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ゾルンホーフェンの化石

 ドイツ南部、ミュンヘンの北およそ100kmにあるゾルンホーフェンという小さな町の周辺に、中生代ジュラ紀終わり頃(約1億5千万年前)の石灰岩が分布しています。その石灰岩は細粒緻密で板状に割れやすいことから、古くから建築用の石材に用いられてきました。18世紀末には、ここの石を使用した石版印刷の技法が開発され、その後、リトグラフにも利用されるようになっています。

 ゾルンホーフェンの石灰岩は、始祖鳥の化石を産出することで有名です。それ以外にも、ウミユリ、アンモナイト、エビやカブトガニなどの甲殻類、魚類、カメや魚竜などの爬虫類などのほか、化石として残りにくいクラゲ、イカ、昆虫なども、ひじょうに良い状態で保存されています。この石灰岩は、当時のテーチス海の北岸に広がった大陸棚上の浅い海で、サンゴ礁などに囲まれたラグーン(礁湖)に堆積しました。そこでは温暖で乾燥した気候のため海水の蒸発が進み、高い塩分濃度の海水が底層部に停滞して、そこに入り込んた動物はすぐに死んでしまいました。死体を食べる底生動物がいないうえ、死体を分解するバクテリアも少なかったため、動物の死体はほとんど原形をとどめたまま、化石として残りました。

 人と自然の博物館では、アンモナイト・シーラカンスのなかまを含む魚類、翼竜などのさまざまなゾルンホーフェン産の化石が、18点収蔵されています。この中でもイカや、軟骨魚類であるカスザメの全身などは、通常では化石として残りにくい珍しいものです。これらの化石は、1993年に人と自然の博物館で開催された企画展「海と竜」で使用されたほか、毎年11月に開催される「ひとはくフェスティバル(旧称:ミュージアム・フェスティバル)」の収蔵庫探検ツアーでもごらんいただいています。