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ひとはく研究員の発表論文紹介(2017年)

東大阪市の街路樹における市民要望と空間的・環境的要因の関係性

Demands and Spatial-Environmental Factors of Street Trees in Higashiosaka City


2017年12月発行
著者:川口将武・大平和弘・上田萌子・藤本真里・赤澤宏樹
掲載誌:環境情報科学学術研究論文集、 31巻、225-230、2017年
内容紹介:この研究は、街路樹に対する市民要望(おもに苦情)が場所ごとに異なっているか調べ、今後の街路樹の維持管理に役立てようとしたものです。住居地域では、敷地への枝や葉の侵入に住民や地域組織によって対応できる可能性がありました。住商混合地域では、大型車両の通行や見通し確保など安全面に配慮した維持管理が必要なことがわかりました。住工混合地域では、低木を低く抑え高木は早期の高部樹冠形成を促進する管理が必要であることがわかりました。
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庭のように楽しみながら管理されている街路樹


瀬戸内海沿岸における海浜植物ウンランの保全・再生の可能性

Feasibility of conservation and restoration of the coastal dune plant Linaria japonica in coastal regions of the Inland Sea of Japan


2017年12月発行
著者:黒田有寿茂・藤原道郎・澤田佳宏・服部 保
掲載誌:植生学会誌、34巻2号、87-102、2017年
内容紹介:ウンランLinaria japonicaは北方域を中心に広く分布する海浜植物ですが、国内の太平洋沿岸や瀬戸内海沿岸では個体群の衰退・絶滅が進んでいます。本研究では瀬戸内海沿岸におけるウンラン個体群の保全に向け、現地調査、植栽試験、種子発芽試験を行いました。調査・解析の結果、本種の保全に向けては現存個体群の保護, 植栽による個体群再生の試みと並行して、施設での育成や種子保存といった域外保全を進めていくことが重要と考えられました。

ウンランは「海蘭」で、海辺に生えるランという意味ですが、ラン科の植物ではなく、オオバコ科の植物です。ウンラン属に含まれる国内の自生種はウンランしかありませんが、地中海沿岸を原産とする種やそれらをもとにつくられた園芸種が「リナリア」や「姫金魚草」の名前で流通しています。



ヒメシロネとコシロネ(シソ科)の雑種形成について

Hybridization between Lycopus cavaleriei and L. maakianus in Japan


2017年12月発行
著者:高野温子・織田二郎
掲載誌:分類、 17巻、173-182、2017年
内容紹介:シソ科シロネ属は、北半球の温帯域に20種程度が知られる小さな属です。いずれも湿地に生える多年草で、1センチ未満の小さな花を夏から秋にかけて大量に咲かせます。日本にはシロネ、エゾシロネ、コシロネ、ヒメシロネの4種が知られていましたが、最近各地でコシロネともヒメシロネともどちらともつかない個体が見つかるようになりました。それら同定困難な個体の遺伝的実体を調べ、両種間の雑種であることを明らかにしました。
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ヒメシロネ              高野・織田(2017)図1を改変



Vegetation zonation and distribution of threatened dune plant species along shoreline-inland gradients on sandy coasts in the eastern part of the San'in region, western Japan

山陰地方東部の砂質海岸における海浜植生の成帯構造と絶滅危惧植物の出現位置


2017年6月発行
著者:Asumo KURODA and Shintaro TETSU
掲載誌:Vegetation Science、34巻1号、23-37、2017年
内容紹介:山陰地方東部の砂浜・砂丘において、汀線から内陸に向かって植生がどう変わるか、また絶滅危惧の海浜植物がどのあたりに生育しているか調べました。解析の結果示された、植物群落の配列パターンと種組成・種多様性の特徴、絶滅危惧海浜植物の出現位置から、本地域の海浜植物フロラを保全していくためには、砂浜・砂丘の開発を避け個々の砂質海岸で植物群落の多様性を維持すること、植物群落の配列・構成の異なる砂質海岸をエリア全体で保護していくことが重要と示唆されました。

北海道南西部と本州(青森~鳥取)の日本海側に分布する日本固有のスミレ。イソとつくが磯でみられることはなく、砂丘に生育する。草本帯~矮低木帯に出現するが、各地で減少傾向にあり、生育地は自然性の高い砂質海岸に限られる。


Sea-level variations during Marine Isotope Stage 7 and coastal tectonics in the eastern Seto Inland Sea area, western Japan.海洋酸素同位体ステージ7の海水準変動と瀬戸内海東部地域の沿岸テクトニクス


