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ご あ い さ つ

 

本館は平成4年10月10日に開館し、今年で10周年を迎えました。
発足以来、無事ここまで歩み続けてこられたのは、地元三田市をはじめ県民の皆様の
心温まる強い御支援があったからこそと、今改めて感謝の念いを新たにしているとこ
ろであります。

10周年を迎え、県民に親しまれる博物館として、子どもの教育や生涯学習のよき培地
になり、参画と協働の実をあげていきたいと、館員一同志を新たにし未来への力強い
一歩を踏み出そうとしています。一層の激励と御支援をお願いいたします。

ここで、設立の目的と本館の特徴を簡単に紹介しましょう。
第一には、本館の名称が館の目的や特徴を表しているということです。自然史の博物館は
わが国には多くありませんが、欧米には巨大な立派な博物館が数多く存在します。
しかし、「人と自然」の名を冠した博物館は、たぶん本館だけでしょう。20世紀における
高度な科学技術の発展により、自然破壊は人類の未来を危うくするまでに進行しました。
人と文明と自然が調和した世界を創りあげることが、今人類にとって最も求められている
ことです。本館は自然史を中核にして、上記の実現に寄与するために設立された施設
であって、新しいタイプの21世紀の博物館といってもよいでしょう。


 博物館は、展示、社会教育、資料の収集と保存、研究の四つの柱から成り立っています。残念ながらわが国の博物
館は前二者に重点がおかれ、後の二つが非常に薄弱でした。その反省に立って、本館は研究部を充実して37名の研究
員を擁し、よく整備された大面積の収蔵庫を設置しました。そして、研究員の質を高め安定した研究環境を維持するた
めに、研究員25名は姫路工業大学自然・環境科学研究所に籍を置き、大学教員の地位をもつという特殊な制度を設けま
した。公立博物館では例を見ないユニークな制度で、研究体制の確立に重要な礎石となっています。

  古代サイ、ザイサンアミノドンの発掘、六甲山系の自然と環境や、三田フラワータウンにおける人と自然の共生など
をテーマとした総合研究を行い、国際的な活動としては、マレーシア国立サバ大学との研究協定に基づく共同研究、
JICAプロジェクトの支援、個人の海外研究、ボルネオジャングル体験スクールなど、高い評価をえています。それ
らの内容は館報、紀要(和文、英文)などを見て頂ければと思います。

本館の他館に比べての特色の一つは、旺盛なシンクタンク活動です。また、阪口浩平、岩田久仁雄、小林桂助といった
人の著名なコレクションが収蔵されており、ジーンファームの活動も活発です。しかし、残念ながら、研究員の研究成果と
もども活動内容が県民にあまり知られていませんでした。そこで、以上の事業や成果を県民に還元し、県政課題に答える活
動を、「博物館の新展開」のタイトルのもとに平成12年度に策定し、平成13年度にはこの実行組織として新たに事業部
を設けました。館員全体の真剣な努力により、幸い平成13年度には館のビジター数は平成11年度の2.3倍に増え、
平成14年度も着実な成果をあげています。県立博物館のあり方と理念の確立、その実践活動に、館員は誇りをもって挑戦
しています。しかし、まだ多くの改善すべき課題を抱えていることも事実です。「人と自然の会」と強力に連携し、県民の
参画と協働の体制を創ることにより、これらの問題を解決していきたいと思います。どうか親身で強力な御支援を賜ります
よう、再度お願いする次第であります。

                                            

(館長 河合雅雄)


Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 2002/12/28