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−星を見る−

冬の大三角形
(西はりま天文台撮影)

冬の星座をながめよう

 星空をながめるのに絶好の季節は夏だと思っていませんか。もちろん、夏には夏の良さがあるのですが、実は冬にはかないません。星座の豪華さやいろいろな特徴をもった天体があることなど、冬は星空の観察にとって1年中で最高の季節だと言えるでしょう。

 

1等星がいっぱい

 冬の夜、使い捨てカイロを準備し、暖かい服装をして、思い切って外へ飛び出してみましょう。できれば星座早見盤と小さな懐中電灯を持参すると便利です。懐中電灯は赤いセロファンで光を覆うとまぶしくなく、暗い場所に目がなれた状態を保つことができます。
 夜8時にもなると、南の空から東の空にかけて、冬の星座が出そろっています。まず、明るい星が多いことに気がつくでしょう。私たちの目で見る星の明るさは、最も明るい1等星のグループから、かろうじて見える6等星のグループまで、6つに分けられています。1等星は、日本から見えないものもふくめ全天に21個ありますが、そのうち冬の星座には8個も輝いているのです。

冬に南野地平線ぎりぎりに見えるりゅうこつ座カノープス
(西はりま天文台撮影)

オリオン座から他の星座をさがそう

 まず、<オリオン座>を見つけましょう。きれいに並んだ三つ星、それを囲む4つの星、蝶が羽を広げた姿とか鼓の姿に似ていると言われるおなじみの星座です。三つ星をはさんで、左上に赤く輝く1等星がベテルギウス、右下に輝くのは青白い1等星リゲルです。
 オリオン座の三つ星を上に延ばしてみましょう。まず、オレンジ色の1等星にぶつかりますが、これは<おうし座>のアルデバラン、さらに延ばしていくと、なにやらゴチャゴチャと星が集まっている場所に行きつきます。わが国では「すばる」と呼び親しまれているプレアデス星団で、200個以上の星の集まりです。この冬は、おうし座に木星(マイナス3等)と土星(0等)が明るく輝いており、「すばる」と競演しています。
 こんどはオリオン座の三つ星を下に延ばしましょう。すると白く輝くとても明るい星が見つかります。<おおいぬ座>のシリウスで、全天一の明るさを誇っています。このシリウス、ベテルギウスとともに、正三角形をつくる1等星がほぼ真東の空高くに見つかります。<こいぬ座>のプロキオンです。冬の大三角とよばれるこの形は、見つけやすい対象でしょう。  オリオン座の北東には<ふたご座>があります。2つの明るい星がなかよく並んでいるのが特徴ですが、西側が2等星のカストル、東側が1等星のポルックスです。
 おうし座の北側には、<ぎょしゃ座>の五角形が連なります。その中でひときわ明るい星が、1等星のカペラです。これで合計7個の1等星を見つけたことになります。
 残る1つは、ちょっとやっかいな<りゅうこつ座>のカノープスです。低空ですから光が弱まる上、雲などに阻まれてめったに見えません。中国ではこの星をながめると長生きができるという言い伝えがあり「老人星」とよんでいます。おおいぬ座の南、地平線ギリギリに輝くカノープスを見つけて長生きしてみませんか。
 カノープスを加えると、冬の星座には8個の1等星、今年はさらに木星と土星も加わりますから、豪華この上ない星空となります。ぜひながめたいものですね。

 

この冬、おうし座に明るく輝く木星(左)と土星(右)
(西はりま天文台60cm望遠鏡で撮影)

星の一生を追ってみよう

 冬の星座にふくまれる天体を調べると、オリオン座には若々しい星がいっぱいあり、特にオリオン座大星雲には、星のたまごや生まれたばかりの星があることがわかりました。赤いベテルギウスだけが年老いた星です。おうし座には青年期のプレアデス星団や熟年のオレンジ色の星アルデバラン、星の一生の最後の大爆発である「かに星雲」などがあります。
 星はガスが収縮して生まれ、成長し、最後に大爆発などを起こして一生を終えます。しかしそのガスがもとになってまた次代の星が生まれる、というように星の誕生と死はくりかえされています。そんな星の一生のドラマを見ることができるのも、冬の星空の醍醐味です。

 

(兵庫県立にしはりま天文台長  黒田 武彦)



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Revised 2000/12/20