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ひとはく研究員の発表論文紹介(2022年)

高精度に植物標本の自動判定を行うシステムの開発

論文名:Development of a system for the automated identification of herbarium specimens with high accuracy
著者名:白井匡人・高野温子・黒沢高秀・井上雅仁・田金秀一郎・谷本朋也・小金山透・佐藤平行・寺澤知彦・堀江岳人・萬代功・秋廣高志
公表雑誌名:Scientific Reports、12巻 8066、2022年
内容紹介:本研究では国内の大学・博物館が所有する植物標本デジタル画像54万点(うち、ひとはく標本は13.4万点)を用い、AIに植物標本の鑑定を学習させて日本産植物約2000分類群の自動判定を96%という高い精度で行えるシステムを構築しました。試行錯誤を重ねる中で、標本の質が良い(=植物体に虫食いや破損等がない)こと、そのような「良い」標本の画像が50枚以上得られること。が判定精度を高めることが分かりました。標本の蓄積と適切な管理は重要なのです。
AIが標本のどこをみているかを色で表した図
赤や黄色が強い部分が、よく参照されている

海岸の地中に生息するイソチビゴミムシにおける海流分散の可能性

論文名:Possible dispersal of coastal and subterranean carabid beetle Thalassoduvalius masidai (Coleoptera) by ocean currents
著者名中濱直之・岡野良祐・西本雄一郎・伊藤昇・松尾歩・陶山佳久
公表雑誌名:Biological Journal of the Linnean Society、135巻、265-276、2022年
内容紹介:イソチビゴミムシは自然海岸の真水が染み出す地中という特異的な場所に生息する昆虫で、環境省レッドリストで準絶滅危惧に選定されています。本研究では国内の分布調査を実施するとともに、遺伝解析により分布変遷の歴史を検証しました。その結果、兵庫県を含む5県で初記録となる生息地を発見できたほか、本種は日本の南西部から北東に向けて、海流によって長い時間をかけて分布を拡大させたことが示唆されました。
イソチビゴミムシの成虫写真
(岡野良祐氏撮影)

現在進行中の生態的種分化におけるマジック・トレイトの量的遺伝子座のマッピング

論文名:Mapping of quantitative trait loci underlying a magic trait in ongoing ecological speciation
著者名:T. Takahashi, A. J. Nagano, T. Sota
公表雑誌名:BMC Genomics、22巻、615、2021年
内容紹介:ある生物が異なる環境へ適応することによって種分化することを、生態的種分化といいます。またこの種分化において、環境へ適応した形質が生殖隔離に関係する場合、その形質をマジック・トレイトと呼びます。タンガニイカ湖に固有なシクリッドTelmatochromis temporalisでは、体サイズがマジック・トレイトとして働いて生態的種分化が進んでいると考えられます。本研究では、この形質の遺伝的基盤を調べ、少なくとも4遺伝子座が関係していることを明らかにしました。
タンガニイカ湖(下)に固有なT. temporalisの矮小型(上左)はシェルベッド(中左)で貝殻を住処とします。
普通型(上右)は岩場(中右)で岩の下の隙間を住処とします。

海浜植物イソスミレの種子休眠・発芽に及ぼす温度の影響
発芽フェノロジーと冬季温暖化への応答

論文名:Effects of temperature on seed dormancy and germination of the coastal dune plant Viola grayi: germination phenology and responses to winter warming
著者名:Asumo Kuroda・Yoshihiro Sawada
公表雑誌名:American Journal of Botany、109、237-249
内容紹介:温度は種子の休眠解除や発芽のタイミングに関わる重要な要因の一つです。そのため温暖化や気候変動は、散布された種子の発芽季節を左右すると共に、その過程を通じ個体群の動態や種の分布にも影響する可能性があります。本研究では、日本海沿岸を主な分布域とするイソスミレを対象とした発芽試験と、その生育地である砂丘の地温測定の結果から、冬季の温暖化と少雪化が本種の種子の休眠を長引かせ、発芽を遅らせる可能性のあることを示しました。
イソスミレの花と果実・種子

万葉集の植物に関する考察1:たまも

論文名:A Study of plants in Manyo-shu 1: Tamamo
著者名:藤井俊夫
公表雑誌名:近畿植物同好会々誌、45号、15、2022年
内容紹介:この研究は万葉集に詠まれた植物について考察したものです。 玉藻は万葉集では30首ほど詠まれ、美しい藻と解釈されてきました。玉藻を詠んだ歌の中で、生育環境、生活に利用される場面について描写した歌を検討したところ、いくつかの共通点が見つかりました。波の静かな内湾の潮間帯に生育し、春に磯で採集して貯蔵し、食用となる海藻であり、丸い浮袋をつけることから、ヒジキであると考証しました。
ヒジキ(12月に撮影)
春から初夏にかけて、浮袋が発達する

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