バッタの秋

2009年9月22日
 バッタの季節というと何となく夏のようなイメージですが,秋は大型種の繁殖期にもあたり,派手なバッタが飛び交うのがこの季節です.

 先週,近くの学校のバタリンピックを手伝いました.「バタリンピック」とは,バッタを採って,飛ぶ時間を競う競技のことです.数年前から国内各地で行われており,三田では有馬富士公園で毎年行われています.
 今回のはその校内版として深田公園で実施されたものです.2学級が12チームに分かれて各チーム5回ずつ計測のチャンスがあります,合計60回の計測は責任重大です.見失った時点で着地とみなしますので,長く飛んだ場合には追いかけて計る必要があります.担任の先生のほか教頭先生も計測を担当してくださいました.で,私はバッタの居そうな場所の案内係兼バッタの種類の区別係,ついでに見つかる他の虫のQ&A担当です.
 結果は最高記録がクルマバッタモドキの9秒06でした.深田公園にはトノサマバッタやクルマバッタがいないので,上位はモドキ勢が独占でした.ほかにはショウリョウバッタやオンブバッタがノミネートしていました(今回はイナゴも特別参加).
 バタリンピックは競技の形をとっていますが,じつはバッタの種類の違いや,その生息環境の違い,飛び方の違いを感じとる行事です.
 有馬富士公園での競技を見学させてもらったところ,種類ごとの飛び方の特性として,「平均」だけではなく「分散」も重要なようです.例年,上位にはアベレージヒッターのトノサマが並ぶ中,平均的には非力に思えるモドキの中になぜか一発長打でトノサマを上回る個体が出現,最長記録にはモドキが奪い取るの事が多いのだそうです,
 3フライトの合計ならトノサマ3匹が定石,最高記録で競うならモドキも加えておくべし.飛形点ならクルマも有力か? 単にどの種類が飛ぶという問題ではなく,構成に戦略が必要なのです.ん〜 バタリンピック道 奥深いっす.

 一昨日はバッタを解剖する講座「虫の体を調べよう」を行いました,受講申し込みのあった各組(親子三人とか)に二匹,消化管などの内臓を観察用と口器の外部形態観察用の分が必要です.毎年,その材料の調達に苦心しています.
 解剖にはなるべく大きなバッタを使いたいので,トノサマやクルマがいる公園に目星をつけておいて,講座の直前に行って必要な分のバッタを捕まえます.ところがやはり相手は自然,年によって採れ具合がちがいます.なるべく直前に新鮮なのを調達と思っていたら,台風が来たりします,
 今年は前々日(金曜日)に採集,気温は十分でしたが曇りがちで,なぜか不漁でした.例年ならそこここに大きな♀が鎮座し,その周りを数匹の♂が互いに牽制しつつ飛翔したり,徘徊しているような状況なのですが,今年はバッタがぜんぜん目立ちません.なぜかカエルが多い(?).しかたなくクルマ,トノサマ,モドキ♀,ショウリョウ♀など大型のものを内臓観察用に必要な分だけ確保,頭部観察用は(なぜか今年は多い)マダラバッタとモドキ♂を使う事にしました.
 講座では各組で顕微鏡を使って解剖し,昆虫の体の構造を学びました.頑丈な箱のような中後胸をハサミで切り,中の筋肉のかたまりをピンセットで切っていき,体全体を背側と腹側に切り分け,内臓を観察します,その過程でキラキラ輝く気管やマルピギー管なども見られます.
 細かい作業なのですべて予定通りに行くわけではありませんが,うまく背中側の板に張り付いた心臓(背脈管)が動くところが見られた組もありました.卵巣に並ぶ卵の大きさに驚いていた子もいました,今から埋めたら孵るかな?などと想像したり … 解剖は虫の命を奪う事ですが,虫の命を奪うからこそ,単に理科の学習としてだけではなく,それぞれに生命の存在を実感してくれたのではないかと思います.

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クルマバッタモドキの♂

昆虫共生・沢田佳久

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