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博物館のお宝拝見

神戸のサイ化石 −お宝の見つけかた−

 神戸市北区,西区,三田市,三木市,吉川町,東条町には神戸層群と呼ばれる約3500万年前の地層が分布しています。神戸層群の大部分は,大昔に河川で運ばれた土砂が平野部にたまってできた地層で,植物(葉や木)の化石を豊富に産出します。当時の神戸周辺の平野には多くの哺乳類(けもの)が生息していたはずですが,これまで発見された神戸層群産の哺乳類化石はとても少なく,明石海峡大橋のボーリング調査の際に海底の地層から発見されたサイの歯の破片,そしてここでご紹介する神戸市北区産サイ化石しかありません。

神戸市北区産ザイサンアミノドンの下顎臼歯
 a)かみ合わせ面から見たところ b)側面から見たところ。
 このほか肩甲骨や背骨などからだの他の部分も見つかっています。

 神戸市北区産のサイ化石は,絶滅したサイの仲間であるアミノドン類の一種,ザイサンアミノドン(Zaisanamynodon)と考えられます。平成12年に神戸市北区赤松台と上津台の造成地で行われた発掘により,少なくとも3頭分のザイサンアミノドンの化石が産出しました。ザイサンアミノドンは胴長短足で、角はなく,現在のカバのように河川やその周辺で生活していたと推定されます。神戸層群からは,フウやカシなどの植物化石が産することから,約3500万年前の神戸周辺には暖温帯の森林が広がり,その間を流れる河川にザイサンアミノドンは群棲していたのでしょう。

 博物館員自身によってゾウやサイなどの化石が発見されることは日本ではほとんど無く,普通は造成現場で働いている人などによって発見されます。しかし,神戸産サイ化石は,館員が数年かけて哺乳動物の化石を探してきた結果発見されたものです。神戸層群から哺乳類化石を見つけ出すなど冗談だろうと言われていたので,本当に見つけてしまったときの驚きと感動は今でも忘れられません。まさしくお宝の発見だったのですが,神戸層群にはまだまだ哺乳動物化石と言うお宝が埋まっている可能性があります。動物の歯や骨の化石らしいものが造成地などにありましたらぜひご一報下さい。大変なお宝をあなたは発見しているかも知れないからです。




(自然・環境評価研究部 三枝春生)




ザイサンアミノドンの復元図 松原尚志画 三枝春生監修 サイの化石が発見された直後の化石産地(神戸市北区赤松台)。
人が立っているところから歯の化石の破片が見つかった。






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Revised 2002/08/17