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チョウと共にすむ

 チョウは、人にとって最も身近な動物の一つでした。ところがごく普通にいたチョウがいつの間にかいなくなり、気がついた時には絶滅に近づいていたということも珍しくなくなってきました。特に身近にいるチョウが減ってきています。残念ですね。私たちの生活の場をチョウと共存できるようにする事は不可能でしょうか。
ホシミスジという小型のタテハチョウがいます。これまで山地に住むものとされていましたが、現在は神戸市内の住宅地でも観察されるようになっています。なにかこのチョウにとって都合の良いことが生じたのでしょうか?多くの公園や民家の庭先に、バラ科のユキヤナギという背の低い樹がコデマリ、シジミバナなどと共にたくさん植えられています。実はこれらはホシミスジの幼虫の餌植物なのです。人が意図せずに街中に餌を殖やし、それによりこのチョウが街にもすむようになったと考えられます。




ホシミスジ(大畑 俊雄 撮影)




 家庭のベランダや庭先、あるいは駅前など公共用地に、プランターに植えたパンジーを良く見かけます。これはツマグロヒョウモンの良好な餌になります。このチョウはもちろん野生のスミレ類を食べますが、パンジーなど観賞用のスミレも積極的に食べます。彼等にとっては労せず大量の食物を手に入れている訳です。花の終わったプランターのパンジーなどにも良く幼虫を見かけます。




ツマグロヒョウモン




 ここにあげた例は、近ごろ流行のガーデニングが図らずも、チョウの住めるビオトープを創ってきたことの反映といえるでしょう。もっと積極的に餌植物などを植えることにより、チョウを身近なものとすることができるでしょう。神戸市北区にお住まいの平尾栄治さんは、自宅の庭にたくさんの餌植物とチョウの吸蜜植物を植えておられます。その効果は抜群で、庭を訪れたチョウは実に43種を数え、そのうち13種は庭で発生したそうです。
 ガーデニングの手法の中にチョウの住めるビオトープを創る考えを積極的に入れて行けば、チョウと共存する街を創ることが可能になるのではないでしょうか。




(平尾 栄治 撮影)





(自然・環境評価研究部 中西明徳)


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Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 2001/7/18