2017年10月発行
著者:佐藤裕司・伴芙美香・加藤茂弘・兵頭政幸
掲載誌:Quaternary International、456巻、102-116、2017年
内容紹介:この論文は大阪湾と播磨灘沿岸における「海洋酸素同位体ステージ7」という、約20万年前の間氷期(温暖期)の相対的海水準変動について議論したものです。ステージ7には温暖のピークが3回あり、各ピーク時の海水準を珪藻化石を用いて推定しました。その推定値とグローバルな海水準変動との比較から、調査地点の地殻変動量を見積もると、神戸市東灘で年平均 0.26~0.32 mm 沈降、加古川市北部で 0.17~0.29mm 隆起したことがわかりました。
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過去約20万年間の地殻変動量


子供を対象として蚊の採集と観察に関する実習の実践

Practice of the training program about collecting and observing mosquitoes (Diptera: Culicidae) for children

2017年6月発行
著者:山内健生・高見咲恵・廣田編子・高瀬優子・田丸真奈維
掲載誌:都市有害生物管理、 7巻1号、15-21、2017年
内容紹介:これは、子供を対象とした実習「カをしらべよう」の概要を述べたものです.この実習では、受講者が,人オトリ法を用いて蚊の成虫を採集し,スポイトを用いてボウフラ(蚊の幼虫)を採集しました.その後,採集した蚊を顕微鏡で観察し,スケッチしました.受講者が書いた感想文から判断すると,身近な昆虫「蚊」を詳しく調べることで,普段は気づかない興味深い生態や形態を観察できることを知ってもらえたようです。
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羽化したばかりのヤマトヤブカ(左側に見えるのは幼虫)



Taxonomic study on Japanese Salvia (Lamiaceae): Phylogenetic position of S.akiensis, and polyphyletic nature of S.lutescens var. intermedia

日本産アキギリ属の分類学的研究:テリハナツノタムラソウの系統的位置とナツノタムラソウの多系統性について

2017年
6月発行
著者:高野温子
掲載誌:Phytokeys  80巻、87-104、2017年
内容紹介:この研究は日本産アキギリ属の系統について調べたものです。2014年に新種として記載されたテリハナツノタムラソウは、今回の研究によりタジマタムラソウと近縁であることが示唆されました。またナツノタムラソウは関東と近畿に隔離分布するとされてきましたが、関東と近畿の集団は系統的に異なっており、多系統であることが示されました。
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図a. 関東のナツノタムラソウ。矢印は葯隔
の基部を示しており毛が無い. 
図b. 近畿のナツノタムラソウ.赤丸は葯隔の基部で白毛がある.毛の有無が両者を分ける特徴となる



ボルネオ島熱帯林のアリ・シロアリ類の巣から排出される二酸化炭素量について

CO2 emission from subterranean nests of ants and termites in a tropical rain forest in Sarawak, Malaysia

2017年5月発行
著者:Mizue Ohashi ,Yoshiaki Hashimoto, et. al
掲載誌:Applied Soil Ecology 117-118 (2017) 147-155
内容紹介:ボルネオ島ランビルで,アリ36種113の巣とシロアリ10種20の巣から排出されるCO2量を測定しました.これだけの種数と巣数でCO2量を測定したのは世界ではじめてです.その結果,熱帯で巨大なバイオマスを誇る社会性昆虫アリとシロアリの巣がCO2発生のホットスポットになっていることが明確になりました.これは,陸上植物バイオマスの約57%を占める熱帯林の炭素収支機能を十分に理解する上で、社会性昆虫類の多様性研究が重要であるかを示しています.
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巣からのCO2排出量の測定装置


京町家を自然史博物館に~自然史レガシー継承・発信事業の試み~

The first trial of a temporary exhibition in Machiya in KYOTO

2017年2月発行
著者:高野温子
掲載誌:全国科学博物館協議会 第24回研究発表大会、83-89頁、2017年
内容紹介:2019年、京都で国際博物館会議(ICOM)が開催されます。博物館に関心が集まる絶好の機会に、自然史資料の価値を社会にアピールしたいと考えました。京都には残念ながら自然史系の博物館がないため、全国の自然史系博物館8館で連携し、京都市の重要文化財である野口家住宅・花洛庵をお借りして「文化を育んだ自然」をテーマとした企画展を実施しました。わずか2週間の会期でしたが、期間中1000人近い来場者を得て好評のうちに終了しました。
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企画展「文化を育んた自然」の展示風景


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