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防風林の管理と景観によって、チョウ類や開花植物の多様性が守られている

防風林の管理と景観によって、チョウ類や開花植物の多様性が守られている


1 概要

 中濱直之 (兵庫県立大学兼兵庫県立人と自然の博物館)、速水将人(北海道立総合研究機構)、岩崎健太 (北海道立総合研究機構、現森林総合研究所)、新田紀敏 (北海道立総合研究機構)らの研究グループは、北海道の防風林の管理と景観が、チョウ類と開花植物の多様性維持に貢献していることを明らかにしました。それぞれの農地は単一の農作物が栽培されていますが、防風林を含めた農地景観の中には、生物多様性を保存する空間が配置されていることがわかりました。
 北海道などにまとまって見られる防風林は、主に作物の風害や冷害を防ぐ目的で畑や水田などの周囲に線状に配置されています。農地の周囲に防風林が配置されることにより、林縁や林内、草原など、多様な景観が創出されます。また、こうした防風林はある程度の林齢が経過した場合に、更新(伐採および植林)する事業が実施されています。近年SDGsが注目されている中、農地環境においても生物多様性の保全が求められています。しかしながら、こうした防風林のある景観や防風林の更新作業が生物多様性にもたらす影響についてはこれまで国内で知見が不足していました。
 本研究では、北海道十勝地域において防風林とその周囲の景観として林縁、防風林内、更新地(伐採後に新たに苗を植えた場所)、草原の4つの景観においてチョウ類と開花植物の多様性を比較しました。その結果、草原に加えて、防風林における明るい環境である林縁や更新地でもチョウ類や植物の開花が多く見られました。また草原と更新地ではそれぞれに特有のチョウ類や植物の開花が見られました。このように、防風林を含めた景観の維持や防風林の更新によって、チョウ類や開花植物の多様性維持に好適な環境が創出されていると考えられます。
 本研究は、これまで実態が不明だった防風林の管理作業と景観が生物多様性の維持に貢献していることを明らかにした重要な成果といえます。今後は様々な生き物で防風林による生物多様性保全効果を明らかにすることで、防風林による生物多様性保全効果の全体像や仕組みなどの理解につながると期待されます。本研究成果は2022年7月21日日本時間0時に、国際科学誌「Ecological Research」の電子版に掲載されました。

2 詳細

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3 論文情報

 (1) タイトル
  Management and landscape of shelterbelts contribute to butterfly and flowering plant diversity in northern Japan
  (北日本において、防風林の管理と景観がチョウ類や開花植物の多様性維持に貢献する)

 (2) 著者
  Naoyuki Nakahama, Masato Hayamizu, Kenta Iwasaki & Noritoshi Nitta
  (中濱直之、速水将人、岩崎健太、新田紀敏)

 (3) 雑誌・号・doi
  雑誌:Ecological Research
  巻・号:未定
  doi:https://doi.org/10.1111/1440-1703.12342

4 問い合わせ先

 兵庫県立大学自然・環境科学研究所 講師
 兵庫県立人と自然の博物館 研究員
 中濱直之
 電話:079-559-2001(代表)

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