身近な化石の話

2010年1月28日

人と自然の博物館で最近の化石の話題と言えば、なんといっても恐竜の化石です。しかし私は、小学生を対象としたセミナーで、チャートという石に含まれる、放散虫化石の話をよくしています。化石にはめったにみつからない珍しいものというイメージをもたれることが多いのですが、放散虫化石は身近なところにいっぱいあるのです。

furutani1-1.JPGのサムネール画像         写真:加東市の道ばたの砂利(およそ半分がチャート) 

放散虫は海にいるプランクトンの一種で、二酸化ケイ素でつくられた殻をもっているので、化石として残りやすい生物なのです。殻の大きさは0.1mmから0.2mm程度のものが多く、とても小さな生物です。放散虫化石が特に多く含まれている石がチャートなのです。チャートは微細な石英で構成された、とても硬い石です。色は黒、赤、白、青、緑など様々なものがあります。チャートの表面を水で濡らして10倍以上のルーペで観察すれば、放散虫化石を見ることができます。

furutani1-2.jpgのサムネール画像

                 写真:チャート中の放散虫化石(黒っぽく丸いもの)写真の長辺が約6.7mm

多くのチャートは、遠洋域の深海底に降り積もった放散虫の死骸がもとになって作られたと考えられています。その堆積物が海洋プレートの上に乗って大陸の下に沈み込むときに、大陸の縁辺部にくっつくのです。このようなチャートを含む地層が、北摂、丹波、播磨地域に広く分布する丹波帯や超丹波帯です。これらの地層の分布域ではチャートを見ることはできますが、それ以外の地域でも、チャートはよく見られる石です。その理由はチャートがとても硬い石だからです。地層が浸食されて石ころになったチャートは、川によって遠くまで運ばれるのです。そのため近くに丹波帯や超丹波帯などの地層が見られない、例えば加古川市などの平野部でもチャートは学校の校庭の片隅や田んぼのあぜ道にごく普通に転がっている石なのです。その意味で放散虫化石は私たちにとても身近な化石ということができるのです。

                                              

                                             古谷裕(自然・環境評価研究部)

 

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