさん」が不可欠だということになります。ヒトの進化史から考えても「おばあさん」は大切な存在だったのです。おろそかにしてよいはずはありません。

 

 では、「おじいさん(=お祖父さん)仮説」は存在しないのでしょうか?

 

 これは存在しません。「おばあさん仮説」はあるのに、「おじいさん仮説」がないなんて、不思議な気がします。なぜでしょうか?

 

 それは「父親」という存在が文化的に作り出された約束であり、制度だからです。ほ乳類でいえば、「おばあさん仮説」の基になっている「母親」はあるコドモ(や子ども)を産み、育てたのですから、誰も「母親」であることは疑いようがありません。それに比べて、ヒトを含むほ乳類は父親がはっきりしません。前にも書きましたが、「父親」候補はたくさんいるのです。「誰が父親だ」とは決められません。ゴリラの集団は一頭のオスしかいない事が多いので、つい、そのオスを「お父さん」だと思ってしまいます。でも本当は、そのオスとコドモの遺伝子を調べてみないとわからないのです。「一頭のオス」だと思っていても、森には多くの若いオスが隠れているものです。

 

 そもそもニホンジカのオスはメスのものと訪れて、コドモの顔を見ないままで去って行く存在でした。「父親」や「おじいさん」とは、家族があって、はじめて生まれるイメージです。だから、生物学的な「おじいさん仮説」は存在しないのです。けれども、現に人間には「お父さん」がいます。これが「(生物学的にではなく)文化的に決められた制度」だという意味です。

 

 ゴリラの研究で有名な山極寿一さんは『家族の起源 父性の誕生』という本の中で「父親」について考えています。山極さんによれば、「父親に由来する親族の構造は、構成員の不断の努力によって守らねばならなかった」ものであり、「社会的規範は文化的存在である男の弱い立場を守るために作られた」ものだという事です (1)

 

 この本は1994年に出版されたものなので、お考えが少し変わっているかもしれません。その上、ことばが難しくて、とっつきにくい気がします。この文章をわたしなりに解釈(かいしゃく)してみます。

 

 「お父さん」や「(お父さんがいる事によって作られた)家族」は、人間なら誰でも、なくてはならないものだと知っています。しかし、生物学的ではない「お父さん」という存在は、放っておけば消えてしまうでしょう。「お父さん」が消えるとしたら大変です。「(お父さんがいる事によって作られた)家族」までが消えてしまいます。そこでお母さんや子どもたちが、「この人がお父さんだ」と父親の存在を認めたのです。これは約束です。それはやがて「父親」という確かな制度になりました。これが人間――文化的背景があるので、生物学的なヒトではありません――にとっての父親の起源です。

 

 チンパンジーのメスは、栄養がよければ高齢になってもコドモを産み続けます (2)。しかし、ヒトは違います。栄養がよくても、一定の年齢になれば子どもを産む事はやめて、孫をかわいがるのです。そして何万年か、何十万年か前には、より良く生活するための方策であった「お父さん」や「家族」という社会の仕組みが、「結婚」や「家庭」といった制度にまでなりました。そして「確かな制度」は文化的な事実となりました。今日的(こんにち・てき)に言うと、赤ん坊に始まり、おばあさんにいたる女性のライフ・ステージを男性にも当てはめ、男女を問わず、すべてのライフ・ステージに生きる人びとの価値を見つけたということです。それが霊長類学を通して示されたのだと思います。

 

☆   ☆

 

 霊長類学でヒトの実像を考えるなら、「家族」や「父親」といった文化的なことも考えなければなりません。霊長類学は自然科学ですが、おのずと文化的多様性というものも考えなければ、ヒトの社会とか行動とかいった現象がわからないのです。この事を通して、霊長類学者は多様なヒトの価値(という、今はまだ実現していない理想)を知ってしまったのだと言えるのです。すべてのヒト(そして人)が活きる社会は、理想的なユニバーサル社会です。そのユニバーサル社会の理想は、女性や男性の事ばかりでなく、その他のさまざまなヒト(そして人)のあり方、生き方に広げていくべきだと思います。

 

 山極寿一さんは、別の『オトコの進化論 ―男らしさの起源を求めて』という本の中で次のように書いています (3)。少し長くなりますが、この文章と同じテーマなので引用してみます。

 

「現代の要請は、多様な人びとと多様な価値を認められる社会をつくるということである。これはなかなかむずかしい。今まで人間は半ば閉じこめられた共同体の中で、顔見知りの仲間と固有の価値観を共有して生きてきたからである。異質な人間を受け入れる事にも、別の価値を認める事にも慣れていない。」

 

 山極さんはこの文章に続けて

 

「そのような閉鎖的な社会は、人間の歴史からすればつい最近つくられたのである。過去の人類は熱帯林やサバンナで、多様な動物たちと共存して暮らしていた。何万年、何十万年という長い間、異種の人間が同じ場所で共存していたことも明らかになっている。人類に近縁なゴリラとチンパンジーは、アフリカの熱帯林で今でも同じ場所に共存して暮らしている。現代人はすべてホモ・サピエンスという同一種に分類される。身体能力も同じでコミュニケーションも可能な人間が共存できないはずはないのである。」

 

と述べています。ここは、わたしと山極さんの意見が分かれる所です。どこが分かれるのかというと、わざわざ「他種との共存」を持ち出さなくても、ヒト(そして人)にはさまざまな遺伝的多様性があり、さまざまな文化的多様性があるのです。そのよい例は、社会が「障がい者」と呼ぶ人びとに見つかります。「障がい者」は多数者(=定型発達者、健常者、健聴者、晴眼者などなど)とは「異なる文化」に生きているのです。その人びとの価値を偏見なく認めることが、ユニバーサルな社会を創るために、まず必要な事だと思います。

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(1) 山極寿一(1994『家族の起源 父性の誕生』(東京大学出版会)の175ページにあります。山極さんは2012年に、同じく東京大学出版会から『家族進化論』(http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-063332-1.html)という本を出しておられます。こちらは、今、読んでいるところです。

 

  FP_thr Origin of Family_Yamagiwa_.jpg 61bwXNg3qJL._SS500_.jpg 

(2) 2011年1月2日付けの YOMIURI online によれば、ギニアの村近くに住む54歳のお祖母さんチンパンジーは、3歳の孫を背負う姿が見られたそうです。チンパンジーの54歳は、ヒトでは70歳に当たるそうです。京都大学霊長類研究所の松沢哲郎さんの提供したニュースでした。

 

(3) 山極寿一(2003)『オトコの進化論 ―男らしさの起源を求めて』(ちくま新書 424)(http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480061249/)の228ページから230ページにあります。

 

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

兵庫県立大学 自然・環境科学研究所

/人と自然の博物館

 来年3月退官される中瀬勲副館長の最終一般セミナーが、12月15日(土) ひとはく中セミナーで行われました。 

 会場となった中セミナー室は立ち見が出るほどの受講生で埋まり、いつもの中瀬節もひときわ冴え渡っていました。約40年に及ぶ副館長の足跡をわずか90分で語るには短すぎました。もっともっと聴きたい、もっともっと教えていただきたい、と感じました。

        

  

 中瀬副館長、長きにわたり本当にお世話になりました。ありがとうございました。

 

 

    あ、3月末日まではまだまだお世話になります(o^^o)

  神戸新聞平成24(2012)年12月20日(木)夕刊を見て,びっくり!!

 

 県内初の「白トリュフ」発見の記事。しかも、新種の可能性があるらしい。

 実は、その発見者の姫路の中学生【岡田英士くん】ってのは、2011年度に一緒にボルネオジャングル体験スクールに行ったんですよ。その時も動物や植物に大変興味があり、日本で見ることのできない生き物をみて、大変感激していました。

 マレーの子ども達との交流では、折り紙でツルやカブトを折って教えてあげたりするなど、私もとても印象に残っている少年でした。新聞で笑顔を見て、昨年のことを思い出しました。

 ボルネオジャングル体験スクールでかかわった子たちが、各方面で活躍してくれるのは、わがことのようにとてもうれしく思います。今後の活躍を期待します

 

生涯学習課:八尾岡田くん!! すごいなぁ(o^^o) ますますBigになってね

 

 

月日の経つのは早いもので、もう12月も終わろうとしています。

この一年はみなさまにとってどんな年だったでしょうか?

