リンゴコフキ!

2009年4月28日
 某先生が大好きなことで一部で有名な「養老虫」,ヒゲボソゾウムシ(Phyllobius属)を見かける季節になりました.細長い胴体に長い脚と長い触角,緑色の輝きの美しい虫です.
 街中の公園にはいない虫ですが,郊外ならちょっとした山でも見かけます.針葉樹と広葉樹が混じったような環境,植林と雑木林の境目あたりにいます.ゾウムシにはめずらしく樹種特異性は低く,いろんな広葉樹を食べるものが多いようです.特定の木で育つよいうより森からわき出す感じの虫です.人に気づくと走って逃げます.脚は速いです.

 くわしい甲虫図鑑には10種ほどが掲載されていますが,さいきん研究が進み,2006年に出たモノグラフには23種も載っています.いちばん良く見かける大型の立派な種(P. armatus)を,以前は「リンゴコフキゾウムシ」と呼んでいました.ところが最近は「ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ」.ぜんぜん違います.
 ヒゲボソゾウ好きの人々(何人いる?)の間ではヒゲボソゾウムシの代表種としてリンゴコフキの呼び名は長く親しまれてきました.もともと「リンゴコフキゾウムシ」という和名じたいは,マメ科に多い「コフキゾウムシ」と似た肌合いの,リンゴの葉を食べる事がある,いわば本来は害虫としての位置づけでした.

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 でも今や「ヒゲボソゾウムシ」はちょっと注目の虫なので和名の不統一はイカガナモノカ.大改訂を機会に和名が改称されたわけです.この仲間(Phyllobius属)全体を「ヒゲボソゾウムシ」といい,その中で大型で♂の前脚の脛にトゲがあるもの(Odontophyllobius亜属)を「トゲアシヒゲボソゾウムシ」といい,その中で毛深い種類は「ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ」という論理です.美しい階層構造!

 ただ,今年も見つけたときは「リンゴコフキ発見!」とつぶやいてしまうのであった.

昆虫共生・沢田佳久

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