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◇ 総合共同研究「兵庫県南部地震と六甲山系」の発足

 人と自然の博物館では、開館以来、当館の各研究部の特色を いかして自然・環境を総合的にとらえて行こうという主旨で、 全研究部にまたがった総台共同研究を行っています。そして、 今年度から新たに始まる総台共同研究のひとつを「兵庫県南部 世震と六甲山系」というテーマで行うことになりました。この 研究は六甲山系の自然と環境についての基礎資料を収集し、そ こでの地震による被害や生物に対する影響を、地質・土壌・植 勿・動物・環境教育・防災など、博物館でできるさまざまな分 野から考えていこうとするものです。  今年1月17日の地震発生以来、多くの研究者・技術者が阪神地 域を訪れ、さまざまな調査・研究がなされています。その間、 人と自然の博物館でも、個人あるいは研究部のレベルで何人か は調査を行ってきましたが、博物館全体として行動するまでに は至りませんでした。地震発生の直後から精力的に調査を行っ てきた館員、しばらくたってから調査を始めた館員、さらに何 かしなければと思いながらも何もできなかった館員、そして自 分の家が大変でそれどころではなかった館員など、博物館の中 でもその人の状態や研究分野によってかかわり方は違いますが、 地震は館員の意識や研究活動に少なからず影響を与えました。 そんな中で「博物館として今回の地震に対してどう対応するか」 「何とか自分たちの専門を活かして貢献できることはないか」と いった話し合いが何回かなされた結果、この総合共同研究「兵庫 県南部地震と六甲山系」が生まれました。具体的に、どこを、ど のように調査するかはまだ決まっていませんが、これまでの話し 合いの中でいくつかの研究テーマが出されました。今後、このほ かにも新しいテーマが出てくると思いますが、これまでに出され たものを紹介します。 (1)崩壊地での生物の変化  今回の地震によって、六甲山系ではがけの崩壊が多数見られ、 そのような場所では、そこに棲息する生物にも多かれ少なかれ影 響があったと考えられる。そこで、崩壊によって昆虫や植物にど のような影響が見られたか、その後どう変化していくのか、また 斜面の崩壊に対して、植生・断層・岩石の風化などがどのように 影響しているのかをさぐる。 (2)温地・ため池・草原について  六甲山系に見られる湿地や草原の生物に、地震の影響はあっ たのか。まず湿地や草原の分布を明らかにすることから始め、 場所を設定して水質や土壌と植生、さらにそこに棲息する動物 との関係を考えていく。 (3)地質と植生との関係  六甲山系をつくっている花南岩(みかげ石)は、石材の代表 ともいえる硬い岩石であるが、風化するとマサ(真砂)と呼ば れるぽろぽろの砂状になる。また断層があると、軟らかい粘土 にもなる。そのような岩石の違いが、植生の違いにどう反映さ れるのか、さらにそれが山地の被害とどう関わっているのかを 考える。 (4)人々の利用の場、環境教育の場としての六甲山系  六甲山系はレジャー、交通など、さまざまな方法で利用され てきた。また自然観察など貴重な環境教育の場でもあった六甲 山系。今回の地震によってどのような変化が起きたのか。また 今後の六甲山の自然とどう付き合っていくか、環境教育の立場 から探っていく。  博物館3階の展示「上昇する六甲」のコーナーにもあるよう に、六甲山地が高くなったのは今回のような地震が何回も起こ った結果と見ることができます。ぞれでも周辺に生活する私た ちはこれからも六甲山系と付き合っていかなければなりません。 しかし私たちは六甲山系の自然や環境についてどれだけ理解し ているでしようか。今回の地震で大きな被害を出した表六甲側 とくらべて、六甲山地内や裏六甲地域については被害が小さか ったこともあって、十分な調査がされていないのが現状です。 またこれまで調査されてきたのは断層や地質、建築・土木の分 野などがほとんどで、生物に対する影響なども含めた総合的な 調査・研究は、ほとんどされていません。私たちがやろうとし ている研究は防災や復興に今すぐ役立つというものではありま せん。しかし、もう少し長い目で自然と環境の変遷をとらえた 場合、地震のようなこれまでの環境を急激に改変してしまう現 象が起きた時に、一体どのような変化が起きるのかを明らかに し、その後どう変わっていくのかを見つめていくことは、大き な意義があると思います。そしてその基礎となる自然・環境に ついての資料を蓄積していくことは、将来、防災も含めた自然 とのかかわり方を考える時、貴重な材料として意味を持ってく ると信じています。 (地球科学研究部 先山 徹) (写真説明)  野島断層の測量をする館員(北淡町梨本)      野島断層の運動でずれた用水路(北淡町梨本)

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Copyright(C) 1995,1996, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1996/01/12