 

ある一説によりますと、生涯のある時期における時間の心理的長さは、年齢の逆数に比例すると言われています。
例えば、1歳の子どもの1日=30歳の大人の30日。
つまり、1歳の子どもは1日にして大人の約1ヶ月分を生きていることになります。

ひとはくに遊びに来てくれる子ども達の、好奇心でいっぱいの目には、新たな発見や驚きがぎゅっと詰っていて、子ども達から教えられることはたくさんあります。

つい大人の時間軸で過ごしてしまいがちな今日この頃ですが、私たちフロアスタッフもいつも新鮮な気持ちと好奇心を忘れずに、日々成長していきたいと思います。

今年一年、多くの方々にフロアスタッフのイベントにご参加いただきましたこと、スタッフ一同、心より感謝申し上げます。

 

お正月も、ひとはくではイベントが盛りだくさんです♪

 

 

♪フロアスタッフとあそぼう(土日祝15:00〜)

 

1月3日(木)、4日(金)『びっくりスネーク』  参加費:無料

 

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15日(土)、6日(日)『たこづくり』 参加費:無料

 

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♪うきうきワークショップ10:3016:00※時間内はいつでもご参加いただけます!)

 

 13日(木)、4日(金)『とっても簡単!化石のレプリカづくり』 1回:100円

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来年は13日(木)から開館しております。

お正月は、ご家族揃って是非ひとはくへお越し下さい(●^_^●)

 

                               フロアスタッフ  谷口

natyurarukon.jpg  ずっと以前の話ですが、博物館でもコンサートがあったと聞いております。そして何時しかコンサートは開かれなくなりました。
 ひとはくは、今年開館20周年を迎えました。この大人になったひとはくを記念して(ややこじつけですが)ちょっと大人の復活のコンサートを開催します。
 この記念すべきコンサートの出演者は、葉月さん、Singing Hikersさんの2組です。
2組の名前が表すように、自然をテーマとした楽曲が殆どで、アコースティックギターやパーカッションが奏でる音楽とそのクリアな歌声はまさに”人と自然”の博物館にぴったりです。
 場所はひとはくサロン特設ステージですから、是非コーヒー片手に休日の午後の一時をお楽しみください。
 もちろん12月の23日、”クリスマスイブの昼間?”です。クリスマスソングの演奏もあり、小さな子どもさんも一緒に楽しめます。
 入館いただければ、誰でもこの音楽を聴くことが出来ます。
是非ひとはくにお越しください。

西岡敬三(生涯学習課)


Singing Hikersさんの情報 ↓
http://amarilla.cocolog-nifty.com/


コンサート情報↓
http://hitohaku.jp/top/img/natural_chrismas_2012.12.23.pdf

行ってきました

2012年12月18日

 今年も残りわずかになってきました。12月17日(月) 猪名川町立つつじが丘小学校6年生のみなさんといっしょに学習しました。6年理科で「大地のつくりと変化」を学習しますが、通常の授業に加えて、さらにイメージしやすく、専門的な、ちょっと記憶に残る授業を出前してきました。

   

 今回のメインテーマは、「化石のレプリカづくりと丹波の恐竜化石」。

 前半は40名近い6年生の3クラスを順番に理科室に入れ替わりで、石こうを使ったホンモノの化石のレプリカづくりをしました。人数が多くて大変でしたが、理科担当の先生と担任の先生の協力のおかげで、無事に石こうを流し込むことができました。

       

 そして、石こうが乾燥する時間を利用して、後半は全員体育館に移動して、スライドを見ながら地層のでき方や化石の話を熱心に聞きました。理科室には化石や鉱物標本なども置いてあると思いますが、勝手に触ると注意されるけど、今回は一人一つずつの化石を手にとって作業しました。1億年も2億年も前に生きていた生物(化石)に直に触れるなんて経験は、滅多にできないのではないでしょうか。

     

 最後は時間が足りなくて、いっしょに石こうを取り出せませんでしたが、きっと世界に一つのホンモノのレプリカが出来上がったと思います。

 

生涯学習課

 

 

    ひとはくの12月は クリスマスのイベントがもりだくさんです!

  8(土)・9(日)には長靴型のかわいいクリスマスカードを作りました〜                   

                    ☆長靴から小ささなツリーが飛び出しました〜(^−^)

女の子1                   ☆大きな長靴のツリーの前でにっこり ハイポーズ(^O^)/

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                ☆みんな上手ですね〜               
男の子1otokonoko3

 

      5人                   ☆ 2年生5人組も参加してくれました〜

 

   クリスマスツリーに使う木の葉(モミの木・ツガなど)も 見てもらいました〜

モミの木  もうすぐクリスマス〜

  サンタさんのプレゼントは なにかな?
   
  ドキドキワクワク 〜楽しみですね〜(*^_^*)

  

  次回のフロアスタッフとあそぼうは 

   22(土)・23(日)・24(月) 3時〜 3階アースシアターにて

   「ひとはく DE クリスマス}を行います。

     ☆クイズ大会やビンゴもあり かわいいリースもつくりますよ。

 

  またうきうきワークショップは 10時30分〜4時  4階ひとはくサロンにて 

   23日(日)  「プラバンづくり」・・・材料費50円

   24(月・祝) 「ひとはくモビール〜クリスマスバージョン〜」・・・材料費100円

   を行ないます。
    
     ☆みんなで楽しんじゃお!


   どうぞ ひとはくへ お越しくださいね〜  メリークリスマス〜♪   


                            フロアスタッフ 松田・小野

先日のblogに掲載しました 今年のふたご座流星群の写真を動画にしてみました。

 

    Gemini20121214_2.wmv  565KBほどですが、あっという間です。

 

 どんな感じでしょう?

 

植物標本庫の使い方

2012年12月16日

植物標本庫に保管されている植物標本は、いろいろな形で活用されています。今回はその一つとして図鑑作りの例を紹介します。

先日、東京大学総合研究博物館の池田博さんと岡山理科大の山本伸子さんが来館され、小中学生向け植物図鑑をつくるために植物標本庫で作業されました。

池田さんと山本さんは元ひとはく研究員でもあり、わたしたちも図鑑作りを応援しました。その時のようすが、山本さんから届きましたので紹介します。

 

 

こんにちは、山本です。

東京大学総合研究博物館の池田先生とひとはくの標本を見に来ました。

現在、小中学生向けの植物図鑑を出すための植物画の修正をしています。

植物図鑑を絵で作るのはとても大変です。花や葉の形はもちろん、葉のつき方や枝の伸ばし方など間違いがあってはいけません。日頃、植物に慣れ親しんでいるつもりでも、本当にそうかどうか自信が持てない部分もあります。

  

hyohon1.jpg 収蔵庫内で植物標本を調べながら植物画をチェックする

 

 

 

 

 

そこで、標本と見比べて植物学的に間違いがないか確認します。そして間違っている箇所に赤を入れて、画家さんに返却し、修正してもらうのです。

ひとはくでは、北海道から沖縄まで日本全国の植物が広く収集されているため、植物図鑑に載るほとんどの植物標本があります。また標本を広げる場所も確保していただき、このような作業をするのにとても助かりました。

 

hyohon2.jpg hyohon5.jpg 植物標本を調べる黒崎先生(左)と高橋さん(右)

 

 

 

ひとはく館員の高橋さん、高野さん、布施さん、それに県立大学の黒崎さんにも時間の合間を縫って手伝っていただき、なんとか全種の確認を終わらせることができました。

ありがとうございました。(山本伸子)

 

 

どんな図鑑が出来上がるか楽しみですね。

 

