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基本構想から開館に向けて

社会教育・文化財課長 自然系博物館設立準備室長 中根孝司



 二十一世紀が間近になった今日、科学技術の発達はまことに目ざましく、人類がかつて予想もしなかった豊かな社会をつくり出してきました。その反面、急速な工業化と人口増加に伴う開発や資源の大量消費は自然破壊や環境汚染を引き起こし、動植物はもちろんのこと、人類の生存にかかわる新たな問題が生じてきています。しかも、この環境問題はいまや一地域、一国家の問題にとどまらず、地球規模で考えねばならぬほど拡大し、深刻化しています。特に日常利用している食料、エネルギー等の資源の多くを外国に依存しているわが国においては、自然と調和した人間社会を創造していくため、幅広い視野に立ってこれらの問題に対処し得る能力をもった人材を育成していくことが極めて大切です。
 このような時期に設立される兵庫県の自然系博物館は、正に自然の本質と生命の尊さについて、正しい知識と能力を培うことのできる学習の場として県民の皆様のご期待にこたえていきたいと考えております。

 以下、この博物館の特色をご紹介いたします。
 自然系博物館は「開かれた博物館」をめざし、従来の博物館にくらべ、「調査・研究」「収集・保存」「教育・普及」という本来の機能についてそれぞれ充実強化を図るとともに、次のような特色ある機能を備えていきます。

1 学術交流・共同利用の場として
 国内外の大学等の協力を得て、研究者や留学生の受け入れ、既成の枠を越えた共同研究の実施、学術研究集会・研修会の開催等の学術交流を進めるとともに、県民の自主的な教育研究活動の場としての利用、また関連する分野の研究者を結集し、環境問題をはじめとする今日的課題を総合的に研究します。

2 データバンクとして
 これからの博物館は情報の発信基地でなければなりません。兵庫県が長年蓄積してきた自然や生物に関する情報を基に、博物館関連情報及び自然・環境に関するデータを収集・整理し、県民の皆様に提供します。

3 野生生物の保護・保存・増殖の場として
 乱開発、乱獲等のため、日本では899種(種子・シダ植物の17%)が絶滅または絶滅の危機にあるといわれています。兵庫県においてもセッピコテンナンショウ等のように絶滅したものやイヌワシのように絶滅の危機が叫ばれているものがあります。
 今後はこのような事態を未然に防ぎ、可能なものではバイオテクノロジーの力を駆使し、危機に陥っている野生生物を増殖し、自然復元を試みます。

4 生涯学習の場として
 生涯学習時代を迎え、老若男女が楽しみをもって博物館に集い、自然について共に学んだり考えたりする場として、機能していくことを大切にしていきます。また、小・中学校、高等学校とも連携を深め、実物を通して生きた自然システムを直接体験できる最良の場として、その役割を果たしていきます。

5 未来都市構想の展開
 元来、生活に便利なはずの都市で、現在さまざまな環境問題が発生しています。これは、都市計画が自然や生態系などを十分に配慮せずに進められてきた結果といえましょう。この反省にたち、生態学や自然に関する種々の学問分野を含め、総合的に検討し、望ましい居住環境を追求することもこの博物館の重要なテーマの一つとしています。

 以上のような機能を備える新しい博物館をめざして準備作業をすすめていますが、県民の皆様のご理解とご協力が是非とも必要であります。博物館の建設をあたたかく見守ってくださるようお願いいたします。


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Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/27