生きている博物館に

人と自然の博物館長 加藤幹太

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 人と自然の博物館は、人間と自然の共生をテーマに開館して、はや、半年になろうとしています。
 自然史は地球の歴史や生物の進化など自然の成り立ちを探る学問であり、世界的にみれば、イギリスの大英自然史博物館やアメリカのスミソニアン博物館など伝統に培われた数々の一流施設があります。わが国は文化国家といいながら、この分野は立ちおくれていますが、東京の国立科学博物館始め、最近、各自治体も自然系の博物館に目を向けはじめています。
 このような、動きのなかで開館しました当館は単なる自然史系博物館ではありません。自然史に加え、地球規模の環境問題まで視野を広げています。そして、人と自然のかかわりや共生の在り方について、提案しようとしています。 当館では、第一線の研究体制を目標としており、県立姫路工業大学付属自然・環境科学研究所を併設していただいて教授・助教授等の教員が館の職員を兼ねる制度をとっています。このような体制は、国立民族学博物館や国立歴史民俗博物館にしかない制度で、公立博物館では始めての試みです。この研究体制は、研究者にとって恵まれた条件のもとですぐれた研究を行って、その成果を広く社会に還元するためです。
 博物館の研究部門は、地球科学、系統分類、生態、生物資源、環境計画の五つです。地球科学、系統分類、生態の3部門は従来の自然史博物館にありますが、生物資源、環境計画はこれまでにない部門で本館の特色といえるでしょう。
 生物資源研究部は絶滅に瀕している生物(当分は植物に限る)を保存し、あるいは増殖する研究、さらには環境教育等をおこなう研究部です。環境計画研究部は「人間居住環境」の問題に直接とり組む研究部で他の研究部と共同しての研究成果を期待しています。  そして、自然と環境に関する情報の発信基地でありたいと考えています。博物館のなかで優れた研究をしていても、多くの方にその過程、成果を知ってもらわなくては、何の価値もないのです。
 博物館では、展示、シンポジウム、セミナーの開催、緑化や居住環境など開発計画への提案や助言をすることで研究成果をフィードバックしていきたいと思います。  兵庫県という地域から世界を見据えて人と自然についていきいきと活動する博物館でありたいと思います。

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Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/20