                   自然・環境評価研究部 高橋 晃

 外国のお客さまの特注セミナーの様子は前のblogで紹介しました。

 次は、これからのトレンドになりつつある「大阪」からの団体さまの特注セミナーの様子を....豊能町立東ときわ台小学校6年生の子たちの様子です。

 午前中は、丹波市の恐竜化石発掘現場や元気村かみくげで現地の学習。午後は、ひとはくでの特注セミナーでした。担任の先生が教職員のためのセミナーで古谷主任研究員の講義を受けられたことなどがきっかけで、6年生の岩石や化石、地層の学習に採り入れたいということで実現しました。

 午前中は講師も丹波市の現地へ出向いての館外特注セミナーとして実施。午後は、館で講義形式。こうしたオリジナルの特注セミナーの実施までに、何度も詳細な打合せを講師の古谷とやりとりし、時には先生が館にお越しになり、より綿密に打合せを繰り返し、より効果的な学習となるよう工夫されました。

      

      

  学校・先生方の学習のねらいにできるだけそえるよう、研究員との事前の打ち合わせがポイントとなる特注セミナーのご紹介でした。

 

「こんなことをやってみたいんだけど・・・」「◯◯はできないでしょうか」「◯◯研究員に学校へ来て、□□の話を聞きたいのですが?」など、ご要望がございましたら、是非、ひとはくをご活用ください。

 

生涯学習課:八尾

 

 

 先のblog記事では、三橋主任研究員による学校団体さまの特注セミナーの様子をご紹介しましたが、今回は、なんと、外国からのお客さまへの特注セミナーをご紹介します。      

 ご予約のご相談は、2週間ほど前、11月の末頃でした。三田市まちづくり協働センターさまから、「外国からのお客さまと博物館を観覧したいのですが、展示案内などはお願いできるでしょうか?」というお電話を頂戴しました。

  「かしこまりました。それでは、この秋オープンしました2階の『ひとはく多様性フロアー』を中心に、研究員が展示解説をしながら、標本にお手を触れていただくような内容でアレンジしてみましょう!!」
 ということで、お客さまのお越しになる時間に対応できる鈴木研究員と生涯学習課間で内容の調整をしながら、特注セミナーをアレンジします。

 通常、ひとはくでは館内展示に関わる解説案内は行っておりませんが、今回のように、限られた展示エリアを活用した演示型のセミナーは、調整次第では実施することができます。団体でご観覧の際にはご相談ください。 

 当日お越しになったのは、アメリカ、オーストラリアからのお子さまを含むご家族さまと通訳の方、ガイドボランティアの方、そして市の担当の方々でした。入館されてすぐにイノシシなどのはく製の前で解説を聞きます。もちろん通訳の方も参加しながら研究員に質問しながら展開されます・・・・・ボタン鍋の話だったような気もしますが(o^^o)

 そして、お目当ての2階 ひとはく多様性フロアへとすすみます。

         

 昆虫の大型模型にお子さまも大喜び(^.^) 県立御影高等学校のキノコの前では、毒キノコよりも食べられるキノコに関心が集中していました。 きれいな蝶の展示や干支展のためのヘビの標本など、じっくりと立ち止まり研究員の説明を聞きながらひとつひとつ見学されました。

       

 また、普段は鍵がかかっている見ることのできない標本箱も、研究員が特別にオープンしました。

        

 1時間の予定でしたが、時の経つのも忘れるほど集中し、みなさん、笑顔でひとはくを去られたのはお昼でした(o^^o) ぜひ、お国に帰られたら「HITOHAKU is a new typel Museum」とPRをお願いいたします。

 

生涯学習課 八尾Welcomeヘ(^o^)/ 

 1213() 神戸市立淡河小学校3年生8人がひとはくに来てくれました。

 

はじめのあいさつから(o^^o)

 

 

 

 今回は三橋主任研究員の特注セミナーを企画しました。

 団体予約お申し込みの時、学校からは、「水辺の生き物とそのくらし」というテーマを希望されていました。

 

 そこで、この秋、2階の展示室を改修してオープンした、「ひとはく多様性フロア〜魅せる収蔵庫トライアル〜」を活用した、演示型の特注セミナーを実施することに。人数が少なかったこともあり、また、事前に学校の近くの淡河川の生き物についての質問や水辺の生き物についての質問を準備してくれていたので、展示されている標本や模型を使いながら、三橋主任研究員といっしょに楽しく学びました。

 

 

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 2階の多様性フロアを活用した演示型特注セミナーのもっとも効果的で典型的なパターンではないかと思います。

 小規模校さまに限らず、2階の多様性フロアーで特注セミナーをご希望される場合、様子をお知りになりたい場合は、ぜひ一度お問い合わせください。 

 

生涯学習課 または 生涯学習推進室

 この時期、毎年恒例の“ふたご座流星群” 12月の中旬に楽しませてくれます。今年は新月ということもあり、最高のコンディション!! といいたいところですが、私の住んでる丹波は霧が深くて、観測できる時間帯が限られます。

 今年も極大と予測されているのは12月14日の日の出の後ということで、本来ならば明け方近くに最高潮のはずですが、とてもその時間帯には見ることはできません。

 今年出かけたのは、丹波市青垣町内某所。道端には先日の積雪がそのまま残ってました(@_@)

 寒っ!!

 

 撮影したのは1213日の23:10頃から1214日の0:30頃までのおおよそ1時間半。撮影枚数は120枚ほど。眼で見て確認できたのは、40個くらいでした。そして写真に残っているのは、7枚 Hit率6%ってところですか。

 

 流れている様子がよくわかる写真を紹介します。カメラは、オリオン座の方向を広角で写しています。

これは、素晴らしい!!自画自賛

よく見えます!!

これもわかります

 流星は極大と予想されている日の前後数日間も流れていますので、是非、暖かくして観察してみてください。

生涯学習課 やお

神戸市垂水区にあるパールディサービスセンターに行ってきました。
ゆめはく到着   ポスター

ゆめはくが到着。ポスターを作って近所に宣伝していただいていました。
この日を楽しみにされていたようです!

モルフォトチョウ   

色鮮やかなモルフォト蝶と翅(はね)の輝き、構造について説明を聞き、中には「採集に行きたいなぁ〜」と述べられる方もいました。

太古の化石 

研究員から説明を受け、約4億年前のアンモナイトの化石や恐竜の歯の化石、恐竜の糞の化石などを実際に手に取ってもらい太古の世界を実感していただきました。

丹波の恐竜化石2

丹波で発見された恐竜化石について、発見に至る経緯などを興味深く聞かれていました。

顕微鏡を覗き込むと・・・

顕微鏡でダイヤモンド原石やオパール、モルフォトチョウの翅のサンプルを見て、輝きと形に驚かれていました。

これは何?_その1  img00008_1.jpg

次はどこにゆめはくが出動するのかお楽しみに!!

情報管理課 阪上勝彦

12月2日(日)Kidsサンデーの一日、
Kidsひとはく大使に密着取材を行いました。

Kidsひとはく大使は20周年を迎えた ひとはくのPRと、

Kids向けプログラムのモニターを担う大使です。

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取材に協力してくれたのは小学2年生の なおと大使。
大使は昆虫などの生きものや化石が大好き。
ひとはくデビューは なんと 4才!
科学館や理科が大好きなお父さんに連れてきてもらいました。

それでは、なおと大使の一日に密着!

11:30 
ひとはく到着&キッズ館長スタート!
この日、尚人大使は キッズ館長 に任命されました。
(※キッズ館長はKids大使登録者のみの特別プログラムです。)
待ち時間は、恐竜の研究に熱中。

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館長室での記念撮影、収蔵庫棟の巡回、3階入口でのあいさつなどの

キッズ館長の仕事をしっかりつとめあげました。

121202Kidstaishi_ichinichi (22).JPG  121202Kidstaishi_ichinichi (3).JPG 

121202Kidstaishi_ichinichi (24).JPG  121202Kidstaishi_ichinichi (25).JPG

12月2日のKids館長全体の実施の様子はコチラ

12:40 
館長の仕事が終わり、大使はクリスマスムードいっぱいの
ひとはくサロンで昼食&休憩。

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大使はゆっくり休憩してるかな?と思ったら・・
取材スタッフは図書コーナーで読書中の大使を発見!(スクープ写真がとれず、残念!)


