◇ 山田 豊先生を偲んで

平成6年5月より当博物館で学習推進員として勤務されていました山田豊先生が 平成7年1月20日急逝されました。  博物館が大好きで、来館者の方々と接することをなによりも楽しみにしておられ た先生がなくなられてしまったことは、博物館にとってもたいへん寂しく残念なこ とです。  先生は博物館での日々の活動の中からたくさんのメモを残されていました。ここ でその一部から先生のご活躍の様子を紹介し、心よりご冥福をお祈りしたいと思い ます。 < 小さなこどもと博物館 > 私は、時間の許す限り展示場を歩きます。小さな女の子が二人1階の展示場にい ました。1年生の子どもです。「おじちゃんこのゾウさん、トンキーですかワンリ ーですか」と聞きました。第二次世界大戦のおりに日本の動物園ではライオンやゾ ウを空襲にそなえて処分しました。そのときのゾウのようすが国語の教科書にのっ たり紙芝居になっているのです。質問している標本は1万年前に絶滅した「アメリ カマストドン」の骨格の化石です。私はそのすぐ横にある密猟のゾウの牙のパネル の話と古代ゾウの話をしました。人に殺されたゾウと自然の気象変化に適応できず に絶滅したゾウの違いがわかったかどうか疑問ですができるかぎりやさしい言葉で 話しました。「ありがとう。またくるからね。」バイバイと手をふりながら帰って いきました。  小さなこどものときから博物館を利用するのが博物館を理解する一番の近道です 。理解がまだムリだと言わず小さなこどもでも博物館に連れてきて下さい。まず、 こどもなりにいろいろな展示物を見ていくことです。そのときの質問にできるかぎ り大人のもっている知識で説明してやりましょう。親がわからないときこそ情報ボ ックスやミュージアムメイトさんにたずねてみましょう。もちろん「ものしり先生 」にも。(H.6.6.26) < 博物館が期待するもの、来館者が期待するもの > 例えば企画展示「ギースコロコロ大集合」の博物館のねらいと来館者の期待する ものとは必ずしも一致しない。虫の好きな人、虫は大キライという人、どちらでも ない人といろいろな人がいる。鳴く虫の種類にネライをさだめるか、メカニズムに おくか、季節や夜、昼に重点をおくか、人間とのかかわりに重点をおくか。それぞ れ来館者のニーズにまかせるのがいちばんよいにきまっている。  さて、学年に応じた案内の方法についてはどうあるべきか考える毎日である。 (H6.8.11) < レプリカは実物ではないけど“ほんもの” > 見学にこられたみなさんから、一番多く出される質問は、「これは“ほんもの” ですか?」という内容です。博物館に展示しているレプリカは、人が作ったニセモ ノとは異なります。実物をもとに再現したものです。  例えば、化石はときによっては世界で1つしか見つからないことがあります。で も、レプリカを作れば、たくさんの人に見てもらうことができます。さらに、実物 の化石は重くてこわれやすいが、レプリカなら軽くてじょうぶです。  化石の研究の第1歩はすでに調べられている化石と新しく発見された化石と比較 することです。形、大きさともに実物と同じレプリカは、その役目を十分にはたす ことができます。だから博物館では「実物ではないけど“ほんもの”」という気持 ちで展示しています。 レプリカもじっくりと観察してもらえるとうれしいです。 (H.6.12.20)

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Copyright(C) 1995, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1995/12/18