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−石で遊ぶ−

いろいろな光る石を調べる
(トライやる・ウィークより)

光る石で絵を描く

 温暖多雨な気候の日本は,世界でも森林に恵まれた国です。木材は,古くから建築用材だけでなく,玩具としても多く使われています。ケンダマやコマなどの昔懐かしいものから,高級な将棋の駒まで,その用途はさまざまです。これに比べると,石を用いた玩具は,ほとんどありません。思い浮かぶものは,せいぜい碁石くらいです。木材に比べて石材は重く,加工がむずかしいことが,玩具としての利用を妨げているのでしょう。
 玩具としての利用は少ない石ですが,ふだんの何気ない遊びの中では,けっこう使われています。河原や海岸の砂浜では,子供たちが平らで薄い石を見つけ,「水きり」をして遊んでいます。陣取り遊びでは,まわりにある石を見つけて,陣地を示す目印にします。美しい石を見つけ,そこに絵を描くことも,古来より行われてきました。どうやら石は,そのまま使える遊び道具として,その存在価値を主張してきたようです。
 ところで,石は鉱物という単位から造られています。この鉱物の中に「光を発する」という性質を持つものがあります。ほたる石が良く知られた例で,強く熱すると蛍光を発するので,その名がつけられました。熱しなくとも紫外線をあてると,蛍光や燐光を発する鉱物は多くあります。これらの鉱物を含む石は,紫外線を受けて,青,赤,黄,緑などのあざやかな蛍光色に輝くのです(表紙写真)。
 そこで,このかくされた石の性質にスポット・ライトを当て,そのまま使える遊び道具としての石を進化させてみました。1998年から始まった「トライやるウイーク」で,三田市内の中学2年生のみなさんと,光る石を用いて「蛍光絵画」を作成してみたのです。石を粉にして絵の具に使い,紫外線で発光させて神秘的な絵画を楽しむ試みです。
 はじめに石選び.粉にしても十分な蛍光を発する石をさがさなくてはなりません。同じ紫外線で多くの蛍光色が得られることも,絵の具として使うには重要です。多くの石の中から,珪亜鉛鉱・灰重石・方解石・ジルコン・柱石を選びます。これらの石をまず砂粒サイズに砕き,絵の具の材料とします。

出来あがった作品を紫外線照射装置に入れて観察する
(トライやる・ウィークより)

 次に絵の具つくり.粒の大きさで,完成した絵の質感が違ってきます。鉄製の乳鉢に光る石の砂粒を入れ,乳棒でズリズリ音を立ててすりつぶします。つぶした石は,0.25ミリと0.125ミリ間隔の2種類のふるいでふるいわけ,それぞれ3種類の粗さの絵の具をそろえます。2時間以上もかけて,ようやく絵の具の完成です。
 いよいよ,蛍光絵画の作成。A4サイズの厚紙を用意し,鉛筆で下絵を描きます。下絵はあまり細かくしないことが大切です。紫外線の種類と,石絵の具の蛍光色を確認し,配色を考えます。この配色が,腕の見せ所です。さて,色付け開始.水で薄めた水性ボンドを,同じ色を塗る範囲に筆で塗りつけます。その上から石絵の具を多めにふりかけ,上から手で押さえます。ボンドが乾いたら次の場所に移り,絵の具付けをくりかえします。同じ色の範囲が終わったら,余分の石絵の具を落し,次の色の範囲に移ります。上と同じ作業をくりかえし,色付けを進めます。すべての色付けが終わると,蛍光絵画の完成です。
 それでは,子供たちの力作を見てみましょう(次ページ)。みかん箱よりやや大きな装置の中に絵画を入れ,紫外線をあてます。紫外線は直接浴びると体に良くないので,のぞき窓から絵画を観察します。マンガの主人公,植物,地球など題材はさまざまですが,色あざやかに浮かび上がった絵に,歓声が上がります。やはり配色と砂粒の質感が,蛍光絵画の命のようです。
 このように,とてもふしぎで美しい蛍光絵画ですが,どこでもできるものでないのが残念です。蛍光を発する石はかなり値がはりますし,紫外線をあてる装置も,一般にはありません。石を粉にするのも,たいへんな作業です。しかし,石を絵の具として使うのは,蛍光絵画に限る必要はありません。砂浜で拾い集めたいろいろな色の小石や砂粒を使って,同じように美しい砂絵を描くこともできます。石は,そのままの姿で使うのが一番なのかも知れませんね。

 

(文:地球科学研究部 加藤茂弘 写真:普及課)



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Revised 2000/04/21