ひとはくサロンの図書コーナーには、
自然や科学に関する子ども向けの絵本や図鑑もあります。

121202Kidstaishi_ichinichi (1).JPG

13:30
プログラムとにらめっこして、数多くのプログラムの中から
参加するプログラムを 決定!

まずは10月にオープンした 2階 『ひとはく多様性フロア』をチェック。
お家で飼っている「ヒラタクワガタ」の拡大模型を発見し、
もう くぐらずにはいられない!

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『収蔵庫体験ラボ』では、蝶や化石の展示にワクワク感が高まります。

121202Kidstaishi_ichinichi (4).JPG 

13:45 
最初に参加したのは、化石博士の古谷主任研究員による オープンセミナー
『いろいろな化石を 見よう 触ろう』。

実体顕微鏡の使い方を研究員から直接教えてもらいます。
博士:「はっきり見えるところで止めてね。」

121202Kidstaishi_ichinichi (5).JPG
大使:「あ!見えた―」

121202Kidstaishi_ichinichi (6).JPG

 

 

 

 

 

 

 

肉眼で見るのは難しい小さな生きもの
「放散虫(ほうさんちゅう)」化石を発見!

 

つぎは・・・大昔の生きものたちの本物の化石をさわって大興奮!
なおと大使は、化石博士にたくさん質問しました。
大使:「これは なんてていう生きものですか?貝?」
博士:「これは古生代の海に多くいた腕足類(わんそくるい)ですね」

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大使:「これはアンモナイトですか?」
博士:「そうです。他の化石も入っていますよ」

121202Kidstaishi_ichinichi (27).JPG


14:15
本物の化石に触った興奮が冷めやらぬ大使は
ミュージアムショップで 大事なおこづかいをはたいて、化石をゲット。
ひとはく20才のバースデーケーキ前で満面の笑みでポーズ!!  121202Kidstaishi_ichinichi (11).JPG                        うれしさがにじみ出ちゃってます!

14:30
4階実習室では人と自然の会による
『牛乳パックでパクパク人形をつくろう』、『どんぐりであそぼう』が開催中。
どんぐりのけん玉、やじろべぇ、コマ、どんぐり掴みなど
どんぐりあそびを楽しみました。

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なかでも大使がはまったのは「どんぐりつり」。

121202Kidstaishi_ichinichi (15).JPG 「なかなかつれないな〜」

14:45
サロンでは布野研究員によるオープンセミナー
「日本に暮らす鳥たちの不思議」がオープン中。
ウサギやネズミのふわふわしている はく製をさわりたくて うずうずした大使。ここはガマン!

121202Kidstaishi_ichinichi (16).JPG  121202Kidstaishi_ichinichi (17).JPG

15:00
いよいよ大使が楽しみにしていた フロアスタッフによるイベント
「ひとはくモビール〜クリスマスバージョン〜」がはじまりました。

121202kidstaishi.JPG 

最初に移動博物館車「ゆめはく」のお話を聞きます。

「ゆめはくには 昆虫の標本などが展示できるんですよ!」「乗ってみたーい!」

121202Kidstaishi_ichinichi (20).JPG
細かい作業があるので、親子で協力して作ります。

 

121202Kidstaishi_ichinichi (28).JPG「ゆめはく」のミニチュアが

ゆらゆら揺れるモビールが完成しました。

 

 

 

 

 

 

 


終了後は部屋の片づけを手伝ってくれました!

121202Kidstaishi_ichinichi (29).JPG「よいしょ!よいしょ!」

最後にいくつか質問させてくださーい!
Q:「今日一日を思い出して、何が一番面白かったですか?」
大使:「本物の化石に触ったこと!ザラザラしてたよ!」

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何億年も前の 生きものの手触りを感じたんですね!すごい!

Q:「ひとはくで一番好きな場所はどこですか?」
大使:「深田公園!!今からカマキリ探しに行くんだ!」

理由を聞くと、6月に昆虫博士の沢田研究員と一緒に博物館の周りの
深田公園を探検したイベント、『ふかたん』で見つけた
赤ちゃんカマキリのその後を確かめに行くとのこと。

                       →実施の様子はコチラ
深田公園の自然の変化もひとはくの魅力の一つですね。

16:15
いってらっしゃーい!大きなカマキリが見つかりますように!

121202Kidstaishi_ichinichi (30).JPG

一日をふりかえると、本物の標本(はく製や化石)や、ひとはくの研究員、

自然やひとはくの楽しさを伝える皆さんとの たくさんの出会いがありました。

121202Kidstaishi_ichinichi (8).JPG

121202Kidstaishi_ichinichi (12).JPG

 

121202Kidstaishi_ichinichi (13).JPG   121202Kidstaishi_ichinichi (21).JPG  

ひとはくではKidsサンデー以外も 土日を中心に
キッズが楽しめるイベント、オープンセミナーを開催しています。

予定はコチラから!

なおと大使と保護者の皆さま、取材へのご協力本当にありがとうございました!

121202Kidstaishi_ichinichi (19).JPG                               (キッズひとはく推進室 たかせゆうこ)

 

 

 

ユニバーサル・ミュージアムをめざして19

 

霊長類学者がユニバーサルな事を考える理由−2

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

 

 

 

Humphrey_1998.JPG 

左は3万年前の洞窟壁画、右は3歳の自閉症の女の子が描いたウマの絵。左がウマを写実的にとらえていることは有名だが、右の絵もたいへん写実的で、生き生きとウマの姿をとらえています。  Nicholas Humphrey (1998). Cave Art, Autism, and the Evolution of the Human Mind. Cambridge Archaeological Journal, 8, pp 165-191.  doi:10.1017/S0959774300001827

 

 

 霊長類学(れいちょう・るい・がく)が描くヒトの姿と、現実の社会的な人間の姿は、ずいぶん違うことがあります。発達障害者の精神活動もそのひとつです。

 

 霊長類学では、ヒトは狩猟採集(しゅりょう・さいしゅう)生活につごうが良いように進化したと考えます。たとえばヒトのからだは霊長類としてはきょくたんに毛が少なかったり、大量の汗をかいたりしますが、これはサバンナで獲物(えもの)を追う時、暑い中で体温調節をするためにそうしているのだと考えています。またお尻に脂肪を蓄(たくわ)えたり、ほ乳類の中でも太りやすかったりしますが、これも獲物が捕れない時の飢餓(きが)にそなえての事だと思います。狩猟生活では、いつも獲物(えもの)が捕れるとはかぎりません。そんな時は木の実や貝の採集で食物を得るのですが、それでも狩猟生活はヒトの進化に大きな影響を与えたのです。

 

 そのような大昔の狩猟採集生活を想像させる痕跡が洞窟壁画(どうくつ・へきが)です。洞窟壁画はスペインのアルタミラやフランスのラスコーのものが有名です。氷河時代に描かれたものだそうです。そのような壁画は、「霊魂(れいこん)の意志」を伝える(と信じられていた)シャーマンが描いたものだと考えられています。進化心理学の立ち場からヒトのよって立つ位置を考えた人として有名なニコラス・ハンフリー(Nicholas Humphrey)は、そのような大昔の洞窟壁画が現代の幼い少女の絵にそっくりな事を知って、本当におどろいたそうです。少女は自閉症だったのです (1)

 

 大昔のシャーマンは自閉症、つまり発達障害だったのかもしれない。自閉症者だから、おおぜいの人がざわざわしていると緊張して思った事が言えなくなるのだが、普通の人には思いもつかない「霊魂(れいこん)の意志」を翻訳できる(と自分でも信じている)。それを落ち着いた場所で誰か仲介者に話して、人びとに伝えてもらったのかもしれない。

