まえに戻る 目次へ つぎへ進む  


座談会 博物館の将来

−館長とボランティアが語る−




出席者 博物館ボランティア   井ノ口真光さん
                澤 マスミさん
                堀  正和さん
    人と自然の博物館館長  河合 雅雄
    (司会 半田久美子研究員)


【河合館長】 博物館は設立されて5年目。これからますます充実していきたいと思っていますが、それについて、ボランティア活動を通じて、こういうふうにあってほしいなど、思っていらっしゃることをお聞かせしていただきたいと思います。

◇五感を満足させる展示がほしいです

【堀さん】 昨年のフェスティバルについて感じたことなんですけれども。収蔵庫やジーンファームといった普段立ち入りができない部分をツアーを組んで見せていただきましたよね。我々一般の人間からすると、博物館のおもてに展示されているものだけじゃなくて、そのバックにあるものを見せていただけることが、たいへん好奇心を満足させる部分でして、いい企画だったなと思っているんです。

【河合館長】 この収蔵庫は非常に大きいものをつくったのですが、おかげでもうおおかた満杯になってきました。というのはね、いろんな人から資料の寄贈を頂きましたし。それから震災があったでしょ、あのときに寄贈頂いたり。これはもう収蔵庫を倍増しなきゃいけない。そのとき、今おっしゃったように展示を兼ねたような収蔵庫にしたらいいですね。標本の整理作業をしているところも展示だという考え方で、岩の中にはいっている化石をきれいにとりだす作業や、植物や動物の標本づくりなんかを見せる。これは子どもたちも興味を持つでしょうし、自分でもやってみようという方も出て来られるでしょう。

【澤さん】 そうです、ほんとにそう思います。ここの博物館を見たときに一番に思ったのが、生きたものを見たいという感じです。もうほんとにきれいに整っているんですけれど、作られたものが多いという感じを受けましてね。それで一度見たらもうそれでいいわって思うんです。それが残念だなと思います。生きたものを見たり触ったり、においをかいだりとか、そういう五感を全部満足させてもらえるようなところがどこかにほしい。今の企画展(水辺のいきもの)のような面積をもう少し増やしていただきたいと思います。

【河合館長】 それはとても大事なご指摘で、ハンズオンといいますかね、五感に対応するような、そういう博物館をつくっていきたいんです。将来はぜひやっていきたいですね。

◇お年寄りが楽しめる博物館も必要ですね

【司会】 最近ボランティアデーが始まりましたね。

【堀さん】 今年の5月から「ボランティアデー」として、我々自身が企画した内容でイベントを毎月第3日曜日に行なっています。このときは来館した子どもたちと共に勉強するというか遊ぶというか、遊ぶほうのウェートが高いかもわかりませんが、私はとても楽しみにしております。子どもたちの反応もたいへんよいのでうれしいですし、ボランティアとしていい仕事になっているなと今つくづく感じているところです。

【井ノ口さん】 お客さんは小学生とその家族が多く、お子さんはかなり博物館に親しんでおられると思います。でも、ぼくは自分がだんだん高齢化社会のほうにかかっていく立場になりましたので、お年寄りが気楽に来てもらえるような、生涯学習として利用していただけるものも考えたいですね。というのは、職業生活というのは非常に狭い分野にとじ込められてしまっているわけなんです。だからボランティア活動をしたり、いろいろなセミナーに参加させていただくことによって、ものすごく幅が広くなってきます。そういう意味ではこれから、リタイヤして子どもたちに手がかからなくなったご夫婦に、気楽に博物館に来て、刺激を受けていただきたいですね。

【澤さん】 先日のボランティアデーで私たちの班は動物の名前のついた植物を集めたのですけれど、やっぱり動くものには負けるんです。植物に興味を持って見ておられたのは、年輩の方ですね。身近な植物の名前を熱心にメモしていらっしゃる方もおられました。

【河合館長】 ここの展示は高校生レベルを対象にしているのですが、これからは高齢者がほんとうに楽しめるような形も考えたいですね。それともうひとつは子どもたちの目で楽しめるように。でも、子どもからお年寄りまで全部楽しめるというのはこれは無理なんですね。そうなると、分離して子どもには子どもたち専用の博物館というものが将来ほしいですね。

【堀さん】 この建物の中で、なおかつ展示ということにこだわると、いろいろな層のニーズに応えるのは難しいと思うんですね。でも視点を変えますと、小さい子どもたちは野外で遊ぶのがたいへん好きですから、この周辺の公園とかフィールドをうまく活用して、建物の中にある展示の部分と外で見せる部分をドッキングさせていく、そういうことがかえって小学生くらいの子どもたちにとってはおもしろいかもしれません。
【河合館長】 いまおっしゃった野外の活用については、ここの博物館でも本気になって考えているんですよ。ほんとに子どもたちが楽しめる野外博物館をつくろうとみんなで頑張っているんです。


◇ボランティア自身に楽しんでいただく
 それがいちばん

【司会】 ボランティア活動をする上で何かやりにくい点とか不都合な点はないですか。

【堀さん】 全く好きなようにやらせていただいてます。自分でやりたいこと、こういう風にしたいということを、時間的なことも能力的なことも含めて、自分のできる範囲内でやっていくというのがボランティアの基本かなという気がしています。けれど、見方を変えると都合のいい身勝手なことをしているようで、館にどれくらい貢献しているのかなとちょっと気になる部分があるのですけれどね。

【河合館長】 われわれとしては、ボランティアの人が本当に楽しんで自分のものとして活躍していただければ、それがいちばん博物館に対して貢献していただいたことだと思うんですよね。だからいろんなやり方があると思うんです。
 それと残念ながらね、これも将来の夢なんですが、やっぱりもうちょっと入館者を増やしたいんですね。

【井ノ口さん】 私はこのすぐそばに住んでいるんですけれど、私たち自身はかなり博物館を知っているつもりでも、まわりには意外にご存じない方があって。もう少し積極的にPRしてもいいんじゃないかという気がします。私どもは近くにおりますし、いろいろな面でPRしていきたいと思っています。

【司会】 本日はありがとうございました。ボランティアの方々にはこれからも博物館でいろいろな活動を頂きますよう、これからもよろしくお願いいたします。

1997年 7月31日 人と自然の博物館にて     


まえに戻る 目次へ つぎへ進む  


Copyright(C) 1997, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1997/10/09