鉱物資源は我が国の産業活動及び国民生活の基礎を支える必要不可欠な素材である。しかしながら、鉱物資源の中でも特に非鉄金属資源は、希少性及び偏在性が他の資源に比し極端に高くかつ代替が困難であることから、その需給が常に世界の経済的・社会的な変動に曝され不安定な状態にある。したがって、非鉄金属資源の安定供給が達成されない「供給障害」状態の発生を想定し、その影響を事前に定量評価し、それを我が国の鉱物資源政策に反映させることは重要である。「鉱物資源政策プラットフォーム」におけるかかる議論を踏まえ、主要鉱物資源(銅、コバルト、タンタル)の供給障害に関するシミュレーション分析を行った。

内容


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私たちのくらしと石

私たちのくらしと木材利用

 一口に石といっても、それには岩石と鉱物があります。鉱物は規則正しく配列した原子からなり、天然に産する無機物を機械的に分けたときの最小の単位です。そして1種類以上の鉱物が集まったものが岩石です。たとえば花崗岩という岩石は石英・長石・黒雲母などの鉱物からできていて、花崗岩を割ると、それぞれの鉱物に分けることができます。しかし石英という鉱物をいくら砕いても珪素(Si)や酸素(O)という原子に分けることはできません。
 このほか鉱石ということばがありますが、これは有用な元素や鉱物が多く含まれた岩石のことで、鉱石を構成している有用な鉱物を鉱石鉱物といいます。そしてそのうち経済的に価値があるものを鉱床といいます。

鉱物資源

 天然の資源を大きく鉱物資源・エネルギー資源・生物資源に分けることができます。鉱物資源は、厳密には金・銀・鉄などの金属資源と、ろう石や石膏のような非金属資源だけをさしますが、一般には、鉱物だけではなく、石材・地下水なども含みます。またエネルギー資源の中でも化石燃料・原子力・地熱などは鉱物資源として扱われることもあります。鉱物資源やエネルギー資源が生物資源と異なる点は、人間の手で再生することが不可能な非再生資源であることです。そのため常に資源の枯渇が問題にされます。ただ、エネルギー資源は使用すると無くなりますが、鉱物資源はその代替品を見いだすことが可能であり、またリサイクルが可能なため、エネルギー資源ほど枯渇が問題になることはありません。鉱物資源はうまく利用すれば大変有用な資源なのです。

資源と環境

 左の写真は南米ベネズエラのオリノコ川流域を空から見たものです。そこには豊かな熱帯雨林のみがひろがり、まったく人が入り込んでいないように見えます。実は、この森の下には流域から運ばれた金とダイアモンドを含んだ砂が大量に堆積しているのです。人々はそれをもとめて森林を切り開いていきます。しかし、鉱物資源は無尽蔵にあるわけではありません。特に、しっかりした地質調査もなされず採掘を始めた所では、すぐに掘り尽くしてしまいます。その結果が右側の写真です。
 鉱床の生成する場所やその成因を研究する分野を鉱床学といいます。それは、特に以前の日本では地球科学のもっとも重要な分野でした。しかし、鉱床学者が鉱床の研究だけをしていれば良いという時代は終わりました。鉱床の研究を行なうのであれば、その開発がどのように行なわれ、環境にどのような影響を及ぼすかまで含めた研究が必要なのです。


地球システム科学

 地球システム科学という研究分野があります。これは地球を、岩石圏・大気圏・生物圏・水圏・人間社会(人間圏)などのサブシステムから成り立つ巨大なシステムとして捉えることによって、地球を理解していこうとするものです。各サブシステムはその内部で複雑な物質の流れや変化を示すと同時に、物質循環やエネルギーの流れを主とした各サブシステムとの相互作用によって成り立ってきました。そのことを理解することによって、初めて地球の姿が浮き彫りにされるのです。人間社会(人間圏)と他のサブシステムとの相互作用には、自然災害・資源・地球環境問題の3つがあります。人間の意志で積極的に他のサブシステムから取り入れられるものが資源であり、その結果が地球環境問題としてあらわれているのです。資源の利用は公害(鉱害)の発生や資源の枯渇といった問題につながります。それは地球環境の問題でもあります。資源の問題を資源の利用や鉱床学といった個々の立場だけから見るのでなく、地球全体のシステムの中で考えていくことがさらに大切となるでしょう。

(地球科学研究部 先山 徹)   

 

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Revised 1998/04/15