 

 ハンフリーが見た幼い少女は、ことばの出ない3歳の子どもでした。でも、その子の描いた絵は「3歳の子どもの絵」には見えませんでした。わたしたちの周りの「3歳の子どもの絵」と較べてみて下さい。その絵には、走り、跳ねるウマが描かれています。3歳の子どもの絵によくある、横から見たウマの絵だけが描いてあるわけではありません。自閉症児とか発達障害児と呼ばれる子どもには、普通の子どもにはない、すばらしい才能があることがよくわかります。ハンフリーは、それを大昔のシャーマンの能力と較べてみたのでした。ただ、この3歳の女の子は、そのすばらしい絵を描いたあと少しずつことばを身に付け、普通の子どもに近づいていったそうです。

 

☆   ☆

 

 現代に生きる狩猟採集民も、発達障害のひとつ、ADHD(注意欠陥/多動性障害)の遺伝子を持つ人が有利なのではないかと疑った人がいます (2)。毒ヘビや大型の肉食獣の危険は、いつ降りかかってくるかわからない。襲われた時にはすばやく身をかわさなければならない。その一方で獲物が見つかったら、根気よく追跡し続ける事も必要です。追跡し続ける事はけっして辛い事ではなくて、楽しくてしかたがないことなのです。このような狩猟のイロハは、ADHDに有利だと言うのです。

 

 現代のわたしたちはどうなのでしょうか? 現代人は狩猟採集民のようなキャンプ生活ではなく、定住生活が大勢(たいせい)を占めています。そもそも、現在ではピグミーやブッシュマンも小学校に行き、字や算数を習っているのです。今は、昔のような狩猟採集生活は少なくなりました。

 

 現代生活の基本は農耕だと思います。農耕には定住が必要です。芋は種芋を植えるだけではなく、芋が育つ雨と時間が必要です。その農耕をいつも変わりなく行うためには、どこまで木を伐(き)って畑にするかといった計画性も大切です。農耕には、狩猟採集とは異質の才能が必要なのです。そして、狩猟採集時代には重宝した(だろう)自閉症やADHDの人に秘められた力は、「発達障害」という枠(わく)でくくる医療行為の対象になってしまいました。でも、狩猟採集生活をほとんど止めてしまった現在でも、ヒトに体毛が少ないとか、太りやすいとかいった性質が残っているように、「発達障害」の才能を持った人は今でもたくさんいるのです。

 

 臨床精神科医の杉山登志郎さんは、『発達障害のいま』という本 (3) の中で、「発達障害」と呼ぶのは、もう止めようと言っています。現在では発達障がいの事を「自閉症スペクトラム障害」と呼びます。その意味は、誰のこころにも大なり小なり自閉症の傾向はあるもので、スペクトルのように普通の人と自閉症者はつながった存在だからです。「発達障害」という言い方は、なにか特別な人がいるように聞こえます。その上「障害」と言ってしまうと、その人はまるで「社会の害」になっているみたいではありませんか。そこで「発達障害」に代わって「発達凸凹(でこぼこ)」と呼ぼうと提案したのです。才能のでこぼこは誰にでもあるものだからです。

 

 同じく臨床精神科医の青木省三さんは、『ぼくらの中の発達障害』という本 (4) の中で、やはり自閉症スペクトラム障害という考え方を支持し、世の中には、(健常者ならぬ)定型発達者と発達障害者がいるという考えを勧めています。青木さんも杉山さんと同じく、何とか「発達障害者」で表される「特別の人」という誤解を解きたいと思ったのです。

 

 しかし、そうは言っても「発達障害者」は現実に存在します。一般の人と「発達凸凹(でこぼこ)」のある人、あるいは、定型発達者と発達障害者という類型化にも、何かの意味があるに違いありません。「類型化」とは連続したものの一部に名前を与える事です。いったいどういうことでしょうか?

 

 青木さんは、色のスペクトルと「赤」とか「青」とかの色のとらえ方を例にあげて説明しています。つまり、ある波長の色を「赤」ととらえるか「オレンジ」ととらえるか、「青」ととらえるか「緑」ととらえるかは、文化によって変わるのです。必ずしも波長の長さ・短さによるのではありません。経験によって変わる主観的な現象です。

 

 わたしは、なるほどと思い、うなずきました。人(あるいはヒト)の発達のようすは連続的なものでありつつ、同時に個別のものでもあるのです。青木さんは、「発達障害を持つ人は、定型発達の人とは、異なった物の見方や考え方や振る舞い方をする人、即(すなわ)ち異なった文化を生きる人」だととらえ、「異なった文化に敬意を払い、対等な一つの文化として理解しようとする姿勢」が、共に同じ社会で生きていく時には大事なのだと語っています。

 

☆   ☆

 

 このように臨床精神科医は自閉症スペクトラム障害という考え方で、連続しつつ個別でもあるという、例えるなら〈人種〉と同じように発達障がいをとらえているのです。しかし、教育者の考え方は硬いように感じます。医者は「個別の人」として患者をとらえているが、学校の先生は子どもをクラスの中の大勢、すなわちマスとしてとらえがちだといった意見を聞いた事があります。すべての医者が患者を「個別の人」と見なし、すべての教育者が子どもをマスと見なしているとは思いません。でも学校現場には、どうも子どもを医療に預けてしまえば、それからは、たとえ子どもが自分の前にいたとしても親身に関わろうとはしないという悪しき傾向があるように感じるのです。このことは青木さんも指摘していましたし、わたしは、それが「発達障害児の(病状の)類型化」 (5) に現れているように思ったのです。

 

 農耕という豊かで計画性に満ちた生活は、人類史のレベルでは、たかだか1万年前に始まったばかりだと言います (6)。人類史を一年間の暦(こよみ)にたとえるならば、農耕が始まったのは昨日の事か、ひょっとしたら数時間前のできごとかもしれません。農耕が始まるまでの数百万年間は、延えんと狩猟採集生活が続いたのです。「異なった物の見方や考え方や振る舞い方をする人」がいる事は当然です。だれもかれもが「定型発達の人」ばかりになったとしたら、かえって気持ちが悪いはずです。それはまるで人間像のコピーだからです。

 

 この「気持ちが悪い」という感覚が理解できるかどうかは、ひょっとして、ユニバーサルなものを創り出す動機まで左右しているのかもしれません。

 

 次に続きます。

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(1)  N. Humphrey  (1998)  Cave Art, Autism, and the Evolution of the Human Mind.  Cambridge Archaeological Journal 8:2, pp. 165-191

http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=3070628

 

(2) たとえば、T Hartmann, P Michael (1997)  Attention deficit disorder: A different perception.  http://www.citeulike.org/group/266/article/430116

 

(3) 杉山登志郎 (2011) 『発達障害のいま』(講談社現代新書 2116http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2881160

 

(4) 青木省三(2012)『ぼくらの中の発達障害』(ちくまプリマー新書 189http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480688927/

 

(5) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 (平成24125) 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について.

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/05/1328849_01.pdf

 

(6) 浅井健博(2012) 「耕す人・農耕革命〜未来を願う心〜」pp. 221-318, NHKスペシャル取材班『ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか』, 角川書店.

http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201012000174

 

 

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

兵庫県立大学 自然・環境科学研究所

/人と自然の博物館

寒さが厳しくなってきた今日この頃。
しかしKids大使たちは寒さに負けず、元気に館長のお仕事をしてくれました!

12月2日(日)のkids館長を務めてくれたのは10人の子どもたち☆


まずは館長室で記念撮影。
みんないい笑顔!

P1040148.JPG      20121202キッズ館長

20121202キッズ館長      20121202キッズ館長

20121202キッズ館長      P1040171.JPG

 

 

小学生の館長にはひとはくのPRコメントをもらいました。

 

20121202キッズ館長

Q.ひとはくのどんなところが好きですか?
くれあ館長:蝶々がいっぱいあるところです。  


 

20121202キッズ館長

Q.ひとはくのPRをお願いします!
うい館長:人と自然の博物館に来ると、恐竜の化石について学べるよ。
コウノトリの事もよ〜くわかるよ。ミツバチの秘密もわかるよ。
みなさんもひとはくに来て、生き物の事をたくさん知ろう!

