6月1日,姫路で開催された兵庫県博物館協会の研修会で,これまでの人博のヒアリ対策への貢献を例に,「外来種問題でも,自然史博物館が一番役に立つ」という内容の講演をしてきました.

 2010年,愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で,「2020年までに侵略的外来種とその定着経路を特定し、優先度の高い種を制御・根絶すること」等を掲げた愛知目標が採択されました.これを受けて、環境省、農林水産省及び国土交通省は、2015年に「外来種被害防止行動計画」を策定し,目標の実現を目指すことになりました.ヒアリをはじめ侵略的外来種は、生態系や人の生命・身体だけでなく、農林水産業,物流,商業等のさまざまな人の活動に多大な被害を与えることが国内外で知られています.このことは,広く多様な主体が連携して,合意のもとに取り組む体制がないと,外来種問題は解決できないことを示しています.外来種被害防止行動計画でも「社会において外来種対策を主流化する」ために,その対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成を進めていくことを計画の一つに掲げられています.しかし,昨年,2017年に,神戸港で,国内初のヒアリ侵入が発見された以降の社会パニックや,対策の経緯を見ていると,必ずしも,外来種対策を社会の主流化することが,うまくいっているとは言えないでしょう.

 大学や研究機関が広く市民に,直接的に,啓蒙や教育活動を行うことは難しいですが,自然史博物館は,生物多様性や生態系の重要性やそれらの保存の必要性を社会へ実装できる場です.人博では,このために,蓄積した標本資料や高度な研究成果を活用して,セミナーや自然観察会,展示などの生涯学習を数多く行い,大きな成果を上げてきました.まさに,博物館は,外来種問題とその対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成を進めていくことができる機関です.神戸港でのヒアリ国内初侵入は,国際貿易が盛んな兵庫県が、改めて外来生物の侵入リスクが高く、我が国の外来種問題の最前線に立たされていることを再認識させてくれました.外来種問題の最前線にある自然史博物館として,「外来種問題でも,博物館が一番役に立つ」と言えるように,微力ながら頑張っていければと思っています(系統・昆虫 橋本佳明)

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