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 『吾輩はキリギリスである』も大好評のうちに最終回を迎えることとなりました。
 長らくご贔屓に与り、誠に感謝感激、雨あられ!!


 それでは、最終回、どうぞお楽しみください  鳴目 虫石(なくめ ちゅうせき)

 

 
 ほかには、陶器製の虫籠やヘルンさん愛用の舟形の虫籠、フィールドノートが展示され、途中からは、七夕に虫に願いを祈る笹飾り、民俗学者柳田國男先生がカマキリの方言を調べた「蟷螂考」の展示、沢田佳久研究員お手製のの3D写真展示ホッパーズなどどんどん広がりを見せた。

3D 写真展示 ホッパーズ

 追加された展示の中でもっとも吾輩が怖かったのはお菊虫である。まったく吾輩たち鳴く虫とは関係ないが、ヘルンさんの作品「日本の庭にて」に登場する縁で出現した。あの有名な怪談「播州皿屋敷」のお菊井戸に大量発生したジャコウアゲハのさなぎであり、シダの研究者でありながらネズミやカタツムリもやる鈴木武研究員が連れてきたものである。葛屁食草(かずら へくそう)という珍元斎そっくりな落語家が演じた「皿屋敷」は、一枚二枚・・・お菊さんが皿を最後まで数え、皿が足りないというのを聞くと死んでしまうという話で吾輩は怖くてたまらなかったが、最後はお菊さんが風邪をひいて、明日休むために余分に数えるというのには、あきれて言葉がでなかった。真剣に聞いた吾輩が馬鹿だったのである。それにしても、あの後ろ手に縛られたお菊さんそっくりな姿を見ると、吾輩はあまりかかわりたくない虫だと思うのである。
 
 そして、夏が過ぎ、吾輩たち鳴く虫族がワーワー大騒ぎする秋を迎えるという時、この企画展は終わり、吾輩は無事、野に放たれたのである。おかげで多様な人間の世界を見物させてもらったが、寒くなる前に大急ぎでメスのキリギリスを探しだし、吾輩の偉大なる遺伝子を残し、鳴く虫族の多様な世界を永遠のものとせねばならない。
 ところで、聞くところによると、いろんな吾輩たち鳴く虫族の写真パネルや虫売り屋台などの展示物は、滋賀県の多賀町立博物館、そして、奈良の橿原昆虫館に巡回し、好評を博したそうである。あの巨大キリギリスぎっちょん君はというと、吾輩たちのご神体となり、この博物館の前にあるフローラ88で今もデーンと展示され、吾輩たち鳴く虫族を見守ってくれているのである。
 
              

−完−
 


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