収蔵資料紹介


オクムラツチスガリ

 これまで世界のどこからも知られていなかった生物種を発見すれば、その種の持つ形態などを詳しく記載し、新種として公表する必要があります。この新種発表に際して、基準にされたただ一つの個体がタイプ標本(完模式標本=かんもしきひょうほん)です。全ての生物のそれぞれの種について世界で]個体しか存在しません。タイプ標本は新種が公表された後、その種をめぐる分類学的な諸問題が生じたときに、間題を解決するためによりどころとできる唯一の個体であり、非常に貴重な標本と言えます。
 タイプ標本を収集保管し、世界の研究者の要請に応えられるように整理していくことが博物館に期待される重要な機能の一つです。ここに示したのは、カリバチ類の分類の世界的な権威であった故常木勝次(つねきかつじ)博士によって奄美大島から記載されたオクムラツチスガリというカリバチの1種のタイプ標本です。博物館ではこのたぴタイプ標本367点から成る常木コレクションをご遺族から寄贈して頂きました。標本と同時に大きな責任を負う事になりますが、これらの標本は、人と自然の博物館が国際的に認められる博物館として成長するための基礎になると思われます。
(系統分類研究部 中西 明徳)

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Copyright(C) 1995,1996, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1996/03/16