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ひととしぜん

ギネスブックに載ったコケ

 コケは人知れず草木の間に隠れて生える日陰者,その体は小さいものとみなされがちですが,例外もあります。たとえばコケ庭によく使われるオオスギゴケでは十センチを遙かに越えますし、同じスギゴケの仲間では、条件されよければは数十センチになることさえあります。ギネスブックには、世界最大のコケとして二種類が掲載されています。立ち上がるコケで背丈がもっとも高くなるものは熱帯から南半球にかけて生育するネジクチスギゴケ属のダウソニア・スペルバです。これはスギゴケの親戚筋に当たる蘚類で、実に60センチの高さに達すると書かれていますから、ちょうど小学生の腰の高さくらいはあります。また,コケの中には水中にただよって生育する種類も少なくありませんが、もっとも長くのびるのは蘚類カワゴケ属の仲間です。ギネスブックではクロカワゴケというコケが1メートルを越える長さになるとあります。クロカワゴケは日本にも分布していて、たとえば長野県の上高地を流れる清流の深い水の中でその姿をみることができます。
 逆に最小のコケとして取り上げられているのは、カゲロウゴケです。「緑のしみくらいにしか見えないが、その葉は大きな細胞(最大長0.12ミリ、最大幅0.025ミリ)をもつものとして有名」と書かれています。小さなコケが大きな細胞からできているというのも、おもしろいことです。このコケを探し出すには,地面にはいつくばるようにしなければなりません。他の植物が生えていない、たとえば干上がった池から顔を出している土の上を探すと良いそうです。カゲロウゴケ以外にも,同じくらい小さいコケは何種類か知られています。
 もっとも過酷な環境に生える植物はコケです、と紹介されることがあります。しかしギネスブックによると、地球上で最も北に生える植物はケシとヤナギの仲間で、ぎゃくに最も南に生えているのは南極で見つかった地衣類だそうです。ともにコケではありませんでした。ちょっと残念な気分がするのが不思議です。



巨大なコケ ドウソニア・ロンギフォリア
Dawsonia longifolia (マレーシア キナバル国立公園にて撮影)


(自然・環境評価研究部 秋山弘之)








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Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 2002/08/17