ミュージアムメイトの『心に残る出逢い』


 平成9年7月12日〜10月12日に開催された 企画展「水辺の生き物」 は、身近な水中に住む昆虫や魚、植物など、生きている姿を見ていただける展示でしたので、いつも子どもたちや家族連れのお客様でにぎわっていました。
 私が企画展の解説をした時のことです。参加されたのは、お父さんとお母さん、男の子と女の子の合計4人のひと家族でした。小さな子どもさんがいらっしゃったので、私は最初に”アメリカザリガニに触ってみよう”のコーナーにご案内しました。そこは子どもたちがザリガニとふれあえる場所です。男の子は抵抗なく持ち上げて笑顔をみせていましたが、女の子はハサミを振り上げるザリガニを見て跳んで逃げてしまいました。両親がかわるがわるつまんで見せて、こうやって持つんだよーと説明すると、女の子は目を輝かせてすごいすごいと喜んでいました。そして女の子はザリガニに触る挑戦を始めました。
 幾度かの挑戦のかいあって、私が企画展の展示解説を終える頃、女の子はザリガニを持つことができるようになったのです。とても嬉しそうにしている女の子をにこにこと見ていたお父さんが「そうだ、記念写真を撮ろう。」と静かにカメラを取り出しました。
 ザリガニを手にした笑顔の子どもたちの姿を写真におさめるお客様を見つめながら、私はほのぼのする思いを感じました。とても和やかなご家族で、私にとって心あたたまる嬉しい出逢いでした。

(文:谷口英恵、イラスト:田中美香)  


まえに戻る  目次へ  つぎへ進む  


Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/01/23