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◇ 都市に森をつくろう

 「みどり」が支える安心できる都市  今回の地震では、地面にぴび割れができたり、モ ニュメントが倒れたりと、公園もけっして被害をま ぬがれませんでした。ところが、樹木にはほとんど 影響がありませんでした。変わり果てた町の中に、 変わらぬ姿を見せている木々の緑が、どれだげ人び とを勇気づけたでしょう。都市の中に緑を増やして いくことは、安全な都市づくりに欠かせないことと いえます。都市に森をつくろう−これからのまちづ くりのキーワードです。 震災後の公園の使われかた   都市の緑といえば公園が思い浮かびますが、今回 の震災で公園は避難場所となったり、救援や復興の 拠点として利用されたりしました。公園は日々の生 活の中で憩いの場となるだげでなく、いざというと きには安全を保障する空間でもあるのです。ゆとり のある都市こそが、安心できる都市の条件といえま す。(AからFまでの記号は、ぞれぞれ順に、調査 した公園のうち、(A)避難地として利用されたもの、 (B)救援と復旧活動に利用されたもの、(C)避 難地および救援活動に利用されたもの、(D)仮設 住宅の建設用地として利用されたもの、(E)廃棄 物や資材などの置場として利用されたもの、(F) あまり利用されていないものを示しています。) 建物を支える街路樹    街路樹がせいいっぱい建物の倒壊を防いでいます。 それによって交通機能が障害を受けずにすんだ例がみ られました。健全に育った樹木は、ときとして思いが けない強さをみせて私たちを驚かせてくれます。 火災に耐えた木々    地震のすぐ後、いくつかの場所で火事が起こりまし たが、公園の空き地とそこに植えてある木がそれ以上 燃え広がるのを防いだ例もありました。自然の木々の 生命カはとても強く、直接炎がふれてもすぐには燃え ず、半分以上焼けてしまってもよみがえることがある ほどです。 避難地となった公園    住宅地の近くにある公園には多くの人々が避難して きました。創意工夫をこらして、プランコなどの遊具 を上手に使いこなしていた知意をみて、勇気づげられ たのは私だけでしょうか。 救援拠点となった公園    大きな公園は救援活動の拠点になりました。広々と した空き地は、たとえばヘリボートとなるなど、緊急 時にはさまざまな利用ができる空間として切な役割を 担っています。 (環境計画研究部上甫木昭春、田原直樹) (本稿は、当博物館環境計画研究部が事務局をつとめ た社団法人日本造園学会阪神大震災調査特別委員会の 調査にもとづくもので、資料および写真は同委員会発 行の『阪神大震災緊急調査報告書』から転載した。)

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Copyright(C) 1995,1996, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1996/01/12