 

 

20121202キッズ館長

Q.ひとはくでしたこを教えてください。
ほのか館長:いろんなことを調べたりしたいです。


 

 

20121202キッズ館長

Q.ひとはくで楽しかったことは何ですか?
なおと館長:ひとはくフェスティバルです。

 

 

前半のチームは本物のひとはくの館長、岩槻館長がご在室だったので一緒に写真を撮りました。

  20121202kids館長 20121202キッズ館長 20121202キッズ館長

 

 

 

 では、館内のバックヤード巡回に出発ー!

  20121202キッズ館長

 

「ここからバックヤードに入ります。
みなさん、準備はいいですか?」

 

 

 

 

 

 

まずは図書室へ行ってみましょうー♪

 

20121202キッズ館長

 

 

   「うん?このボタンはなんだろう…」

 

 

 

 

 

 

 

「本がいっぱいだー!」                          「この本がおもしろそうかな♪」

20121202キッズ館長

20121202キッズ館長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20121202キッズ館長

みんなで選んだ本を読んでよう!

 

 

20121202キッズ館長

20121202キッズ館長

 

 

 

 

 

 

           「これなーに?」                    「きれいな蝶々…!」

 

 

 続いて収蔵庫へ行きましょう。

収蔵庫の中には、ひとはくの宝物がいっぱい!

 

 

20121202キッズ館長

 

 「ここで足の裏についている虫を取ってください。」  

 

収蔵庫に入る前には、虫などの混入を防ぐために、粘着シートで靴底をきれいにしてから中に入ります。 

 

 

 収蔵庫の中では鳥のはく製を見ました!

 

みんな鳥のはく製に興味深々♪ 20121202キッズ館長 20121202キッズ館長                         「大きな鳥!かっこいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、いろんな荷物を置いている荷解き場に行きました。

 

20121202キッズ館長     20121202キッズ館長

 「いろんな物が置いてあるな。あっ!ゆめはくだ!」        「ここから外に行けんるんだね。」

 

さぁ、最後は、一番大切なお仕事、お客様のお出迎えです☆

 


20121202キッズ館長    20121202キッズ館長

  ただいま、本番に向けて練習中!               「上手にできるかな…」

 

 ドキドキ、緊張しながら本番です。

20121202キッズ館長

 

 

あっ、お客様が来られました!

 「いらっしゃいませ!こんちには!」 
20121202キッズ館長

 

チラシも上手に渡せたね☆

20121202キッズ館長

大きな声で元気よくお客様にあいさつができましたね!

お客様のお出迎え、大成功です!

 

 

みなさん、kids館長のお勤め、ありがとうございました!

次回は1月6日(日)のkidsサンデーに大使に活躍してもう予定です☆

 

 (キッズひとはく推進室 ほそかわ まりえ)

12月8日(土)ひとはくで、このような集会が開かれます。
学会会員外の方も聴講できますので、この機会に、のぞいてみてください。

日本昆虫学会近畿支部2012年度大会・日本鱗翅学会近畿支部第146回例会

(昆虫学公開研究発表会)

 

 

※ 受付は10:00から、本館4階大セミナー室前で行います。

※ 学会会員以外の方も聴講できます。観覧券(大人200円)を購入して入館し、受付で参加費(1人50円:茶菓代充当)をお支払い下さい。

※ お申込・問合せ先:兵庫県立人と自然の博物館 八木 剛

電話079-559-2001、E-mail: yagi(アット)hitohaku.jp

日時 2012年12月8日(土)10:30−17:30(10:00受付開始)

会場 兵庫県立人と自然の博物館 大セミナー室(兵庫県三田市)

 

プログラム

研究発表 

10:30 1 カワウの巣の昆虫相/八尋克郎1・亀田佳代子1・那須義次2・村濱史郎31滋賀県立琵琶湖博物館・2大阪府病害虫防除所・3株式会社野生生物保全研究所)

10:45 2 琵琶湖竹生島のカワウの巣の鱗翅類/那須義次・村濱史郎・大門 聖・八尋克郎・亀田佳代子

11:00 3 オオヒロズコガ(ヒロズコガ科)に近縁な国内未知種/○長田庸平・坂井誠*・広渡俊哉 (大阪府大院・生環  *共生科学)

11:15 4 ツマグロケンヒメバチとその近縁種における分類学的諸問題/○伊藤誠人・渡辺恭平・前藤 薫(神戸大院・農)

11:30 5 DNAバーコーディングによって発見されたハラボソコマユバチ属Meteorusの1新種/○藤江隼平・前藤 薫(神戸大・農・昆虫多様性)

11:45 6 マイマイガに寄生するチビアメバチ2種とその高次寄生蜂、およびマイマイガを利用するヒメバチ上科に見られる繭形態の多様性/渡辺恭平(神戸大院・農)

12:00〜13:00  <休憩>

研究発表 

13:00 7 ガガイモ科の送粉系に関する知見(その4):イケマへの飛翔性訪花者は送粉に貢献しているのか?_コハナバチ・マルハナバチ・蛾類、および、アリ類の間での、送粉関連形態ならびに訪花行動についての比較考察/濱西 洋(三田市)

13:15 8 クロヤマアリを誘引するカラスノエンドウ上の奇妙な種間相互作用/笠井 敦(京都大学大学院農学研究科)

13:30 9 クルミホソガ Acrocercops transecta (鱗翅目:ホソガ科) のホストレース間での寄生蜂相の比較/○河村友裕・大島一正(京都府大・生命環境)

13:45 10 ギンケハラボソコマユバチの体色の異なる2系統における日周活動性の比較/○藤井智浩(神戸大・農)・西村卓真・前藤 薫(神戸大院・農)

14:00 11 ホソヘリカメムシが飛翔時に示す光走性の解析/○名和厚樹・後藤慎介・志賀向子(大阪市大・院・理)

14:15 12 セスジアメンボ Limnogonus fossarum fossarum の餌条件を統一した飼育手法の確立/○広岡佑太,大島一正 (京都府大・生命環境)

14:30 13 ヤママユが食べて糞をする植物と全く囓らない植物の差は何?/寺本憲之(びわ湖の森の生き物研究会)

14:45〜15:45  <ポスターセッション・休憩・収蔵庫見学>

P1 外来昆虫ヘクソカズラグンバイの四国における分布拡大(第3報)/○加藤敦史(東大阪市)・山田量崇(徳島県立博物館)

P2 ヨコヅナサシガメの配偶行動とその化学因子/〇坂田大介・薬丸亮太・秋野順治(京都工芸繊維大・生物資源フィールド科学教育研究センター)

P3 寄生蜂のSSR解析のための羽化繭からのDNA抽出方法/梅基弘宣・西村卓真・前藤 薫(神戸大院・農)

P4 クロヤマアリ巣仲間認識に対する巣間距離の影響/坂田惇一・秋野順治(京都工芸繊維大・生物資源フィールド科学教育研究センター)

P5 ツノヤハズモドキの多様性/沢田佳久(兵庫県博・昆虫共生)

P6 エゾスジグロシロチョウの香気成分の経時変化/棚橋一郎(大阪工業大学)

展示 ジナンドロモルフのスズムシの行動/兵庫県立人と自然の博物館

15:45 14 アカハネオンブバッタの近畿地方への移入と分布拡大/河合正人1・市川顕彦1・冨永 修1・森 康貴1・西口栄輔1・伊藤ふくお1・金沢 至2・加納康嗣1・○松本吏樹郎21日本直翅類学会・2大阪市立自然史博物館)

16:00 15 関西での冷温帯性キジラミの新知見、特にヤマオオトガリキジラミとキハダヒメキジラミについて/宮武頼夫(橿原市昆虫館友の会)

16:15 16 海岸性甲虫類と海浜の面積および孤立度との関係/○河上康子(高槻市)・村上健太郎(名古屋産業大学)

16:30 17 聟島列島の異翅半翅類相/○伴 光哲(エー環境研究所)・岸本年朗(自然環境研究センター)

16:45 18 ブータンの蝶類について/渡辺康之(日本鱗翅学会)

17:00 19 マダラチョウ類の越冬地を求めて−台湾蘭嶼島と香港−/金沢 至(大阪市立自然史博物館)

 

 

12月の星座が一番きれいだと……聞いたことがあるような(o^^o)

そして、今年も「ふたご座流星群」がやってきます。

極大が予想されているのは、1214()の朝8時頃だそうです!!

