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カワムツのA型を探して下さい



 カワムツは河川の中流、アユの生息地域を中心に分布し、湖沼や溜め池にもごく普通に見られるコイ科の魚です。標準和名は知らなくても皆さんはきっと、ハエ、ハヤ、ハヨと呼ばれる、この魚と遊んだことがあるに違いありません。 流れのある浅い瀬を好むオイカワと異なり、カワムツどちらかと言えば、流れの緩やかな淵や岸寄りのヤナギの下などに棲んでいます。
 実は、このカワムツは一種ではなくて二種であることが最近、再発見されました。
 カワムツが初めて世界に紹介されたのは、一八四六年、シーボルトらによる「日本動物誌」の中でした。このとき、レウシスクス・テミンキイとレウシクスクス・シーボルディイの二種が区別されて記載されました(下図参照)。しかしながらその後、一九一三年、アメリカ魚類学会と日本魚類学会の両権威、ジョルダン博士と田中茂穂博士を中心とした人々によって、この二種のカワムツは同じ種の中の変異に過ぎないと判断され、一種のカワムツにまとめられてしまいました。そのためその後長い間カワムツは一種だと信じられてきたのです。
 ところが、最近になって「違いのわかる」人たちが二つの型に着目し始めました。アイソザイム分析の結果、同じ河川に棲んでいるものでも、産卵は別々に行われていて、二つの型の間に遺伝子の交流が認められません。二種の存在は確かになってきました。百五十年余りも昔の魚類学者の目は確かだったのです。
 現在このカワムツの学名は昔のものが復活しましたが(属名はザッコに変わり、種小名はそのまま)、和名の方はカワムツ一つしかないので、とりあえず、カワムツA型、B型と呼んで区別しています。
 B型は西日本の上流・下流域に広く分布していますが、A型は濃尾平野から瀬戸内地方の河川下流域および湖沼沿岸域に限定されているようです。しかし、A型の兵庫県内での分布状態はほとんどわかっておらず、その情報はとくに必要になってきます。A型、B型の分布、型内での変異と分化年代とが明かになれば、淡水魚から見た日本列島や兵庫県の成立過程に関する新しい展望が開けるかもしれません。
 魚類学の権威も間違いをする程ですから、両型の区別は困難と思われるでしょうが、実は比較的簡単です。両型の区別点を上表にまとめました。
 川や池で釣りをされる県民の皆様、これらの点に注意して調べてみて下さい。準備室では多数の情報をお待ちしています(田中哲夫まで)。

 カワムツB型カワムツA型
学名Zacco temminkiiZacco sieboldli
顔の形吻(口先)が丸い吻がとがっている
側線鱗数少ない(46〜55枚)多い(53〜63枚)
縦帯の前半部太い細い
背びれの羅紋全体の地が透明で黄色の筋がある全体の地色は薄いピンクで不透明
     (水産庁養殖研 細谷和海博士のご教示による)


「日本動物誌」(1846)に記載されているカワムツA型(V、右側)とB型(IV、左側)

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Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/27