今日から7月です。2010年も半分が過ぎたことになります。

 日本では旧暦の呼び方で「文月(ふみづき)」という呼び方もあるのはご存じかと思います。この文月は旧暦では「秋」の始まりになるとのことです。えっ?!今日からもう秋なの?(1・2・3月が春、4・5・6月が夏、7・8・9月が秋、10・11・12月が冬)。なんだか不思議な感覚です。ちなみに、富士山は今日が山開きだそうです。

 7月は英語で July といいます。これはユリウス暦を考えたユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザーともいわれる)の名にちなんでJulius(Iulius)と呼ぶようになったのが元のようです。


 そこで一つ思い出しました。長いですが・・・・・・


「秋七月(あきふみづき)に東国(あづまのくに)の不尽河(ふじのかは)の辺(ほとり)の人大生部多(おほふべのおほ)、虫祭ること村里(むらさと)の人に勧めて曰はく、「此は常世の神なり。此の神を祭る者(ひと)は、富(とみ)と寿(いのち)とを致す」といふ。巫覡等 (かむなきら)、遂に詐(あざむ)きて、神語(かむこと)に託(の)せて曰く、「常世の神を祭らば、貧しき人は富を致(いた)し、老いたる人は還(かへ)りて少(わか)ゆ」といふ。是に由(よ)りて、加勧(ますますすす)めて、民(おほみたから)の家の財宝(たからもの)を捨てしめ、酒を陳(つら)ね、菜(な)・六畜(むくさのけもの)を路の側に陳ねて、呼ばしめて曰はく、「新(にひ)しき富入来(とみきた)れり」といふ。都鄙(みやこひな)の人、常世の虫を取りて、清座(しきゐ)に置きて、歌ひ?(ま)ひて、福(さいはい)を求めて珍財(たから)を棄捨(す)つ。都(かつ)て益す所無くして、損(おと)り費(つひ)ゆること極(きはめ)て甚(はなはだ)し。是(ここ)に、葛野(かどの)の秦造河勝(はたのみやつこかはかつ)、民(たみ)の惑(まど)はさるを悪(にく)みて、大生部多を打つ。其の巫覡等、恐(おそ)りて勧(すす)め祭ることを休(や)む。時の人、便(すなは)ち歌を作りて曰はく、

 太秦(うずまさ)は 神とも神と 聞こえくる 常世の神を 打ち懲(きた)ますも

此の虫は、常に橘(たちばな)の樹(き)に生(な)る。或いは曼椒(ほそき)に生る。[曼椒、此をば褒曾紀と云ふ] 其の長さ四寸余(よきあまり)、その大きさ頭指許(おほよびばかり)。其の色緑にして有黒点(くろまだら)なり。其のかたち?全(かたちもは)ら養蚕(かひご)に似(の)れり。」
                       『日本書紀』岩波文庫、皇極紀三年七月条


 この中に出てくる『虫』は『常世の神』になっていますが、この虫は「シンジュサン」という蛾の幼虫だという研究があるようです。成虫を写真で見るとこんな蛾です。

(標本写真提供:ひとはく 沢田佳久研究員) 

SamiaCynthia(シンジュサン) このムシを「常世の神」と感じた古人のことを思い出しました。

幼虫(青赤立体写真)(写真提供:ひとはく 沢田佳久研究員)

 

 本当は『暦』の話を書きたかったのですが、いつもの癖で、ついつい脱線してしまいました。

20100701

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