何っ!!  もう太陽がでているではないか!!

 

ご安心ください。13日から14日にかけては新月なので、一晩中よく見えるハズです(o^^o)

図でわかりますでしょうか?ちょうど真夜中の0時頃に「ふたご座」は南の空のてっぺん近くにあります。

で、その近辺が「放射点」といって、流星の中心ということで「ふたご座流星群」と名前がついていますが、空のどこを見ても見えますので、ご安心を。

暖かくして寝っ転がって、夜空全体を見るのが一番いいですね。できるだけ地表の人工光の少ない場所がおすすめです。猪名川町には「猪名川天文台」という施設もあるそうです。

    ちょうど鉄塔の左あたりに、一つ写っています。

  

星がグルグル(@_@)写真を撮る時に、何分間もシャッターを開放した状態で撮影しますが、さらにその画像をつなぎ合わせると、星がグルグルまわっているのがよく判ります。最近のデジタルカメラならお手軽にこんな写真も撮影できます。興味のある人は是非一度トライしてください!!

 

 

くれぐれも風邪をひかれませんように  

 

この2枚の写真は、2011.12.15のふたご座流星群の時に、多可郡多可町内で撮影したモノです

 

 

 

ユニバーサル・ミュージアムをめざして18

 

霊長類学者がユニバーサルな事を考える理由−1

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

 

 

gorilla_group.jpg 

わたしがコンゴ共和国のオザラ国立公園で撮ったゴリラ集団の写真です。前を赤ん坊を背負った2頭のメスと1頭の若いメスが行き、いちばん後ろをオスのシルバーバックが付いて行きます。メスはエサのあるところをよく知っていて、どんどん進みます。シルバーバックは「付いて行っているのではなくて、いちばん後ろで、敵を見張っているのだ」と感想を述べた男性もいました。

 

 

 わたしが長く取り組んできた学問は「霊長類学(れいちょう・るい・がく)」と言います。「霊長類(れいちょう・るい)」というのは、サルや類人猿や化石人類、それから現生人類を含みます。今、生きているわれわれヒトも霊長類です。

 

 わたしにとって霊長類学は、「今、生きている霊長類の生き方や感じ方をくわしく調べて、ヒトの本質を探る」ものです。ただの「サルの動物学」だと勘違いしている人がいますが、霊長類学は、けっして「サルの動物学」ではありません。ややこしいことに、霊長類学を俗に「サル学」と呼んだりします。実際のところ霊長類学に「サルの動物学」の側面がないわけではないのですが、どちらかと言えば「人類学」という言い方がより正しいと思います。

 

 人と自然の博物館には、化石になったヒトの祖先の展示があります。ですから「人類学」と言えば化石を調べる古人類学(こ・じんるい・がく)を思い浮かべる人が多いでしょう。現に化石を研究している霊長類学者がいます。しかし、霊長類学者には積極的に化石を調べない人も多くいます。なぜかと言うと、霊長類学では、けっして化石になって残ることのない、大昔の(そして今、生きている)霊長類の行動や社会に本質的な興味を感じているからです。我われヒトが持っているはずの「生き方」や「感じ方」、それから「社会の進化」を探っていると言えば、もっとわかりやすいでしょうか。

 

 たとえば、大昔のアウストラロピテクスの女の子の化石が出たとしたら、わたしたち霊長類学者は「この子のコミュニケーションは、どんなふうだったのだろうか」とか、「この子は家族と、どんな関係を持っていたのだろうか」と考えます。「お父さんは、外敵から守ってくれただろうか?」とか、「ひょっとしたら、家族にお父さんはいないのが普通だったかもしれない」とかです。現に(生物としてDNAを受け渡したオスはいたのですが)、社会的には、「お父さん」という存在がいない、つまり「お父さんの可能性のあるオスが多すぎて決められない」霊長類は多いのです。

 

 もう一度書けば、わたしにとって霊長類学は〈ヒトの本質〉を探るための学問です。しかし、現代人は元来のヒトの生き方とは違った生き方をしています。定住をしていますし、都市や農村で生活する人が多くいます。このような生き方が、本当にヒト本来の生き方かと問われれば、ためらってしまうでしょう。どこまでも膨張し続けるインターネットで結ばれる人間関係や、お金の形がどこにもない(しかし、社会的な人の生活には強い影響力を持つ)電子マネーに囲まれた生活というのは、わたしたちの本当の生活なのでしょうか? それを感じてしまう心のすき間に、「狩猟採集こそ、ヒト本来の生き方だった」という思いが忍び込むと、登山や野遊びの好きな人は、思わず、うなずいてしまうでしょう。

 

 前回まで話題にしていた「女性の働き方」は、現代社会が抱える大きな問題です。そして霊長類学から見ると、女性と男性の生き方は現状とはずいぶん違ったものになります。

 

 人と自然の博物館の準備室長(≒初代館長)で霊長類学者の伊谷純一郎さんは、『霊長類の社会構造』(1)という本を、当時、奈良公園のニホンジカを調べていた川村俊蔵さんの調査(2)を基に、(霊長類ではなく)ニホンジカの生活の仕方から、メスとオスは違うのだという話から始めています――わたしが偉い先生に対して「伊谷さん」や「川村さん」と呼ぶ事に疑念を持たれた方がいるかもしれません。霊長類学の研究仲間は、どんなに偉い先生でも「○○さん」と呼ぶ習慣があります。お互いに「○○さん」と呼び合わないと、学生は先生に、後輩は先輩におかしな遠慮が出て、研究者として本当の議論ができなくなるからだと思います。ですから、わたしは敬意を込めて「伊谷さん」「川村さん」「河合さん」と呼んでいるのです。

 

 伊谷さんによれば、メスジカは自分が生まれた土地に長くとどまろうとして、一生を同じ場所で過ごすことが多いそうです。そしてオスジカには放浪ぐせがあり、交尾の季節だけメスジカよりも広い場所をテリトリー(なわばり)として守ります。オスジカのテリトリーはメスジカのテリトリーと重なっているので、メスとオスは自然に出合い、交尾が起こります。交尾が終わったらオスジカは別のメスジカを探し、一方、メスジカはコドモを生んで、自分だけで育てていくのです。これはニホンジカの話ですが、霊長類も、もともとはニホンジカと同じような社会だったと伊谷さんはおっしゃいます。

 

 わたしが鹿児島県の屋久島で調べてみると、ニホンザルの社会(3)でも、自分が生まれた土地に長くとどまるのはメスたちでした。いちばん老齢のメスを、わたしは「母家長(ぼ・かちょう)」と呼んでいました。何頭もいる集団のメスは、皆、母家長の娘や、娘の娘なのだと思います。これに対して、オスは一時的に集団にとどまるだけの存在です。かつては、ニホンザルでよく言われた「ボス」とか「リーダー」という言葉から受けるオスの印象とは、だいぶ違っていました。

 

 もっとも、ヒトの直接の仲間のゴリラやチンパンジー、ボノボのような類人猿では、ようすが変わります。類人猿は、基本的にオスに血縁がある集団を作ります。ニホンザルと違い「父系」なのです。そしてメスは「嫁に行く」ように集団を移動します。このメスが集団の間を移動する行動は、今は化石になったアウストラロピテクスや、ずっとヒトに近いネアンデルタール人でも同じだったと思います。

 

