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| 日本語の「甲虫(コウチュウ)」が英語の「ビートル」にほぼ相当します.西洋の言語にはそれぞれこれに相当する単語があるようで,生物分類での鞘翅目とも一致します.というより明治以後,西洋に合わせて「甲虫」なる新語を作ったのでしょう. |
| ところで「ビートル」を「かぶとむし」と日本誤訳する習慣がはびこっています.悪習です.日本人が思う「かぶとむし」とは,割と立派な角のある甲虫の事でしょう.ニョキッとした虫です.ずばり「カブトムシ」という和名がついている種類や,クワガタムシなどもひっくるめて「かぶとむし」と呼ぶことに抵抗はありません.しかしテントウムシやカミキリムシやハンミョウやコクゾウムシは「かぶとむし」ではないと思います.これらを含めて呼ぶとき「かぶとむし」というのに違和感があるから,わざわざ「甲虫」などという言葉ができたのです. 西洋人,たとえば英語国人が「ビートル」というとき,その典型は「フンコロガシ」の類いのようです.コロンとした丸まっちい姿で,地上を這うイメージであり,角もニョキニョキしておらず,決して樹幹に止まってなどいないのです.ファーブル昆虫記に出てくるヒジリタマオシコガネなどが典型です.ただ,かぶとむしも「広い意味では,ビートルに含めるが…」という意味で,ぎりぎりセーフなだけです. 要するに「ビートル」は狭い意味では「フンコロガシ」,広い意味では「甲虫(コウチュウ)」と訳すべきなのです.そして「ビートル」を「かぶとむし」とするのは誤りです. |
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| 「フンコロガシ」では語感が悪いでしょうか.「糞」ですからね.でも「フンコロガシ」はリサイクルを体現している虫です.エコだ!地球に優しい!と時代に媚びた褒め方も可能です.それに比べて「兜虫」は好戦的で暴力的,そうでなければ虚飾の権化です(んな,むりにけなさいでも).実際フンコロガシは古代エジプトでは再生のシンボルであり,太陽の運行を司る神の化身であり,その流れを汲む文化圏ではそれなりに貴い虫のようです. |
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| ん〜と.博物館のメルマガなので,ちょっとは本物の虫の事も書かねば. |
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| 「フンコロガシ」がどの生物群を指すか,本当に糞を転がす種に限ると,これも日本には一種(ほど)しかいません.マメダルマコガネ(と,その近似種)です.かなり小さな虫で,しかも常に転がすわけではありません.というより,土壌昆虫を採集していると紛れ込んでいる虫なのです.系統的には転がす仲間に入るし,転がす事もあるらしい,という程度です.従って日本では実質的に狭義の「フンコロガシ」は見られないのです. では「フンコロガシ」を広い意味にとって,糞を食べるコガネ,糞虫類(コガネムシ上科,食糞群)とすると,これは百種を越えます.しかも食糞群でありながら糞を食べないものも多く,朽木の中や…(オイオイ). 糞虫らしい糞虫としてはエンマコガネ,ダイコクコガネなどの仲間があります.これらは形や色が結構カッコイイ虫です.やや細長い体型のマグソコガネにも渋い魅力があります. |
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| その中でゴホンダイコク(ダイコクコガネ亜科)は特殊な魅力を秘めた虫のようです.そんなに珍しい虫ではありません.虫に興味を持っている人なら,いろんな機会でその存在を知っています.ところが,予備知識なしにこの虫に出会い,姿に目をとめると,著しい感動を呼ぶことがあります. 体全体に漆塗のような艶があり,立派な角が胸に4本,頭にも1本あります.本当のカブトムシよりも”精密”な感じです.見つめれば見つめるほど,体が小さいことで却って上等な虫のような気さえします. 「小さなカブトムシみたいなのを捕まえたのですが…」と博物館に電話が掛かってきて,話を聞くとこの虫です.写真を添付したメールの事もあります.この虫が切っかけで虫に目をむける人が現われるのは嬉しい事です. |
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| あと,兵庫県的には,センチコガネに要注目です.金属光沢と翅鞘の縦縞ですぐわかる普通種です.近似種に一回り大きく輝きの強いオオセンチがいるだけ,採ればすぐ名前がわかります.この仲間は暗い森の中を飛んでいるところを見かける事が多く,独特の雰囲気を持っています.採ってみてセンチだと「ハズレ」っぽい感じがあります.しかし兵庫県の,というか淡路島(南部)のセンチコガネはけっこうすごいのです. もともとこの虫は移動能力が小さく,飛翔筋が退化して飛べない個体群もあるそうです.そして地域により色彩が違います.特に淡路島の個体群は播磨や紀伊,阿波のものと全く異り,全体が黒く,青みがかった弱い輝きがあります. 淡路島だけに色の違う個体群です.屋久島や対馬ならともかく淡路島とは!移動能力の小さいセンチコガネならではの現象です.この淡路島のセンチコガネがどうして天然記念物にならないのか不思議なくらいです. |
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