生物多様性って何だろう?
このごろ生物多様性という言葉を新聞やテレビなどでよく見聞きするようになりました。2010年は国連が定める国際生物多様性年であり、10月には愛知県名古屋市でCOP10と呼ばれる生物多様性条約に対する第10回締約国会議が開催されました。このこともあり、生物多様性という言葉があちらこちらで盛んに使われるようになってきました。この生物多様性とはいったいどういうことなのでしょうか。
地球上の生き物は、長い年月の進化を経て多くの種へと多様化してきました。そして、森や川や海など地球上のさまざまな自然環境(生態系)のなかで、他の生き物たちとお互いに関係をもちながら暮らしています。そうした生き物には、いろいろな種類の動物や植物がいますが、人間もそのうちの1種類ということになります。生き物は、たとえ同じ種類どうしであっても、たとえば人間の顔が一人ひとり違うように、1個体ずつがみな違っています。このようにさまざまな生態系に生存している生物が、個体のレベルでも群集のレベルでもすべて異なっていることを生物多様性といいます。

【オランウータン親子】
わたしたちの暮らしは、さまざまな生き物と深い関係でつながっています。たとえば食べ物は、穀物、野菜、果物、肉、魚など直接食べるものだけでなく、加工食品・調味料もほとんどすべて生物由来です。着ている衣服は、化学繊維もありますが、木綿、羊毛、麻など天然素材の布地がよく使われ、これらも生物由来です。また、わたしたち日本人の多くは木材を使った家に住んでいますが、木材は、もちろん生き物である樹木の幹から製材されています。このように、衣食住すべてに生き物が関係しないものはないというくらい、わたしたちの暮らしは多くの種類の生き物や個々の生き物、つまり生物多様性によって支えられているのです。

【セーター・Tシャツ】 |

【ディナー】 |
生物多様性は、わたしたちに食べ物などを提供するだけでなく、じつに多くの恵みを与えてくれています。たとえば水や空気、土といった生態系の基盤となるものを作り出してくれています。マングローブが津波の被害を防いだ例のように、災害や大規模な病害虫被害などを抑えてくれます。また、森の中を歩き多くの生き物に接することにより、豊かな感性がはぐくまれ、優れた文学、音楽、芸術などを生み出す力になります。このように生物多様性はわたしたち人間にとってなくてはならないものです。

【氷ノ山ブナ林】 |

【ちゅら海サンゴ】 |
この生物多様性にいま危機が訪れています。多くの生き物が驚異的なスピードで絶滅し続けているのです。その大きな原因としては、人間の開発行為などにより生態系や生物生息域の破壊が進んでいること、地域社会の担い手減少により、人手によって維持されてきた里地里山の生物多様性の崩壊を招いていること、侵略的外来種や化学物質の導入が増え、在来生物の生存を脅かしていることなどが考えられます。

【ボルネオゾウ】
このような生物多様性の危機は地球規模で起こっていることなので、世界中の国々が集まって生物多様性を保全し、持続的に利用できるような方策を考えようとしているのが、冒頭にあげたCOP10など生物多様性条約に基づく動きです。しかし、生物多様性の危機は遠い外国の話ではなく、私たちの身近なところでも起こっていることです。それで日本では国だけでなく、県や市でも生物多様性保全を推進するよう勧めています。兵庫県では2009年に「生物多様性ひょうご戦略」が策定され、地域に暮らすわたしたち自身が生物多様性保全の視点をもって行動するための指針が示されました。そのなかで、「ひとはく」は生物多様性の支援拠点として位置づけられており、生物多様性の重要性に関する県民等への普及啓発を推進する役割をもっていることが記されています。

【釧路湿原】
ひとはくでは2010年7月から12月まで、『ひとはく生物多様性 大作戦!』の特別企画「ひょうごの生物多様性 瀬戸内海 vs 日本海」を開催し、二つの海、瀬戸内海と日本海に面した兵庫県を特徴づける動植物、景観、生業、文化などを紹介しました。この展示は上記のような生物多様性ひょうご戦略にもとづいて、生物多様性の重要性を広くみなさんに、楽しく、わかりやすく紹介しようとしたものです。生物多様性は堅苦しく難しい言葉ですが、それをみなさんにわかりやすく示すことは、ひとはくの得意とするところです。大作戦は終わりましたが、これからもひとはくは、折に触れ『生物多様性』を広めていくつもりですので、どうぞご期待ください。
(文責:高橋 晃 生涯学習推進室長)