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端午の節句には餡入り団子をカシワの葉でくるんだ柏餅と長細い団子をササの葉で包み,
イグサで縛った粽を供える。現在,このようなカシワの柏餅とササの粽が一般的であるが,
柏餅や粽をつつむ植物に地域性や多様性は存在しなかったのであろうか。
昭和初期の食文化をまとめた文献をもとに,その当時の柏餅と粽を調べてみた。すると,
驚いたことに柏餅と粽の多様性は非常に高く,カシワの柏餅もササの粽も主流ではなか
った。

 
  (写真:かしわもち)
                     
                                         (写真2:ちまき)

 柏餅ではサルトリイバラを用いた例が多く,その他コナラ,ホオノキ,アカメガシワなどの
多様な植物が,粽では日本海側はササ,太平洋側ではヨシ,ススキ,チガヤなどの様々
な植物が用いられていた。カシワを除いて柏餅も粽も各々の地域の里地・里山に生育す
る植物を利用して作られていたことになる。100年も経過していないのに,柏餅と粽の多
様性が失われたのは地域の食文化が大切にされなくなったためであろう。
江戸型のカシワの柏餅が全国に広がったが,その柏餅のカシワも中国からの輸入である。

                           服部 保(自然・環境再生研究部)

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