百人一首にも詠まれるシダ植物の新種を但馬で発見 「タジマノキシノブ」と命名
百人一首にも詠まれるシダ植物の新種を但馬で発見 「タジマノキシノブ」と命名
1 概要
昭和医科大学の藤原泰央講師、人と自然の博物館村上哲明館長ほかによる共同研究チームは、百人一首にも詠まれるシダ植物で、日本全土で普通に見られるノキシノブ類の新種を兵庫県の但馬地域で発見しました。遺伝解析と形態比較によって種間交雑で生じた日本固有の新種であることを明らかにし、和名「タジマノキシノブ」(学名:Lepisorus tajimaensis T.Fujiw.)と命名、日本植物分類学会発行の「Acta Phytotaxonomica et Geobotanica」で発表しました。 ノキシノブ類は日本に広く分布し、人家周辺の樹木の幹、石垣などに普通に見られる植物です。百人一首百番の「百敷や 古き軒端の しのぶにも・・・」のシノブは古い軒先に生えたノキシノブ類を指すとされます。単純な葉をしているに関わらず、形や色などに変異が大きいことが古くから知られており、近年藤原講師らは、DNAデータと形態からクロノキシノブ、フジノキシノブの2新種を発表しました(Fujiwara et al(2018))。2020年に、植物研究家であり、本研究の共同著者でもある岡武利氏と丸岡道行氏が但馬での調査の際に、見慣れない大型のノキシノブ類を発見し、今回の研究成果につながりました。
タジマノキシノブの基準標本※は兵庫県養父市八鹿町産で、養父市(旧八鹿町管内、旧大屋町管内、旧関宮町管内)、朝来市(旧和田山町管内)、京都府(福知山市、京丹後町)、福井県(池田町)に産することが示されていますが、生育地は人家に近く、集落の大掃除などにより減少してしまっている場所もあり、今後の生育地の探索と保護を検討する必要があります。
なお、人と自然の博物館では「タジマノキシノブ」の展示を但馬地域で行うべく、関係各位と調整中です。
※基準標本: 学名を付けるときの基準になる標本。基準標本の産地が基準産地で、タジマノキシノブの基準産地は養父市八鹿町になる。
2 研究詳細
別紙資料のとおり(※下のボタンをクリックしてください)
別紙PDFファイル
3 論文情報
(1)タイトル
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Lepisorus tajimaensis sp. nov., a new allohexaploid species in the Lepisorus thunbergianus polyploid species complex.
タイトル和訳: 新種タジマノキシノブ、ノキシノブ倍数体群の新たな異質六倍体種
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Tao Fujiwara, Michiyuki Maruoka, Taketoshi Oka, Katsuhiro Yoneoka, Eri Ogiso-Tanaka, Atsushi Ebihara, Noriaki Murakami, Yasuyuki Watano
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Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 76巻 3号 p. 169–188
DOI:doi.org/10.18942/apg.202514
4 問い合わせ先
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【研究に関すること】
・昭和医科大学 富士山麓自然・生物研究所 講師 藤原 泰央
・千葉大学大学院理学研究院 教授 綿野 泰行
・兵庫県立人と自然の博物館 館長 村上 哲明
TEL:079−559−2001
・兵庫県立人と自然の博物館 研究員 鈴木 武
TEL:079−559−2001
【取材・報道に関すること】
・学校法人 昭和医科大学 総務部 総務課 大学広報係
TEL:03-3784-8059
・国立大学法人 千葉大学 広報室
TEL:043-290-2018
・兵庫県立人と自然の博物館 生涯学習課
TEL:079-559-2002
※附記
「タジマ」「tajima」の名前がつく植物
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◯タジマタムラソウ Salvia omerocalyx Hayata
福井から但馬、鳥取の日本海側に分布。小泉源一が1912年但馬八田村(現在の新温泉町)で採集
◯タジマシノ Sasaella tajimana (Koidz.) Koidz.
ネザサとチュウゴクザサの雑種と考えられている。1935年に小泉源一が報告。産地はなぜか丹後与謝郡になっている。
◯タジマコタニワタリ
2020年に丸岡道行が養父市大屋町で発見。コタニワタリとチャセンシダの間の雑種。国内では数例しか知られていない。
○ショウフクジザクラ Prunus ☓tajimensis Makino
新温泉町の正福寺に栽培されている桜で、キンキマメザクラとヤマザクラの雑種と推定されている。牧野富太郎の命名。









