岩槻邦男のコラム

2009年4月10日

 2009年度は月に2回くらいのペースでコラムを担当したいと思います。館を代表する考えを述べる場ではなくて、日頃抱えている個人としての思いを、その時々に思いつくままに発信しようというものです。

 4月は新しい年度の始まりです。形式的なことは好きではありませんが、そうはいいながら、句読点を気にするように、節目節目には、自分の行動を振り返ってみ、やってくるべき日々に向けて、どのように取り組んだらいいのかを考えます。

 4月1日には、人事異動にともなって新しく赴任してくる人たちがありますし、ひとはく固有のやり方で執行している事業部の組織も一部修正して再編します。辞令の伝達や交付は、組織として年度はじめを具体的に意識する行事です。

 事務部の新人(ずいぶん年配の人も含めてですが)には、ここはお役所ではないと思ってください、といい、研究部の新人には、ここは研究所ではないと思ってください、といいました。さらに、自分のイメージに描いている博物館活動に参加するという意識も一度払拭してくださいといいました。多分、ひとはくに居着いている人たちは、平均的日本人が考える博物館人とはずいぶん違った行動様式を身につけていることでしょう。ここで活動を続けているうちに、ひとはく固有の活動をする人になってしまっているのです。とは言っても、ひとはくの人たちが変人、奇人になってしまったというわけではありません。私の理解では、もっとも望ましい博物館活動とは何かを、真剣に求める人たちの集団がここにあるということです。それが世間の常識を超えてしまっているのです。

 2001年にひとはくが新展開を始めた時、「自然界との共生関係を明らかにし、人と自然のあり方を探り、人と自然の共生系の構築を目指す学問」としての共生博物学に立脚し、「新世紀の環境優先社会の構築を支える人と自然の博物館」に向けた行動を求めると宣言されました。その目的の達成のために、生涯学習の支援と自然・環境シンクタンク機能の充実を2本柱とした活動の展開が謳われています。8年前に、時代を先取りした理解で行動に取り組んだということです。

 2000年度中に構想が立てられた新展開は、2001年度を準備期間とし、2年間の第1ステージから、開館10周年に当たる2002年度からの5年間を第2ステージと定めて具体的な行動に入りました。さらに、新展開の5年を終えてから、それを継続発展させる2年も過ごしました。もちろん、その間、出る人、入ってくる人が相当の数に達したことはいうまでもありません。私自身も2003年から、途中参加をした者の1人です。

 兵庫県は今未曾有の財政危機に陥っています。他の地方公共団体と違って、最大の原因は14年前の大震災の負荷によると聞いています。聖域なしに、人員削減や経費減が求められており、ひとはくももちろんその例外ではありません。しかし、もともと構成人員だけではできないほどの大きな夢を描いている組織です。目前の課題として兵庫県民のための生涯学習支援とシンクタンク機能の高度化を図り、それらを通じて日本の博物館活動の充実に貢献しようという強い意欲が、厳しい環境のうちにあってなお確実な成果を挙げつつありますし、そのことを内外の人々から認めていただいていると自負しています。環境優先社会の構築が不可欠とされる21世紀もすでに9年目にさしかかっています。ひとはくの歩みがそれにふさわしい展開となっているのか、新年度のはじめにあたって、あらためて考えるところです。自己評価のための全館員対象の月例報告会も、定例の30分から、4月だけは1時間の特番になりました。08年の業績を振り返り、09年度にさらなる飛躍を期します。

 

                                岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

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