 それよりも、ヒトの直接の仲間――類人猿や化石人類を含めて、ヒトの直接の仲間をホミニッドと呼びます――は、メスとオスで作られる社会が、種によって多様であることの方が重要かもしれません。

 

 たとえば、くわしく調べられたチンパンジーの集団はオスに血縁があり、メスは血縁がないために、オスほど親密ではありません。しかし、チンパンジーによく似たボノボは、別の集団から移ってきたメスたちに血縁はありませんが、親密さはおどろくほど高いのです。さらにゴリラでは、オスにもメスにも血のつながりはないことが多いのですが、集団のメスたちは親密に接します。配偶(はいぐう)の相手を選ぶのは――特に若いオスが相手では――メスなのです。わたしはコンゴ共和国でゴリラを観察しましたが、オスはメスが選んでくれるのを黙って待っていたのでした。

 

 ニホンジカと同じように霊長類でも集団の主役はメスなのだと思います。それが基底音となっては全ての霊長類には流れているようです。ところが、ホミニッドでは「父系」で表される別の要素が加わるようになった。しかし、これまで見たようにホミニッド全体は一種類の社会というわけではありません。チンパンジーのようにオスのつながりが強い社会もあれば、ボノボやゴリラのようにメスのつながりが強い社会もあります。それなら原生のヒトはどうなのでしょうか?

 

 わたしはゴリラの社会に近かった気がします。ヒトも基本的には父系です――社会人類学者のクロード・レヴィ=ストロースがブラジルの先住民ナンビクワラ族の社会を書いた『悲しき熱帯』(4)には、その事がよく示されています――が、女性は血縁はなくても、ゴリラのメスたちと同じように他の女性と仲よく生活することができます。貝であれ、木の実であれ、女性の採集集団は、女性どうしがお喋(しゃべ)りをしながら集めたものでした。

 

 このことに加えて、ホミニッドの中でヒト(あるいは人)をきわ立たせる重要な特徴が、もうひとつあります。それは「(目の前にないものを)イメージする力(ちから)」とか「抽象的な思考能力」(5)です。「抽象的な思考能力」といっても、ここで言っているのは哲学とか数学とかいった難しい事ではなくて、子どもが憶える〈ことば〉とか、子どもの〈絵〉を描く能力の事です――〈ことば〉や〈絵〉は、本質的に抽象的なのです。この能力によって、「ヒト」は生物学的な存在から、社会的な「人」に変化します。

 

 「ヒト」が「人」になるのは、子どもの成長で言えば〈ことば〉を獲得する1歳ぐらいからだと思います。この変化は10歳を超える位まで続きます。〈わたし〉が世界から独立したものだとわかってから、〈あなた〉や〈彼ら〉も、〈わたし〉と同じように〈こころ〉を持つのだということがわかるまで、少しずつ変化するものです。それは「人」として「社会性を身につける」ことに当たります。進化では、〈ことば〉を獲得した時に「生き方」や「感じ方」が一気に組み換えられたのだと思います。その時から、ヒトはチンパンジーやゴリラや、多くの化石人類とは別の生き方を始めたのでしょう。

 

 では、基底音となっては全ての霊長類に流れている(であろう)「メス中心の社会」は、我われの社会に、割合としてどれぐらい残っているのでしょう? それは確かめられるのでしょうか?

 

 確かな事は言えません。しかし、それを確かめてみる努力をしないと、女性が不利な世の中をどのように変えればいいのか、方針も生まれないように思います。少なくとも、今、言える事は、社会を形作るのが男性の専売特許ではないという事です。女性こそが、おだやかに、そして、たゆみなく社会を動かしているのかもしれない。そうであるならば、男性中心に組み立てられた社会では、どこかに矛盾が生まれるのは当然です。その矛盾をできるだけ取りのぞくためには、ユニバーサルなシステムが登場します。皆が等しく役に立つ、それぞれに異なった得意技をみがいて成り立つ社会の登場です。

 

 次回に続きます。

 

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(1) わたしが持っているのは、共立出版から生態学講座の1冊として1972に出た古い版です。現在は、『霊長類の社会構造と進化』として新しい版が出ていますが、値段は大変高いので、図書館で買ってもらうといいと思います。

(2)『奈良公園のシカ』(川村俊蔵、1971

(3) MITANI, M. (1986)  PRIMATES, 27: 397-412

(4) クロード・レヴィ=ストロース (2001)『悲しき熱帯』1, 2 [川田順造 ] 中公クラッシックス.英語であれば無料で公開されています

 

tristes_tropiciquesFP_reduced.jpgのサムネール画像(5) 三谷雅純 (2011)  『ヒトは人のはじまり』(毎日新聞社)

 

front_page.JPGのサムネール画像 

  

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

兵庫県立大学 自然・環境科学研究所

/人と自然の博物館

 

 これ、なんの写真だかわかりますか?
 丹波市山南町上久下地区で発掘された恐竜化石の頭部骨格図の一部です。
 現在丹波市で進行中の「篠山層群復元画丹波プロジェクト」の中間報告として発表されたモノです。頭部骨格図の全体はこんな感じでした。

 この竜脚類ティタノサウルス形類の頭部骨格図のほかに、同じく頭部復元図(カラー)と、カエル類ムカシガエル亜目の「全身骨格図」及び「全身生体復元図(カラー)」が発表されました。

    

 この丹波市のプロジェクトに、ひとはくから三枝主任研究員、池田研究員がプロジェクト会議のメンバーとして加わり、制作に関わっています。2年間にわたるプロジェクトなので、最終的には骨格図や復元図30枚程度と、恐竜がいたころの生態環境復元図が制作される予定だそうです。

 今後の発表にご注目ください。

 

恐竜TFチーム やおすごいです!!
 
 

11月25日日曜日,ひとはくのセミナー「子どもの目が輝く自然体験学習」指導者養成セミナー(実習編)」を伊丹市昆虫館で開催しました.

 

 

itami1204.jpg                           伊丹市昆虫館で教職員セミナー 

 

本セミナーは,小学校や幼稚園教員などの指導者を対象に,経験豊富な現職教員および伊丹市昆虫館の学芸員から子どもたちの体験学習の指導の助けになる昆虫の観察方法や、生きた昆虫の扱い方、遠足などでの昆虫館の効果的な利用の仕方を体験的に学ぶことを狙いとしています.

 まずは,昆虫館友の会の役員で,伊丹市立有岡小学校の國村先生から,昆虫館や博物館で自然体験学習を実施する際のポイントについてお話をいただきました.子供たちに効果的な昆虫体験をさせるには,事前に昆虫館や博物館に,どんな体験をさせたいのかをはっきりと伝えることが大事.さらに,その場の体験で完結する学習プログラムなのか,あるいは,その体験をもとに学校等で学習を継続しておこなうことをねらいとしているのかを明確に伝えることも重要と教わりました.たしかに,その場で完結するプログラムなら,昆虫館や博物館のスタッフも子供たちの昆虫に対する質問にもその場で解答すれば良い訳ですが,学校で引き続き学習を続けるなら,答えではなく,子供たちが自分たちで考えて答えを導き出せるようなプログラムを用意する必要がある訳です.

 

 

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 有岡小学校の國村先生      昆虫館学芸員の長島さん

 

講義のあとは,昆虫館学芸員の長島さんにアゲハチョウやカイコ,カブトムシの幼虫,ナナフシの成虫などを用意いただき,実際に生き虫に触れながら,昆虫観察の方法やポイントについての実習を受けました.アゲハチョウの幼虫の足の本数を調べたり,ナナフシを手にとって走行性を観察したりと楽しい学習プログラムに,予定していた時間を大幅に延長し,セミナー終了は閉館直前になってしまいました.

 

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                   カブトムシの幼虫にさわって学習体験

 

國村先生,長島さん,そして伊丹市昆虫館のみなさま,今日は,お忙しい中,いろいろと教えていただきありがとうございました.

 

                                     橋本佳明(自然環境評価研究部)

 

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