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ひとはく研究員の発表論文紹介(2020年)

ヒロハコモチイトゴケ種複合体の系統分類学的再検討によって判明した3新属(蘚類,コモチイトゴケ科)

論文名:Phylogenetic re-examination of the "Gammiella ceylonensis" complex reveals three new genera in the Pylaisiadelphaceae (Bryophyta)
著者名:秋山弘之
公表雑誌名:Bryophyte Diversity and Evolution 41巻2号, 35-64. 2019年
内容紹介:ヒロハコモチイトゴケという名前で報告されていた蘚類について,世界各国の博物館に保管されているタイプ標本の検討とともに,アジア各地に赴いて採集した生植物を使って外部形態と分子系統解析を行い,これまで1種だと考えられてきた中に,3属5種が含まれていることが分かりました.小さな生きものの中に秘められた多様性は,当初の予想を遙かに超えていました.
(2020年3月発行)
 
ヒロハコモチイトゴケ 分子系統樹

タンガニイカ湖に生息する、貝を産卵に使用するシクリッドの色彩変異

論文名:Colour variation of a shell-brooding cichlid fish from Lake Tanganyika
著者名:高橋鉄美
公表雑誌名:Hydrobiologia、832巻1号、193-200、2019年
内容紹介:多くの魚は、体色を変化させます。例えばカレイ類は、体色を海底に似せて敵から発見され難くします。しかし、タンガニイカ湖で貝殻が散らばった砂底に生息するTelmatochromis temporalisでは、体色が変化する理由が不明でした。そこで、体色の濃さと貝の密度などを比較し、明色型が砂地への隠蔽、暗色型が貝の影に紛れるパターンマッチングであることが推測されました。本研究により、本種は体色によって、敵の目を欺く戦術が異なると考えられました。
(2020年3月発行)
 
左が明色型で、右が暗色型。暗色型は砂の上で目立つので、なぜこのような体色なのかが不明でした。

ウスギナツノタムラソウ及び種内分類群の分類学的研究:レクトタイプ指定と新変種の提案

論文名:Taxonomic study Salvia lutescens (Lamiaceae): Lectotype designations and proposal for a new variety, var. occidentalis
著者名:高野温子
公表雑誌名:Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 71巻1号、45-53頁、2020年
内容紹介:本論文は、ウスギナツノタムラソウ種内分類群のタイプ標本調査、および分子系統解析の結果(Takano 2017)に基づいて、ナツノタムラソウ(var. intermedia)とミヤマタムラソウ(var. crenata)のレクトタイプ指定を行い、これまでナツノタムラソウとされてきた近畿地方の植物を、新変種ニシノタムラソウ(var. occidentalis)として認めることを提案したものです。
(2020年3月発行)
ニシノタムラソウとナツノタムラソウ(左上図)
雄蕊の基部の毛の有無(矢印と赤丸)が識別点

砂浜海岸における維管束植物の種数ー面積関係:海浜植物相の保全に向けて

論文名:Species-area relationships in isolated coastal sandy patches: implications for the conservation of beach-dune flora in a rocky coastal region of western Japan
著者名黒田有寿茂・澤田佳宏
公表雑誌名:Applied Vegetation Science 22巻4号, 522-533.2019年
内容紹介:生育地・生息地の面積によって生きものの種類の数がどう変わるか、この種数-面積関係は100年以上前から今なお議論されている生態学の重要なテーマの一つで、様々なタイプのハビタットまた動植物で調べられてきました。本研究では、海浜植物の効果的な保全策の検討を主な目的に、種数-面積関係のほか、砂浜・砂丘のサイズや形状(海岸線の長さ、周辺の地形など)の影響、個々の海浜植物の面積依存性などについて調べました。
(2020年3月発行)
調査地の山陰海岸
海食崖の卓越する山陰海岸ですが、河口周辺や入江には砂浜・砂丘があり、様々な海浜植物が生育しています。

遺伝情報を長期保存できる昆虫乾燥標本の作製方法を新たに開発

論文名:Methods for retaining well-preserved DNA with dried specimens of insects.
著者名中濱直之, 井鷺裕司, 伊藤元己
公表雑誌名:European Journal of Entomology 116巻, 486-491. 2019年
内容紹介:昆虫の乾燥標本に含まれる遺伝情報は短時間で劣化します。そのため、昆虫乾燥標本を用いた遺伝解析は技術的に困難でした。この研究では、0.2mlチューブとプロピレングリコールを用いて長期間遺伝情報を保存できる昆虫標本の作製方法を開発しました。この方法では1標本あたり10円と費用も安く、また作業も簡単です。この手法を用いて昆虫標本が作製されると、それらは数十年後~数百年後の将来にとって、とても貴重な遺伝資源になります。
(2020年3月発行)
 
筋肉の一部を、プロピレングリコールをいれたチューブに入れて昆虫針に刺すだけ!
QRコードからアクセスすると、詳しい方法を見ることができます。


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