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周りの自然と暮らし

自然環境を意識する

 昨年の阪神・淡路を襲った兵庫県南部大地震は多くの人々を活断層の存在に注目させ、 地滑りや地盤の沈下、液状化現象という自然からの警鐘に目を覚まさせました。一方、 街路樹や庭木の健在な姿に感動したり、瓦礫(がれき)と化した被災地の跡地に 咲い た名も知らぬ草花に、潤いを感じた人もありましょう。  私たちはこの地震から、もの言わぬ自然にもっと語りかけ、いち早く情報を察知して 対応することの大切さを学びました。緑の空間はどの程度存在しているか、川や海に親 水域はあるのか、大気の汚染は?など、この町に生きている限り気にかかるテーマは たくさんありますが、地域の自然環境に付いて、もっと認識を深め新たにする必要性を 痛感させられました。

人と自然のかかわりは今

 神戸のポートアイランドや六甲アイランドは、後背地の山を削り取った土砂で埋立て られてできた人工島です。そして山の跡地にはニユータウンが創出されました。当時 「山、海へ行く」という壮大な開発事業として全国的に注目を浴びたものでした。  昨年10月実施された国勢調査によれば、兵庫は県民540万人中、南部の都市へ 84パーセントがひしめいていることを示してくれました。
 近郊の農業景観を構成していた水田やため池は、大規模な土地改良や宅地化により大 きく変わってきました。また昔から親しんできた里山である丘陵地の二次林もニュータ ウンやゴルフ場建設がすすみ、すっかり様変わりした地域が少なくありません。  家庭や建設事業によるゴミ処理場の、環境に与える負荷問題も深刻です。あなたの住 む地域の自然は、健全でしようか。古来より築かれてきた石積みの美しい棚田やため池 など農業景観は、歴史的な産物であり、治水・利水・自給自足の役割を備えた国民の資 産とも言えるものです。
 郡部では、若者の都市への流出傾向は根強く、相対的に高齢化がすすみ、山林や山 間にある農地の管理能力は著しく低下し、農地が放置されたまま野に戻りつつあり事態 は深刻です。しかし、いつどこの町へ出かけても、美しい自然景観や農業景観には親近 感を覚え、心を和まされるものです。


(財)日本自然保護協会「自然観察ハンドブック」より

持続可能な開発、問われる身近な自然

 いちど壊された自然を、元に回復させることは容易ではありません。人力で創出でき ない自然ならばなおさらのこと、私たちは、それぞれ協力し合ってこの自然を守り育て、 これを賢く利用しなければ生き延びられません。そのために「あなたは何ができますか」 「何を求めますか」と問われたら、どう答えることができるでしょう。  もし、まだ素晴らしい自然があると判断することができれば、うまく生かした利用法を 考えてみましよう。まだ自然が残っているならば、これ以上自然が失われないようにしま しょう。
 もし、かなり自然が壊れていると判断されるならば、自然の回復の方法を考えましょう。  絶望的ならば、美しい自然を取り戻す努力から始めましよう。  産業活動をはじめ自然観察や調査、研究、レクリエ−ション活動など自然に対して働き かける目的はそれぞれ異なりますが、人は他の生き物たちと同様、土や水、空気、緑資源 など、ぞの恵みを離れて生存できないからです。
 この頃、全国各地で自然観察会が盛んです。あなたの町でも必ず行われています。まず 身近な所から自然へ出掛け、周りを見てみましよう。

「かけがえのない○○」

 この○○の中に「故郷」「かわ」「うみ」「くに」「地球」などいろいろな自然を当 てはめ、行動しましよう。そして豊かで美しい国土を次の世代に譲りましよう。私たち は、どんなにもがいても、この惑星にしか往めないのですから。
(学習推進員 稲尾 豊)

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Copyright(C) 1995,1996, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1996/03/16