まえに戻る  目次へ  つぎへ進む  


最近の博物館事情-NPOの時代の博物館像を求めて

次の10年をめざして
 昨年、ひとはくは無事開館10周年を迎えることができました。これもひとえに皆さまのおかげと感謝しております。
 さて、十年一昔と言いますが、ひとはくが開館したころと比べると、博物館をとりまく状況は大きく変わりました。それに合わせて、博物館もまた変わらねばなりません。
ひとはくは、既に「新展開」と名づけた改革を始めていますが、これから取り組もうとしている新しい課題をご紹介します。

NPOの時代の博物館
 日本にも本格的なNPO(非営利組織)の時代がやって来そうな気配です。海の向こうのアメリカでは、NPOは「もう一つの市役所」と言われるほど
大きな存在になっています。公的サービスを提供するのは行政に限るわけではないのです。社会基盤が違う日本では、アメリカと同じようになるとは思えない?
確かにそうです。 ですが、ひとはくは、博物館と連係しているNPOとしては日本有数のNPO法人「人と自然の会」とのパートナーシップを通じて、
すでにNPOが、今博物館で実施している事業のうち、あるものについては博物館以上にうまくやれる力量を備えていることを知っています。近い将来、
優に一つの博物館に匹敵する活動を展開することになるかもしれないのです。博物館活動もまた公共サービスの一環ですから、博物館を代替するようになる可能性があるということです。
 NPOは博物館の商売敵、などと、むきになることはありません。NPOの参入は、これまでとかく硬直しがちだった、行政だけに依存する公的サービス
のあり方を見直す好機です。博物館について言えば、さらなる可能性を追及する機会ととらえるべきでしょう。今必要なのは、NPOとともに切磋琢磨しながら、
大胆にNPOの時代にふさわしい新しい博物館像を描いてみることではないでしょうか。

県民の参画と協働による展示づくり
 具体的にはどうするのか?ひとはくでは、現下の課題である展示のリニューアルにあたり、これまでとは違う新しいやり方にチャレンジしてみることにしました。開館後10年が経ち、展示は随所で陳腐化しています。これをやりかえるにあたり、シナリオづくりから制作、さらにはその運営に至るまでのすべての展示づくりのプロセスを可能な限りオープンにして、県民の皆さまの参画と協働を得て進めていくということです。名づけて「56,000人プロジェクト(仮称)」。  56,000人。560万県民の1%を意味しています。比率的にはわずかに思えますが、これまではたったこれだけのことができてはいませんでした。それに、始まり時点の小さな違いが、終わりの時点では大きな違いになるかもしれないのです。今後、どうなるかわかりませんが、これまでと同じことはやらない、の意気を感じていただければと思います。

(企画調整室 田原直樹)




Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 2003/5/1